
西暦79年のヴェスヴィオ火山の大噴火でイタリア・ナポリ近郊にあった古代都市、ポンペイが壊滅し、大勢の人たちが火砕流などに巻き込まれ、そのままの姿で絶命した。
発掘された時には遺体部分だけが腐敗消失し、火山灰の中に空洞ができていたため、石膏を流し込んで、市民の最期の瞬間の姿が石膏像として復元された。その石膏像の中には遺骨も閉じ込められていた。
ハーバード大学、マックス・プランク進化人類学研究所などの新たな研究では、石膏像に含まれていた犠牲者の骨から採取したDNAを解析した。
その結果、これまで考えられていた家族構成や性別などの仮説が間違っていたことが明らかになったのだ。
火山噴火で一瞬にして生き埋めとなったポンペイの犠牲者たち
ヴェスヴィオ火山の噴火時に発生した火砕流の速度、時速100km以上で、ポンペイの市民は到底逃げることはできず、一瞬のうちにほぼ全員が生き埋めになった。
その上から火山灰が降り注ぎ、遺体が腐敗すると中は空洞になった。
ポンペイ遺跡は19世紀に発見され、1870年代にこの空洞に石膏が流し込まれて、遺体の型がとられた。
実はその型取りの際、残っていた遺骨も石膏の中に閉じ込められていたという。

新たな技術で遺骨からDNAを抽出
19世紀にこの作業を行った考古学者たちは、100年以上もたってからDNAを抽出する新技術が登場することなど予見できなかっただろう。
イタリア、フィレンツェ大学の法医考古学者エレナ・ピリ氏ら研究チームが、修復中の石膏像86体から選んだ14体の骨の断片からDNAを抽出・分析した。
ハーバード大学とマックス・プランク進化人類学研究所の人類学者アリサ・ミトニック氏は、これは決して簡単な仕事ではなかったと語る。
噴火時の超高熱と石膏化の工程はどちらもDNAの長期保存に悪影響を与えます
遺伝子分析では頭蓋骨の内耳部分や歯がDNAをよく保存していることが知られていますが、今回の研究ではほんの一部分しかない骨からしかサンプルを採取できなかったため、DNA採取が非常に難しかったのです
サンプルを採取した14人中6人しか遺伝子データを読み込めなかったことから、いかに古代のDNAを手に入れることが難しいかがわかります(アリサ・ミトニック氏)
しかし、この6人は重要なデータを提供してくれ、これまでの思い込みをくつがえす見事な新事実を明らかにしてくれた。

DNA分析の結果、性別や家族構成が異なっていることが判明
これまで、子どもを抱きしめていた人物は、金のブレスレットを身に着けていたことと、子どもを守ろうとするかのような愛情あふれる姿勢から、女性だとばかり考えられていた。
しかし、DNAという揺るぎない証拠からこの想定は間違っていたことが判明したのだ。
「黄金の腕輪の家」では4人が見つかり、両親とふたりの子どもだと思われていたが、彼らも遺伝的にはなんの関係もない人たちだった。
抱き合って見つかったふたりは両者とも男性だった。

