総務省がNTT、KDDI、ソフトバンクの通信大手3社に対し、海賊版サイトのブロッキングの実施を政府決定の前に要請していたことが、日経 xTECHの取材で分かった。政府は今回のサイトブロッキングについて、「事業者による自主的な取り組みとして行うのが適当」としつつ、実際には規制官庁から要請が出ていた。通信大手3社を真っ先に取り込むことで、一気に進める計画だったようだ。

 関係者によると、知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議が方針を決める前の4月9日の週に鈴木茂樹総務審議官が通信大手3社の経営幹部を訪れ、直々に要請した。総務審議官は事務次官に次ぐポストで、要請のために通信会社に足を運ぶのは異例。サイトブロッキングを実施しても行政指導することはなく、通信の秘密の侵害で訴えられても政府が責任を負う旨を説明し、対応を求めたという。

 もっとも、書面による正式な要請は出ずに終わった。総務省内でも賛否が分かれ、大きな社会問題に発展したためか、最終的にはなくなった。事前の説明では総務相の署名で要請を出しても構わないとしていたが、知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議が方針を決定した4月13日に総務省が通信大手3社に通達した書面には鈴木総務審議官の署名がなく、「対応して下さい」と単なる周知にとどまった。野田聖子総務相も4月13日の閣議後記者会見で、「自主的に取り組んでいただくように整備してきた」と説明している。