外債不要論の合理性を考える 金利平価について(1)

過去記事「外債不要論を考える 外債と円債は同じリターンになるか」に関連して、金利平価の考え方がよくわからないというコメントをいただきました。

実は私もよくわかりませんでした・・・ (-_-;

わからないというのは、金利平価が理解できないのではなく、金利平価と外債不要論の関連性がよく理解できなかったということです。順を追って考えてみましょう。

今回と次回は為替の金利平価について


まず、私のスタンス


外債不要論は、私なりの理解では

長期的な運用を考える場合、
1. 外国債券の期待リターンは国内債券の期待リターンと同じになる。
2. しかし、外国債券への投資は為替のリスクを負う。
3. 外債は期待リターンが国内債と同じなのにリスクは大きい。
4. したがって、外債はポートフォリオに組み入れる必要はない。

というロジックです。

確認ですが、1は、為替をオープンにした(=為替ヘッジをしない)外債投資です。

「ポートフォリオに外債を組み入れる必要はない」という結論を受け入れる前に、1が正しく成り立つかどうかを確認する必要があります。

で、以前の記事「外債不要論を考える 外債と円債は同じリターンになるか」で、長期的に見ても購買力平価を用いて期待リターンが同じになると主張するのは無理があるという趣旨の事を書きました。

私は、理論的にも現実的にも、1が成り立つとは考えていません。

1が成り立つとは考えてないので、当然ですが、4の結論を受け入れてはいません。


外債不要論で使われる理論


外国債券の期待リターンが国内債券と同じになる、と主張する理論的な背景は、「購買力平価」と「金利平価」の二つです。

以前の記事では購買力平価が現実的には成り立たないことを考察しました。今回は金利平価を考えます。


金利平価とは?


為替における金利平価(金利パリティ)は、フォワード価格を決めるのに使われる理論です。フォワード価格とは、将来に受け渡すことを約束して、いま値段を決める取引です。為替予約とも言います。

円の金利は1%、ドルの金利は5%とします。

それで、いま1ドル=120円とします。

私が1年後の海外旅行に備えて、近くの銀行で100ドルを買うとします。

いまの100ドルは12,000円ですね。

でも、いま私は持ち合わせがありません。

ドルが必要になるのは1年後なので、支払いは1年後にしてくださいと銀行に頼みます。そうするとどうなるか・・・

実は、1年後に11,543円の支払いで済みます。

なぜなら

金利平価に基づく1年後のフォワードレートは、115.43円だからです。


計算式


いま、1ドル=120円です。円の金利は1%、ドルの金利は5%。

1ドルと120円を、それぞれの通貨の金利で1年運用するとしましょう。そうすると・・・

1ドル → 1.05ドル(1×1.05)
120円 → 121.20円 (120×1.01)

1年後の1.05ドルと121.20円は、現時点で等価です。

つまり、1.05ドル = 121.20円 となります。
だから、1.00ドル = 115.43円 なんです。

現時点での1年後のフォワードレートが、115.43円に決まりました。これが金利平価です。


金利平価の意味


金利平価は、フォワードレートを決める理論で、その理論背景は「無裁定取引」です。

無裁定取引を説明します。

先ほどの例では、私はいま時点で持ち合わせがないとしましたが、それを変えて、ちょうど12,000円持っているとしましょう。

12,000円を1年間どう運用するか・・・ プランが2つあります。

1. 12,000円を円金利1%で運用する
2. 12,000円でドルを買って、ドル金利5%で運用する。ただし、為替リスクをヘッジするためにフォワード取引で1年後の為替を予約する。

で、1と2が同じリターンになるのが無裁定取引です。2は為替ヘッジをするので実質的に為替リスクを負わないから、1と2は経済的には同じことになります。だから為替をフルヘッジしたドルでの運用は、円での運用と同じにならないといけないのです。

2.の場合、1年後に105ドルを手にします。で、その105ドルを115.43円で円に戻すと12,120円になります。1.も1年後には12,120円を手にします。同じですね。

もし、フォワードレートがこれ以外の数字、たとえば、117円で決まると、2の方が有利になります。計算すると、実質的に円で2.37%の利回りになってしまいます。逆に、114円で決まると2は不利です。計算すると実質的に円でマイナス0.25%の利回りです。そういうことが起きないのが金融の世界です。

フリーランチはない、ということです。

1と2が同じリターンになるように、フォワードレートが決まる。それが無裁定条件であって、金利平価の考え方です。

で、誤解してはいけないのは・・・

長くなったので次回に続きます。

次回記事:外債不要論の合理性を考える 金利平価について(2)

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