宇宙には重元素が多く存在する。これらは人間の体を構成する重要な成分の一つだ。人間の体内には鉄よりも重い元素が多く含まれており、骨の構成、血液の生成、さまざまな生化学的プロセスに欠かせない役割を果たしている。
だが、こうした重元素がどこで作られたのかは、天文学上の大きなミステリーだ。
これまでその有力な候補とされてきたのは「ガンマ線バースト(GRB)」と呼ばれる、宇宙でもとびきり巨大な爆発だ。その明るさは太陽の100京倍で、文字通り桁外れのエネルギーを放つ現象だ。
ところが、この大爆発を観察した最近の研究では、一部のガンマ線バーストで重元素の存在が確認されたものの、宇宙全体の量から見ればそれほど多くない可能性が浮上してきている。
ということは、他にも重元素を生み出した未知なる発生源があるということだ。
宇宙に豊富に存在する重元素はどうやってできたの?
ビッグバンで誕生したばかりの宇宙には、水素とほんのわずかなヘリウム原子で構成されていた。これらは元素の周期表でもっとも軽いものだ。それより重いものは、それから後になって作られた。
その役割を担ったのが、恒星の核融合だ。しかしこのプロセスでは鉄くらいの重さの元素までしか作られない。それ以上重い元素を作ると、エネルギーを放出するかわりに消費することになるからだ。
だが現実には鉄によりも重い元素は、この宇宙に豊富に存在する。ならば、それらはどうやって作られたのか?
その有力な候補が「ガンマ線バースト」と呼ばれる宇宙でもっとも強力な爆発だ。その明るさは凄まじく、太陽の100京倍(10の後にゼロが18個続く)もある。
短いガンマ線バーストでは十分な量の重元素が生成されない
ガンマ線バーストは、大きく分けて「長いガンマ線バースト」と「短いガンマ線バースト」の2種類がある。
長いガンマ線バーストは、2秒よりも長く続くガンマ線バーストで、その多くは寿命が尽きた星が超新星爆発を起こし、崩壊してブラックホールになるプロセスに関係していると考えられている。
もう一方の短いガンマ線バーストは、2秒未満しか続かないものだ。その原因はコンパクトで高密度の2つの中性子星の衝突だとされ、それを裏付ける現象が実際に観測されている。
2017年8月、米国にある重力波検出器「Ligo」と「Virgo」が、衝突寸前の2つの中性子星からやってきたと思われる信号を検出。その数秒後、同じ方向からガンマ線バーストがやってきた。
「GRB 100817A」と命名された短いガンマ線バーストに天文学者は大騒ぎとなり、それからの数週間にわたり、地球上のほぼすべての望遠鏡がそちらに向けられることになった。
こうした観測では「キロノヴァ」という超新星爆発の小型バージョンのような現象が観測されている。重要なのは、このキロノヴァから軽い元素のほかに、さまざまな重元素が生成されたことを示すサインが見つかったことだ。
そもそもキロノヴァはなぜ鉄よりも重い元素を生成することができるのか?
それは「r過程」というプロセスが起きるからだ。これによって、鉄のような重い元素の原子核が短時間のうちにたくさんの中性子粒子をキャッチする。
すると質量が急増して、より重い元素が生成される。このプロセスはある意味地球に生命をもたらしたと言える。重元素は生命を構成する上で重要な素材だからだ。
r過程が進行するには、高密度・高温・大量の自由中性子といった適切な条件が揃わねばならないが、ガンマ線バーストやキロノヴァならばそれらを満たすだろうと考えられるのだ。
だがこの理論には問題もある。それはGRB 170817Aを引き起こしたような中性子星の衝突など滅多に起きないということだ。
それほど珍しいのなら、宇宙にたっぷりと存在する重元素がこれによってすべて作られたとは考えにくいかもしれない。
長いガンマ線バーストも重元素は生成されない
では長いガンマ線バーストが重元素の供給源である可能性はないのだろうか?