古代都市ポンペイは複雑で奥深い社会だった
こうした発見から、私たちが想像していたよりもポンペイはずっと複雑で奥深い社会だったことがうかがえる。
これは従来のジェンダーや家族の形の思い込みに疑問を投げかけるものだ。
犠牲者たちの従来の物語はいかにももっともらしいものでしたが、今回の遺伝子分析の結果、彼らの物語には「目に見えるもの」以上のものがあることが明らかになったことにとても驚きました
この結果は、現代西洋人の直感を反映していないローマ社会のジェンダーや家族の形に関する単純な解釈を考え直さなくてはならないことを痛感させられます(アリサ・ミトニック氏)
さらに、ポンペイには予想以上に大きな遺伝的多様性があることがわかった。
分析対象になった人たちは、何世紀もポンペイ周辺に住んでいた人たちではなく、東地中海や近東からの比較的新しい移民の子孫だったことが判明したのだ。
これは、イタリア西部のローマ地域に広く見られる多様性とよく似ていて、ローマ帝国全土で貿易を促進したために進んだ初期のグローバリゼーションの広まりを反映しているといえる。
人口数千人のポンペイの中の、たった6人からわかったこの事実は驚くべきことだ。
今回の結果は、およそ2000年に生きていた人たちの生活を垣間見せてくれるだけでなく、人類史を正確に研究するには、思い込みや偏見を捨てなくてはならないことを警告している。
私たちの研究結果がこれまでの説を覆すことになりましたが、同じ過ちを繰り返さないようにすることが重要です
さまざまな証拠を統合し、古代の文脈に現代の仮定を短絡的に当てはめないようにすることが大切なのです(アリサ・ミトニック氏)
本研究は『Current Biology』誌(2024年11月7日付)に掲載された。
References: DNA evidence rewrites histories for people bu | EurekAlert! / Pompeii DNA Overturns Long-Held Assumptions About Its Victims : ScienceAlert
本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。
性別は解ったとしても遺体の人間関係やその人物の社会的地位はまだ解明できていないのかな?
以前、別のyoutubeでみた番組だと黄金の腕輪の家の子供は歯のすり減り具合から裕福な育ちだから、その家の子供ではないか、と予想されていた。大人の方もそうやって分析してるんだろうな。
噴火が怖くて近所の人達で集まってたのかな
仮説とは思いこみだけで作ったもので根拠がないのだから
ほとんどの仮説が間違っているのは当然
何かしらの根拠を元に仮説を立てるほうが多いと思う
100年以上当たり前だと思ってた通説が覆されたこと自体がすごいのに
> 仮説とは思いこみだけで作ったもの
科学も宗教の一種だと断言する人ってこういうふうに考えているのかもしれない
家主と使用人とか?
今回の記事で関係ない人たち同士ってのがとても意外ですが、技術でこうした通説を覆すような発見がなされると、今の説も必ずしも正しくないってことなんだなと改めて科学の繰り返してきた歴史を感じます。
もしかして石膏像の人たちの腕が抱擁の形になっているのは高温で大胸筋が焼けて収縮したせいかなと思いつきました。
噴火を恐れて屋根のある場所に外にいた人々が避難する、なんて十分考えられるやん
ジェンダーや多様性が現代より複雑だったんだ!ってのもまさに現代の思い込みに引っ張られてるだけでは…
噴火は日中すでにしてたんだよ
町から避難せず残った人々が寝てる間にやられた
そもそも抱き合っているようには見えないな。この犠牲者達を男性カップルだったことにしたい意図が透けてみえる。
大噴火が起きた非常事態だったのに
同じ場所に居たから家族って強引じゃないかと。
なぜジェンダーがどうとかに結びつけるのさ。
こういうの仮説から入るし、とっかかりに過ぎないのは言ってる連中だってわかってますよ。
ティラノサウルスに代表される恐竜だって、ひと所から多くの化石見つかったら「実は群れていた可能性が出てきた」とか言い出すところから始める人出てくるでしょ?
水に流されて淀に溜まっただけかもしれないけど本当のことなんて誰もわからないしね。
非常事態に小さな子が家族といたと推測するのは別に強引ではないと思う
火山と共に栄え、火山と共に滅んだのじゃ。禍福は糾える縄の如し
古代ギリシア・ローマは、男性が美しい男性を愛でるのが別におかしな事ではなかった価値観だから、まあそんな感じのお二人さんなんだろうね。
でも、性道徳が現代と違うからポリコレに利用すんなよとは思う。
家族じゃ無くても災害の時に子供がいたら庇っちゃうよね
ジェンダー? つまり同性カップルがいたかもって言いたいんだよね
ジェンダーは関係ないだろ変な使い方するなよ>カラパイアさんじゃなく原文書いた人
これ原文より訳と編集した側の問題かもしれない
偶然同じ内容の記事を他で読んだけど
この記事で「抱き合って見つかったふたりは両者とも男性」とだけあるこの二人
5歳の子と中年男性だって
これを読むとまた印象が違ってくる
ミトニック氏は現代の文脈で解釈することを戒めているけどその上でGzNjさんのコメに共感しちゃう
あ、先コメしちゃったけどこれやっぱり原文時点の問題だわごめん
同じミトニック氏絡みの論文でもリファレンスが違ったわ
ちょっとアレだが、火事場泥棒が逃げ損ねて…という可能性もあるんだよなぁ。
移民系が多いのは、他所から移ってきたから火砕流の恐ろしさを伝承として聞いていなくて、噴火を見ても逃げなかったからかな?
子供を守って抱きしめて亡くなられた
家族の愛情深さに 胸が詰まり
フルフルと涙した 私の涙は
勘違いだったってこと?
噴火の悲惨さは変わらないけど
世界中が勘違いしたと思うんだ…
他人が子供を守って抱きしめて亡くなられた場合はフルフルと涙しないの?
子供が裕福な家の子なら、その守役(織田信長から見た平手政秀、伊達政宗から見た片倉小十郎)かもしれん。
天皇陛下の御養育係は有名だったけど、
「常に何かあれば我が身を盾に宮様をお守りする覚悟だった」
って言ってたし、悠仁さまもよーく見ると中学くらいまで?は常に後ろにピッタリ丸顔の男性が寄り添ってた。
死を目前にした人の恐怖の様子が生々しい
人の死を目の当たりにするとついつい思ってしまう
こうして生まれてきた以上最期には文字通り死ぬほど苦しむ未来が待っているんだろうな・・・
ジェンダーや多様性や移民というワードが出るとどうしても政治的主張に記事が歪曲されてるのでは?と疑ってしまう