火星には川や湖のような水によって作られた地形が数多く残されている。だが、果たしてそれらは本当に水だったのか?
米国や英国の研究チームは、「炭素隔離」の研究成果をもとに、液体の二酸化炭素が岩石とどのように作用するのか調べてみた。
すると、その副産物が現在の火星に見られるものとぴったり一致していることが判明したのだ。
研究チームは、液体二酸化炭素が火星の地形を作ったという説を絶対確実なものと考えているわけではない。それでも、その可能性は無視できないほど高すぎるという。
火星の地形は何によって作られたのか?
今は乾燥した大地が広がる火星だが、その地形をじっと観察してみると、川・湖・三角州など、かつて水が流れていたことを想像させる痕跡が残されている。
こうしたことから、初期の火星には液体の水が豊富に存在しており、それによって今日の地形が形成されたのだろうと考えられている。
ところが、そこには盲点がある。液体ならば、水でない別のものである可能性もあるからだ。
初期の火星は濃密な大気で包まれていた。そこで二酸化炭素が液化し、地表を流れていたという仮説は、それなりに現実的なものだろうと、マサチューセッツ工科大学のマイケル・ヘクト氏らは考えている。
液体二酸化炭素は岩石とどのように作用するのか?
彼らが指摘するのは、「炭素隔離」(温室効果ガス削減のために二酸化炭素を閉じ込めて貯蔵する技術)についてのこれまでの研究だ。
そうした研究では、塩水と超臨界状態にある二酸化炭素(特定の温度と圧力で、二酸化炭素が気体と液体の両方の性質を示すようになる相)が、鉱物とどのように作用するのか調査している。
そこからわかるのは、初期の火星に存在した状況では、さまざまなプロセスによって二酸化炭素が炭酸塩として鉱物に組み込まれるだろうことだ。
地球の地下に二酸化炭素を閉じ込めようとした場合、水飽和状態にあれば、液体二酸化炭素は鉱物と驚くほどよく化学反応を起こすのだという。そして、この状況は火星にもあった可能性が高い。
それを裏付けているのが、この時に作られる炭酸塩・フィロケイ酸・硫酸塩といった副産物だ。じつはこうした化合物は、今日の火星の鉱物でも見られるのだという。
ならば現在の火星の鉱物や地表の特徴は、二酸化炭素の氷河の下で溶けてできた液体二酸化炭素や、地下の貯留層の働きで形作られたものだったとしてもおかしくはない。
現実には水と二酸化炭素の両方が作用した?
ただし研究チームは、この仮説にばかり囚われているわけでもない。
と言うのも、実際のところは、液体の水と液体の二酸化炭素の両方が、現在の火星の地形を形作ってきた可能性も想定しているからだ。
研究チームの最大の主張は、どちらか一方である必要はないということだ。かつて火星でどのようなことが起きていたのか解明するには、地球の自然現象の枠を超え、さまざまな可能性を探る必要があるからだ。
初期の火星で液体がどのように流れ、今日見られる地形が出来上がったのか? これは火星の研究において最大の未解決問題であると、ヘクト氏は述べている。
「おそらく正解は1つではありません。私たちは単にパズルのもう一つのピースを提案しているだけです」
この研究は『Nature Geoscience』(2024年10月28日付)に掲載された。
References: Liquid on Mars was not necessarily all water | MIT News | Massachusetts Institute of Technology / Carbon dioxide rivers? Ancient Mars liquid may not all have been water | Space
二酸化炭素は-55℃・6気圧の条件だと液体になれるらしい。
気体二酸化炭素の比重は空気の約1.5倍、
火星の表面重力は地球の約38%なので
大気の殆どがCO2なら単純計算すれば
今の地球の10倍余りの大気厚と-55℃の温度があれば
液体二酸化炭素が存在できる。
なお温度が上がるほど液体化には高い圧力が必要で、
-60℃以下だと圧力に関わらず液体になれないよう。
かなり厳しい条件にも思えるけど、かつての火星には
その環境があった可能性もそれなりにあるわけか。
火星だとドライアイス作り放題で、炭酸もの飲み放題だ
げっぷしまくりで大変かな