実際にそれを検証した最近の研究がある。その研究では、2022年10月9日に観測された長いガンマ線バースト「GRB 221009A」が分析された。
このバーストは、それまで最強だったバーストの10倍ものエネルギーを持つ、史上最強のガンマ線バーストだ。
そこから付けれた愛称が「BOAT」(”史上最も明るい”の意/Brightest Of All Time)である。おまけに太陽系に比較的近く、ここ地球の大気でも太陽嵐並みの影響が観測された。
それなのにその余波の観測結果は意外なものだった。
たとえば、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はその6ヶ月後の残光を眺めたが、そのデータによるなら、圧倒的な明るさにも関わらず、BOATを引き起こしたのはごく普通の超新星爆発だった。
実際、これまでに行われた長いガンマ線バーストの観測でも、バーストの明るさとそれにともなう超新星爆発の大きさには相関関係がないことが示されている。
このBOATによって作られた重元素の数も分析されたが、なんとr過程によって生成された元素は見つかっていない。
長いガンマ線バーストの明るさは、その核(おそらくはブラックホールと考えられる)の状態に関係しているとされている。
BOATのように桁外れなものならば、r過程の条件がきちんと揃っていると考えられるので、この結果は意外なものだった。
未知なる重元素の発生源がどこかにあるはず
こうした発見は、ガンマ線バーストが宇宙に存在する重元素の供給源としては、それほど重要ではない可能性をほのめかす。
それが意味するのは、まだ知られていない重元素の工場がどこかにあるはずということだ。
References:The universe’s biggest explosions made some of the elements we are composed of. But there’s another mystery source out there / written by hiroching / edited by / parumo
金はどこでできたのか?ってことか
>この大爆発を観察した最近の研究では、一部のガンマ線バーストで重元素の存在が確認されたものの、宇宙全体の量から見ればそれほど多くない可能性が浮上してきている。
> ということは、他にも重元素を生み出した未知なる発生源があるということだ
論理おかしい
なんで可能性が浮上しただけで、断定するんだ?
>>2
キロノヴァがレアイベントなんで、地球に存在する重元素の由来としては足りないんだろ。
たまたま太陽系の元になった星間物質がキロノヴァ残骸ってのは運が良すぎるし。
>>2
想定していた値と一致しない可能性があるならば、別の可能性も探るのは普通の話
想定していた値と一致していないけど、無視するなんて科学的ではない
>>2
「もし○○ならば、✕✕だ」
言葉の論理として何一つおかしくない
最初が無であったならなんで爆発が起こるんだろうな
爆発したからって物質が生まれるのも意味わかんねーし
宇宙は不思議や
>>3
その「無」というのは実際に何も無かったわけではなく
うまく説明できないので便宜上「無」としてるんでしょ。
仮説はいろいろ言われてるけどね。
そもそも人類が〝知っている〞世界の中でしか調べられないわけだからな…
すぐそばに知らない物質があるかもしれないけど知る術がなかったり
宇宙のすべてを理解することなんて出来るんだろうか
>>4
確かに完全に理解するのは無理そうですけど、それこそ「諦めたらそこで試合終了ですよ」なわけで、研究者の方々は日夜がんばっておられるのでしょうね。
どうせ生きてるうちにわかることは100%ないから、もう考えない。
専門家が細い糸を未来に紡いでいくのを横目で見てるだけでいいや。
中性子星の融合説が有力になったのではなかったのかね。
現在の宇宙は、人工的なビッグバンに因って創られた世界なのだ~
>>10
地球はいずれ住めなくなるから宇宙に出る
宇宙もいずれ終わるから新しい宇宙を作る
ある意味間違ってない
その重元素がスペシウム133だったなら人類はみなウルトラマンになれたんだ…
つまり、宇宙のどこかに錬金術師がいるってことだ。
天文学者や物理学者はとっくのとうに考慮に入れているに違いないが、過去の宇宙は今より小さくて星は巨大で早く寿命を迎えて中性子星になっていたから中性子星の数が多くその分衝突も多いのではと思ってしまうな。ガス雲が直接崩壊してブラックホールになるという説が正しければ中性子星になる事だってあるかもしれない。
ガンマ線バーストはたまたま地球が観測できる位置にあるときしか観測できないし、LIGOやVLGOは(天文学的には)比較的近くの重力波源しか観測できない。
とまあ素人が思いつく事を書いてみたけれど、宇宙は素人どころかトップクラスの優秀な科学者にもまだまだわからない事が多いのだな。
人類は未だに火星にすら行けないのに
宇宙の法則をどんどん解明していってるんだから凄いな
スペシウム光線みたいやな
重金属は超新星爆発の時に一気に核融合で生成されるんじゃなかったっけ?
中性子星は確かその残り滓だったような気が。
>>19
それだけでは足りないから、別の供給減がある可能性があるって話
中性子をトラップしても同位体にしかならないのでは?
重元素になるには陽子数がFe以上にならないと成立しないのでは?
むしろ重元素以上の仮想の超重元素が分裂して誕生した説の方が理解しやすいけどね。