ケータイにはショートショート
ケータイアプリはゲーム花盛り。今では、オンラインダウンロード販売では日本で唯一ではないかという成功例になっている。私も所有している BREW 端末にいくつものゲームをしこみ、思い出したらそれで遊んでいる次第。
先日なんとはなしにMEGACYBER社(サイト名 "Mega GameS")の「ほおずき」というアプリをダウンロードした。ジャンルとしては恋愛ノベルなのだそうだ。
いきなりキャラクター絵がしょぼいので面食らうが、まあそこを評価するのは止めておこう。取り敢えずノベルゲームを読んでいる気分になるくらいにはなれるシステムで、携帯ということを考えると及第点ではあろうか。文字ウェイトが切れないとか、操作的な不満は多数あるけれども。
んでまあ、「ほおずき」を読んでいて何が辛いかというと、しょぼい絵よりもテキストの質なんだよな。シナリオ的にもアレだし、年齢設定と言動がなんか不自然だし。主人公の台詞が出る部分で『プレイヤー「ほにゃらら」』と表記されているのが興ざめである。「プレイヤー」という単語を出すくらいなら主人公の名前を付けてしまえ。
あまりにも不完全燃焼だったので、口直しに PC 上で ALCOT の「Clover-hearts」をプレイ始める。いつかわプレイしようとして積んでおいた秘蔵の一本だ(CD-ROM初回版)。
いやー、格が違うねえ。って、文章量がまったく違うので比べるのも失礼なのだけれども。でも導入部分だけで引き込まれ方が全然違うよ。別にキャラが金髪ツインテールの双子だから贔屓しているわけじゃないよ。
なんか見始めたら止まらなくてずるずると白兎(玲亜)シナリオ Chapter1 まで。ってこれだけで下手なゲーム一本分の量があるような気がする、まだ序章なのに。
もちょっとだけ、ということで夷月シナリオの出だしも見てみる。うわ、莉織がめっちゃ可愛い。いや別に玲亜が可愛くないわけではなく、白兎側では玲亜がヒロインなので断然可愛く書いてあり莉織はほとんど出てこなかったということなのだけれども。逆に夷月側だと莉織が書かれているわけだ。もちろん二人そろって出てくることも多いので、そこで差をつけるのは困難なはずなのだがかなりうまいことやっている。
噂に違わぬ良作の予感。ってまあ全然出だしの部分なので結論づけられないけれども。
いや、まあ、Clover-Hearts の評をここで書きたいわけではないけれど。
話をケータイに戻そう。
「ほおずき」は「もっとがんばりましょう」な出来ではあったのだが、別の見方をするとこの辺のテキストが「読める」物になったならケータイコンテンツとしてかなり有力なのではないかと考える。
今でも、ケータイ上のブックリーダというのがあってじんわりとユーザは増えているらしい。しかし、電子ブックは今ひとつラインナップに納得がいかない所がある。
デジタルメディアが実際の本に比べ優れているところは実のところ「携帯性」ではなくて「破棄の容易さ」にあると思っている。本は買うと増えていくのが利点でもあり難点でもある。所有欲はどうでもよくて読んだらどんどん捨てたいという本も多くある。読み捨てしたいNo.1は雑誌だけれども、その次がライトノベルや新書等の「大量消費書籍」なのだな。そういったジャンルがもっと強化されないことには食指が動かないといったところ。
ノベルゲームならば、ゲームの延長であり、ライトノベルとの間にあると思っている。ゲームでもなくノベルでもないので、独特の文章を必要とするものの、ケータイで読んでもストレスが無いというのは大きい。
要するにノベルゲームはケータイ向きなのだ。コンテンツが沢山出てくると、テトリスに次ぐ通勤電車アプリになれるんじゃないだろうか。
しかし、携帯アプリはデータ量に限度があって PC レベルのノベルゲームは難しいだろう。アプリが 1つあたり 300KB だとして(最新機種では 500KB である)、200KB にプログラムとグラフィックを詰め込めれば 100KB も文章が入れられる。
うぐぅの KANON に使われていた文章総量が 1MB くらいだったことを考えるとあれの 1/10 にしかならない。しかし、1/10 もあれば魅せるストーリーを書くことは十分に可能であると思っている。ゲーム中に通信で追加ダウンロードとかすれば追いつきもするだろう。
とはいえ、PC と同じレベルの物をケータイに持ってきて、読むのに40時間もかかってしまうのもどうかとは思ったり。やはりケータイではさくっと読める軽量コンテンツの方が似合っている。
大河小説を書くテクニックとショートショートを書くテクニックはそれぞれ異なった物である。ケータイアプリ屋さんにはそのショートショートを書く技量を鍛えて貰いたい。
実のところノベルゲームでなくて HTML でも良いんじゃないかというのは考えどころなのだが。
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