内外の債券で期待リターンが同じなら、為替リスクがある外債はリスクが高いので不要だという主張につながります。
今回は外債不要論について考えます。
外債不要論の考え方
外債を不要とする考え方の基本は、
1. 高金利通貨の債券に投資しても
2. 為替が円高になって
3. 結局は日本の債券に投資するのと変わらない
というものです。
為替が円高になるのはインフレ格差があるからです。「購買力平価」という理論を用いて説明しています。
私の考えは後ほど書くとして、外債不要論を考える上での最大のポイントは、「二国の債券リターンが同じになるくらいの強いレベルで、為替の購買力平価が成り立つかどうか」です。
購買力平価
以前の記事「ドル円はどうなるのでしょう? 為替市場の見方」で、購買力平価について書きました。
このときは世界展開しているトラーバックスコーヒーの値段でした。一物一価が世界的にも成り立つとすると、インフレ率の高い国の通貨は弱くなり、インフレ率の低い国の通貨は強くなりやすいということです。
なので、「基本的にはインフレ格差の点では円は強くなりやすい」と書きました。
でもね、と。
購買力平価は、超長期の緩やかなトレンドを示すに過ぎません。過去記事からの使い回しですが、チャートにするとこんな感じです。
赤線が購買力平価で想定される為替の動きです。
購買力平価の威力って、それほど大きくないですよね。実際の為替水準は購買力平価から大きく乖離します。
この購買力平価を基本に据えて、為替が購買力平価に従う、だから二国間の債券投資の期待リターンも同じになる、と論旨展開するのはやや強引でしょうね。
購買力平価でもう一歩踏み込んで考えること
購買力平価の考え方は、一物一価の原則です。同じものなら同じ値段。
でも、それは経済状況が同一で、取引にそれほどコストがかからない場合です。二国間のように、経済状況が異なる場合や地理的に大きく離れている場合は、同じものでも値段は違います。
それぞれの国でファンダメンタルズは違いますよね。国民所得も、インフレ率も、成長率も違います。人口動態も違うし、産業構造も違います。
現時点で一物一価が成り立っているわけでもなく、将来に成り立つという保証もないわけです。
繰り返しですが、購買力平価は為替の大まかな方向性を示すくらいのものです。インフレ格差が4%あるから、為替も4%円高に動くといった一対一の関係ではありません。
まとめ、の前の整理
私の理解では、外債を不要とする考えの根っこにあるのは、円債に投資しても外債に投資しても、期待リターンは円債と同じになるという考え方です。
その考え方の支えになるのが、為替における購買力平価の理論です。
で、その考え方に不足しているのは
1. 超長期を想定しても、為替は購買力平価で均衡するわけではない。
2. 株式投資や直接投資などのマネーフローの影響、実需取引の影響を無視している。
ということです。
まとめ、のようなもの
ということで、私の結論です。
円債と外債で期待リターンが同じになるためには、為替レートが購買力平価を反映した動きになる、という前提が成立しないといけません。
しかし、私はその前提は円債と外債で期待リターンが同じになるほど強いレベルでは成立しないと思っているので、円債と外債で期待リターンが同じになるという論を受け入れることはしません。理論的にも実践的にも、外債を排除する理由はありません。
相場観的に外債がいいかどうかは別にして、です。
もちろん考え方は人それぞれなので、外債不要論を否定するものではありません。外債は不要だと思う人は投資しなければいいですし、外債に投資したい人は投資すればいいんです。
ただ、外債は円債と同じ期待収益率になるという考え方を、本当にその考え方でいいのかと、たまに考え直してみるのもいいかもしれません。
ん、前回と同じ〆の言葉だ・・・(笑)
- - -
注記:外債不要論は、購買力平価の他に金利平価の考え方も用いています。そちらまで手を広げると話が拡散するので今回は触れませんでした。土台の購買力平価が強いレベルで成り立たない以上、金利平価まで話を拡散する必要はないと判断したためです。
追加記事:外債不要論は、結局どうなの? に対する回答
ブログ村:よろしければ一押しをお願いします。
こんばんは
難しいですね。
外債と日本国債のリスクが同じなら自分なら半々にします。
為替リスクもリスクもあればリターンもあるのでリスクのみフォーカスするのも変かな?
※674:yazirobe777さん
けっこう難しくて意見の分かれる話題だと思います。
為替はリスクだけでリターンはないという意見もありますし。ただ、外債不要論をよく読むと、資産配分で外債を不要とするには根拠が弱いと思います。
外債不要論というのは、ある程度長い目で見た時に円債と外債のリターンが同じぐらいになるかも? ということでしょう。
だったら、外債は有利だと思うときだけ持てば良いと思います。
・外債の利回りが円債よりも高い。
・外債の利回りが高くてこれから下がる。(債券価格が上がる)
・為替が円安方向に行く。
と思うときですね。
※677:Tansney Gohnさん
そうですね。外債は有利だと思うときだけ持つという方法もいいですよね。
外債不要論は、最初っから外債は要らない!と決めつけているようで、投資チャンスを自ら狭めているようなのが残念です。
外債ファンド結構持ってるんですが、購買力平価でいずれは円高に収斂していくなら、どっかで手放していかないといかんですねえ。。。
※680:招き猫の右手さん
リスクオフの局面では円高に行きやすいですからね。。。
なんとかショックの局面とか、株安の局面入りになったら外債も弱いかもしれませんね。
初めまして
濃い内容が多くていつも勉強になります。外債不要論は理解不足です。購買力平価の事は何となく理解できたのですが、金利平価はどう考えたらいいのでしょうか。外債に投資していいのかどうかで悩んでいます。
もしお時間があればでいいので、金利平価についても記事を書いていただけないでしょうか。できたらで結構です。
いきなりの投稿で不躾だとは思いますが、難しい話をわかりやすく解説しているブログは意外と少ないので、ぜひ金利平価を解説していただけたらと思います。よろしくお願いします。
※740:初心者さん
コメントありがとうございます。
外債不要論は、論を理解するのがちょっと難しいですね。私は外債の期待リターンが円債と同じだとは思っていないので、そのときの相場によりますが、外債に投資していいと思っています。正確に表現すると、外債は不要ではない、ということです。
金利平価については、いつか記事で取り上げようと思います。
引き続きよろしくお願いします。