FireFox が好調。
このことでメディア上では「ブラウザ戦争」と呼ばれるお囃子が再燃、なにやら賑わっている。
不動のものと思われた IE のシェアは 95% 以上だったが、これが 80% までにダウンしたとか、いやお前の会社の集計は間違っているとか意味無くホットな記事が掲載されている。
この「シェア」という数字は一体なんなのか。統計やリポートにおいて母集団の範囲や傾向を見ずに結果だけを見ているのに、ここまで妄信しても良い物なのだろうか。
まあ、私としては以前から見ていた数字なので思うところはないのだけれども、皆においては酒の席でのネタぐらいにはなるかもしれないので紹介しておく。
うちのサイトへのアクセスにおけるブラウザ種別統計である。
「ふあふあファクトリー」の 2004年12月 における MS-IE でのアクセスは、アクセス全体の "53.88%" となっている。
びっくりした?シェア的に半分なんだよ。
もちろん、この数字にはタネがある。そのタネを明かさずに数字の一部だけを提供するのがいかに愚かしいかというのが今回のお話なのですよ。
まず、先の "53.88%" に対して Mozilla ブラウザはいくつかというと "14.36%" である。ここで MS-IE のシェアの反対は「全て」Mozilla であろうという意味のない思いこみが崩れることになる。
じゃあ、その他の "31.76%" はなんなのだろうか。実はこの "31.76%" の内、"23.41%" が「ボット」によるクロールなのだ。「ボット」とは検索エンジンがデータベースを集めるためにサイトを全スキャンしていく行為。はてなアンテナの更新チェックもここに含めている。うちのサイト、回線にかかるトラフィックのうち実に 1/4 が「ボット」によるものなのだ、といった言い方をする事も出来る。
ちと解説しておくと、全てのボットが迷惑なわけじゃない。ボットの存在自体は検索サイトに新鮮な情報を提供するためのものなので必要だとも思っている。ただちょーっと承伏しかねる所があるのが "MSN bot" の挙動で、こいつが "23.41%" の内、実に "16.18%" を占めている。Mozilla のシェアを超えている存在の発見! である(笑
MSN bot は他の bot に比べ cgi 自動生成に対する判断能力が低いらしく、意味なさそうなリンク全てをアクセスしていく。平たく言うと、カレンダーWEBアプリが張ってあった場合そのカレンダーの日付に張られたリンクを全て叩いていく。Blog とかでカレンダーを表示している人は注意されたし。
もっとも、ボットの比率が問題になるというのはそれだけ「通常のお客様が少ない」といった事でもある。全体のアクセス数を隠しているところが、さらなるタネなのだ。
そうして考えるとその他勢力をある程度さっ引いて MS-IE と Mozilla の数を比較した方が良さそうである。
先のデータだと "53.88%" と "14.36%" だから "IE : Moz = 0.7910 : 0.2089" といったところか。これでもまだ Mozilla が多い気はする。
さらに言うとこのサイトのメンテナーである私が使っているブラウザが Firefox であるといった、タネもあったりする。とはいえ、ここの数字に影響を与えるほどではないと思うのだけれどもね。
"MS-IE vs Mozilla" という構図に興味がある人へ。
私が管理しているサイトにおける状況。
www.limo.fumi2kick.com (2004年11月分集計)
IE : Moz = 0.5609 : 0.4391
技術者寄りの Linux サイトなので IE 率が低くて当然。
サイトの傾向と母集団の嗜好によって結果が変わる例。
11月分集計なのは、12月に良くわからん集中猛襲が一日だけあって値が歪んだため。
www.poe-lina.com (2004年12月分集計)
IE : Moz = 0.6535 : 0.3465
Linux 本とはいえネタ物なので一般の方が多いかと思ったらそうでもない模様。
www.poe-lina.com (2004年7月分集計)
IE : Moz = 0.7750 : 0.2250
発売直後、まだ Firefox 1.0 が出ていなかったのと、オタク系ニュースサイトで取り上げられていたために普通のお客様がたくさん来訪。
なので薄まると思っていたのだけれどもそれでもまだ Mozilla 率高いですな。
www.fumi2kick.com (2005年1月分集計)
IE : Moz = 0.9147 : 0.0853
PSP 用 jpegbook なるアプリを提供しているため、そこへのアクセスが国内外からやってきているところ。
PSP ネタなので、一般層へのアピールが大きくそれ故 Mozilla 率は低下。特に海外の影響が大きい気がする。
おそらく Mozilla 率としては最も納得のいく数値。
もうひとつ 0.95 : 0.05 という数字も持っていたりするのだけれども、これは本当に技術的なものが絡まない時の数字。一般層における IE 普及率の 95% という数字は本当なんじゃないかというのは一応の私の見解である。
つまり、サイトの技術度、オタ度(オタはPCや情報に強い)、が高まれば高まるほど Mozilla 率が高くなる傾向にある。逆に一般層が集まるサイトには Mozilla ユーザーは近寄りもしないということが考えられる。
故に集計は「どんなサイトでどんな層にアピールするか」が見えないと本当に意味がない。
それをわかっていてかいなくてか「IE vs Mozilla ごっこ」がやりたいという人には勝手にやらせておけばよい。
「NDS vs PSP」も似たような物である。
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