組対の刑事沢渡が、中国黒社会と日本の警察上層部の癒着にまつわる件へと巻き込まれていく話
何というか、とても読みやすい
するっと読めるし、まあ普通に面白いのだけど、でもやっぱり機龍警察が最強過ぎて、物足りなさはある。
月村作品にしては珍しく(?)ハッピーエンドであり、そのあたりを読みやすくてよいと捉えるか、物足りないと捉えるかは何とも言えないところかなー
組対の沢渡は、警察としての正義感というものもすっかりなくし、妻とも離婚し、ただ流されるままに仕事をして、くたびれた感じの刑事
警察全体では、生安の偉い人が出世争いのトップを走り、また生安の巡査がテレビの警察24時的な番組で人気者になっていて、生安の時代が来ている。
で、生安仕切りの、中国製パチモン商品の摘発が始まって、組対もかり出される。
沢渡は、「らくがきペンちゃん」という子ども向けアニメの関連商品を担当することになり、義水盟という正体不明の中国系組織と「ペンママ」というキーワードに辿り着く。
そして、かねてから縁のあったヤクザの波多野と協力することになる。波多野というのは、沢渡とは全然違うタイプで、今時珍しい武闘派で鳴らすタイプのヤクザ。
沢渡と波多野のコンビで話が進むのかな、と思ったら、ちょっと違う
月村作品でよくある、光と影のコンビっぽいことはちょくちょく書かれているんだけども
「ペンママ」というのは実は、生安の偉い人が外国人移民受け入れ法案に関して、中国の犯罪組織と繋がっているっていうのを示す証拠で、パチモン商品の摘発っていうオペレーション自体が、その証拠を潰すためのものだった、と。
でまあ、沢渡はなんと上手いことに、その生安の偉い人を失権させるのを成功させるというハッピーエンド
生安の偉い人が実はゲームオタクで、新商品を賄賂的に貰っているとか、ちょっと面白かった
日本の経済を活性化させるには移民受け入れを進めなきゃならないって考えていて、俺は他の警察官僚と違ってそういう日本の大局的なビジョンを持っているんだぜみたいなタイプ。犯罪組織との癒着は、その法案のためのバーター取引みたいなもんで、日本の大局を考えたらそういうちょっとした汚れも引き受けなきゃねみたいな感じで、悪徳警官とかそういうタイプではない。
あと、義水盟という組織は、犯罪組織というか非合法な商売をやっている組織なのだけど、いわゆる中国黒社会ではなく、国を捨てざるを得なかった者たちのネットワークという組織
機龍警察の副産物的な作品かなあと思っていて、義水盟とかはクワンについて考えるためのヒントになったりするかなあとか思っている。
あと、今書いてて思ったけど、生安の偉い人も、敵を考えるためのヒントかもしれない。もちろんあくまでヒントであって、まんまこういうのでは決してないと思うけど。