いま1ドルが120円で、円金利が1%、ドル金利が5%とします。
そうすると1年後のフォワード価格は115.43円に決まります。これが金利平価で、その理論的な背景は無裁定取引です。
で、今回は金利平価で気をつけることについて
金利平価で誤解してはいけないこと
フォワード価格が115.43円だからといって、1年後の、その時に取引される為替の水準が115.43円になるわけではありません。1年間かけて120円が115.43円になるような圧力がかかるわけでもありません。
長期的に見ても、フォワード価格は為替の水準には影響しません。
どいうことか考えてみましょう。
いま為替が120円で、1年後を受け渡し日とするフォワード価格は115.43円です。
で、1か月後、為替が150円になったとします。そのとき、11か月後を受け渡し日とするフォワードを組むとどうなるでしょう。
2通貨の金利が変わらないとして、為替が150円で、11か月後を受け渡し日とするフォワード価格は144.74円です。
さて、いまから1年後と、1か月先の11か月後は、同じ日です。
同じ受け渡し日のフォワード価格が115.43円と144.74円で併存するわけです。為替のフォワード取引は世の中に無数にあります。
そうすると、同じ受け渡し日で、異なるフォワード価格が無数にあるわけです。
同じ受け渡し日のフォワード価格は無数にあるので、フォワード価格が将来の為替水準に影響しないというのが感覚的にお分かりいただけるでしょうか。
同じように、フォワード価格は購買力平価とも関係はありません。
まとめ、のようなもの
外債不要論では、為替の動きをインフレ格差(購買力平価)と金利差(金利平価)に置いて、外債の期待リターンと円債の期待リターンは同じになると説きます。
でも
購買力平価は大まかなトレンドを示すに過ぎませんし、金利平価を直物為替レート(スポットレート)にどれほど適用できるかは慎重に考えたほうがいいでしょう。
理論は理論として学び、その理論がどれだけ現実を描写しているのか、あるいは、現実がどれだけ理論的に動いているのか、さらには、そもそも、その理論をこれに当てはめてもいいのか、などを自分なりに考えることが大事じゃないでしょうか。
私としては、長期的にみても、直物の為替は購買力平価からも金利平価からも乖離するのだから、外債を不要として最初っから排除するよりも、そのときどきの相場観で判断すればいいんじゃないかなーと思ってます。
おまけ、のようなもの
カバーなし金利平価についての参考資料
カバーなし金利平価とは、2国間の金利差が為替市場における低金利国通貨の増価と高金利国通貨の減価によって相殺されるとする説です。外債不要論の基本ロジックと同じです。
で、カバーなし金利平価について、日銀のレポートが興味深いので参考までに紹介します。
要旨
低金利通貨が減価しやすいという現象は、多くの先行研究で確認されている。これは、「カバー無し金利平価」と呼ばれる理論と正反対の動きであり、経済学において最も注目されている謎の一つである。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2007/wp07e22.htm/
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金利平価の解説をお願いした者です。
解説ありがとうございます。難しい内容ですが、「直物の為替は購買力平価からも金利平価からも乖離する」というのはすんなり納得できました。
外債投資について入り口段階で締め出すのはやめようと思います。
今回は本当にありがとうございました。
※753:初心者さん
そうですね。入り口段階で締め出さないで、自然体で考えて、割に合うと思えば組み入れればいいと思います。
金利平価は高金利通貨が弱くなってバランスするという論ですが、実際には高金利通貨は世界から投資資金を集めて強くなったりしますから金利平価の考え方だけで為替を見ない方がいいと思います。
こんにちは
経済学上の謎とは面白いですね。
神のようなスパコンで計算させた物理現象が現実とかけ離れてしまう
現実世界ではまだ神秘的な謎が生きて行くのでしょうね。(笑)
すみません質問です。
日本円:短期金利0%、長期金利1%
外国通貨:短期金利0.5%、長期金利5%
でフルヘッジ外債等をした場合の期待リターンはどう考えたらいいでしょうか。
※756:yazirobe777さん
経済学上の謎って、なんだか大きなネーミングですね。
現実世界は複雑です。
「理論的にはこうなる。ドヤ!キリッ!」と言えない複雑さがありますねー。だから面白いんですけど。
※757:-さん
こんにちは。
その条件でフルヘッジ外債したときの期待リターンは、説明がちょっと長くなりますので後日ブログ記事で取り上げようと思います。
※757:-さん
追加でコメントします。考え方のポイントのみ、取り急ぎ。
為替をフルヘッジして外債投資した場合、為替のリスクはありません。
なので、為替の動き(リターンとリスク)は考えなくて大丈夫です。あとは、純粋に債券投資のリターンを考えることになります。短期金利で為替ヘッジして、長期金利で運用するので、その際のポイントは、長短スプレッドとイールドカーブの形状変化です。
「カバーなし金利平価」と呼ぶんですね。私にはこちらの流れの方が自然に感じますが、実際は…という部分が面白いですね!
最近、ポンド預金を円転するタイミングについて妄想を膨らませていました。結局、初期の方針は変えない事にしたのですが、考えるだけで、十分楽しかったりします。
面白い記事に感謝です。
※2902:のろのろさん
「カバーなし金利平価」って、なんとなくぎこちない名称ですね。英語だと「Uncovered Interest rate Parity」で、こっちはちょっとカッコいい感じがします。
いまポンドは140円台なんですね。私にとってポンドは200円のイメージがある通貨なんです・・・