よく言われるのは「為替はハイリスク・ノーリターン」という説です。
外国債券への投資は、(為替)リスクを増やすだけなのでやる必要はない。為替は資産ではなく、通貨の交換比率に過ぎない。資産配分で債券への投資は国内債券だけで十分。
こんな流れで語られます。
私はこの説にちょっと違和感を持ってます。
で、今回は外債投資について考えてみました。
購買力平価
日経の「高金利外債に潜むリスク 長期で為替差損の傾向」を読みました。[外部記事]
この記事の内容自体に大きな違和感はありません。為替は長期で見たとき購買力平価が働く。基本的にはその通りでしょう。
とはいえ、購買力平価は「長期で見たとき」の「大まかな目安」と考えたほうがいいです。
実際の為替相場は購買力平価から乖離して動きますから。
インフレ格差以外に、経常収支の動向やカントリーリスクの変動なども影響します。経済成長の期待が高まる時期は経常収支や政治リスクには目をつぶってマネーが流入します。逆に、地政学リスクが高まったり経済の舵取りに不安が高まると、マネーは流出します。
購買力平価はあくまで目安ですね。
個別と一般
日経の記事はトルコリラの債券ファンドの話しでした。
「為替差損が生じた結果、これまで受け取った分配金を考慮してもなお4割元本割れしている」という悲しい状況です。
で、大事なのは・・・
これって、あくまで「特定の通貨」の「特定の時期の話」としてとらえるべきです。「すべての通貨」で「どんな期間でも成り立つ話」と思うのは早計です。
為替差損で大きく損をすることもある。
でも、常にそうなるわけではない。
そう考えるのがいいでしょう。
一般化しない理由
新興国通貨の債券ファンドを3つ紹介します。
新光ブラジル債券ファンド [参照]
設定来の騰落率:71.1%
過去5年:7.1%
過去3年:29.3%
JPMインドネシア債券ファンド [参照]
設定来の騰落率:16.7%
過去5年:-%
過去3年:9.3%
トルコ債券オープン [参照]
設定来の騰落率:-51.1%
過去5年:-%
過去3年:-46.1%
3つのファンドの過去3年の騰落率を比較すると、トルコリラ債券ファンドが突出して悪いです。
ブラジル債券ファンドやインドネシア債券ファンドはプラスのリターンです。この間、為替は外国通貨安・円高です。
思うこと
元記事には「高金利外債を買って金利収入を得られたとしても、結果的に為替差損の拡大で帳消しになることがある」とあります。
んー
「帳消しになることがある」のはその通りですが、その他の可能性も大事ですね。
1. 帳消しになることがある
2. 金利収入よりも為替差損が大きくて、マイナスリターンになることもある
3. 金利収入よりも為替差損が小さくて、プラスリターンになることもある
過去3年で見るとトルコ債券は2のケース、ブラジル債券とインドネシア債券は3のケースでした。過去5年など観測期間を変えれば別の結果になるでしょう。
つまり、何がいいたいかと言うと
「そういう可能性がある」と、「常にそうなる」「次もそうなる」「いつかはそうなる」は違うということです。
トルコ債券の事象をどこまで一般化できるか。
そこは慎重に考えたいですね。
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脳は法則化や一般化したがるという習性に
注意を払っておいた方がいいですね
なぜ一般化したいかといったら安心したいから
カテゴリー分けも類型化もステレオタイプ化も一緒
できるだけ単純に理解して安心したい願望がある
書く側も読む側も「そうなんだ」という納得感に安堵する
自然法則のようにはいかないんですけどね
※4153:消費しないピノキオさん
そうですね。
一般化して安心したい誘惑はありますね。
複雑な関係性や、たくさんの可能性を考えるのは大変です。
手っ取り早い「答え」があればいいのですが、そうはいかないですね。