ソフトバンクグループがユニー・ファミリーマートホールディングス(ユニー・ファミマHD)の買収を提案していたことが日経コンピュータの取材で分かった。ユニー・ファミマHDの筆頭株主である伊藤忠商事に2017年末に打診したが、伊藤忠は応じなかった。その後、伊藤忠は2018年4月にユニー・ファミマHDを子会社にすると発表した。幻となったソフトバンクのコンビニ進出。その裏側には、共通ポイントを巡る熾烈な競争がある。

 2017年12月20日、東京都港区にある伊藤忠商事の東京本社にソフトバンクグループの孫正義会長兼社長の姿があった。お忍び訪問の相手は伊藤忠の岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)だ。

 孫氏は岡藤氏にユニー・ファミマHDの共同買収を提案したという。具体的には筆頭株主の伊藤忠と共同でユニー・ファミマHDにTOB(株式公開買い付け)を仕掛ける内容だ。

 結果的に岡藤氏は孫氏の提案に応じなかった。ユニー・ファミマHDの株式を手放すどころか、買い増す決断を下した。お忍び会談から約4カ月後の4月19日、伊藤忠はユニー・ファミマHDの子会社化を発表。約1200億円を投じて2018年8月ごろにTOBを実施し、ユニー・ファミマHDへの出資比率を41.45%から50.1%に引き上げると決めた。

 岡藤氏はユニー・ファミマHDの子会社化について、2018年5月2日に開いた決算説明会で次のように説明していた。「きっかけは去年、ある人から『一緒にファミリーマートを子会社化しないか』という提案があったことだ」。ある人の正体はソフトバンクの孫氏だったとみられる。

 「セブン&アイ・ホールディングスの時価総額は4兆2000億~4兆3000億円あり、50%買おうと思ったら大変な金額になる。ローソンはすでに三菱商事さんの子会社。時価総額が1兆円くらいのファミリーマートはみんなが狙っている」。こう危機感を募らせた岡藤氏は、ユニー・ファミマHDの子会社化を決断した。