ポケモンをプロデュースする会社、株式会社ポケモン(ポケモン社)。「スマートスピーカー」という言葉もなかった黎明期に、スマートスピーカーを使った「エンタメを創りたい」という想いから、「ピカチュウトーク」を株式会社カヤック(カヤック)と共同で開発しています。「ピカチュウトーク」の開発に至ったきっかけや背景など、開発に関わった 4 人のキーパーソンに話を伺いました。


■ 利用している Google Cloud Platform サービス

Google App EngineGoogle Cloud StorageGoogle StackdriverCloud DatastoreCloud Functions

株式会社ポケモン
「ポケモンという存在を通して、現実世界と仮想世界の両方を豊かにすること。」という企業理念に基づいて、ゲームをはじめ、アニメ、映画、グッズ、アプリケーション、イベント、タイアップ企画など、ポケモンに関するあらゆるサービスをプロデュースし、グローバルに展開しています。

■ 写真左から
株式会社カヤック
 企画部・技術部・人事部 村井 孝至 氏
 技術部・人事部 黄 辰琳 氏
 IoT 制作室・技術部・人事部 君塚 史高 氏

株式会社ポケモン
 マネージャー プロダクトエンジニア プラットフォーム戦略室 小川 慧 氏

「ピカチュウトーク」の開発環境として GCP を採用したポケモン社とカヤック

Google Home / Google Home Mini に、「OK Google, ピカチュウと話したい」と呼びかけると、「ピカ、ピカチュウ~!」とピカチュウが登場。「ピカチュウ、10 まんボルト。」と言えば「ピッカー……チュウウウウウ!」と攻撃してくれる。とにかく、何を聞いても「ピカ」しか答えないが、なぜかピカチュウと一緒の気分が味わえる「ピカチュウトーク」。このサービスを提供しているのがポケモン社です。ポケモン社 マネージャー プロダクトエンジニアの小川 慧さんは、「新たなサービスとして、取り組んでいるのが 『Pokémon GO』 を代表とするアプリの分野。ピカチュウトークも、アプリ分野の 1 つです。開発プロジェクトは、スマートスピーカーが日本に上陸する前の 2017 年 6 月よりスタートしました。」と話します。そして「ピカチュウトーク」の開発プロジェクトをサポートしたのがカヤック。


カヤックは、ゲームやアプリ開発のほか、本社がある神奈川県 鎌倉市に保育園や食堂を作るなど、地域密着の事業も展開。カヤック 企画部・技術部・人事部の村井 孝至さんは、「面白いことは何でもやる会社で、オートクチュールのものづくりが特長です。今回、小川さんと縁あって、ピカチュウトークの開発に参画しました。」と語ります。

「このプロジェクトは、豊富なアイデア力を持つカヤックさんと組むしかないと考え、何を作るか決まっていない企画の段階から依頼をしました。開発にあたり、1 つだけ “エンタメを創る” という条件がありました。」と小川さん。最大の課題は、スマートスピーカーから発せられる音声で、いかにビジュアルをイメージできるかでした。村井さんは、「鳴き声だけでポケモンの種類が分かり、イメージを膨らませることができるのは、かなりコアなファンです。ただ、ピカチュウの鳴き声であれば、ほとんどのファンが理解できます。これが、ピカチュウトークの誕生した背景でした。」と話しています。開発にあたり両社では、プラットフォームとして、Google Cloud Platform(GCP)を採用することを決定します。


急なアクセス増加でもサービス停止の心配がない GCP は絶大な安心感


「ピカチュウトーク」は、Google アシスタントが受け取った音声を解析し、Actions on Google で呼び出されるアプリとして開発されています。Dialogflow で記述された会話の内容(ロジック)に基づき、Cloud Functions でイベントにあわせて処理を振り分け、Cloud Datastore に登録されたピカチュウのセリフを組み立てて、Google アシスタントに戻します。このとき音声ストリーミングは、Google Cloud Storage に保管されます。

ピカチュウトーク システム構成図


Cloud Storage に登録されているピカチュウのセリフは、100 数十種類ですが、話しかけた内容はもちろん、時間や場所、天気などの条件により、すべて違った反応が返ってきます。小川さんは、「話した内容や話者との関係性、言葉がポジティブなのか、ネガティブなのかといった内容を、機械学習で解析し、解析結果に応じてピカチュウのセリフが抽出され、抽出されたピカチュウのセリフを組み合わせて返事が作成されます。理論上、無限の組み合わせのトークが可能です。」と話します。

GCP を採用した理由を、カヤック技術部・人事部 の黄 辰琳さんは、次のように話します。「Google Cloud Next '17 で、API. AI(現 Dialogflow)のデモを見て、効率的な開発環境からアナリティクス的な機能まで、必要なサービスがすべて統合されている GCP はすごいなと思っていました。ピカチュウトークの開発にあたり、いろいろなプロダクトを調べてみましたが、Google Home 用のアプリなので、GCP で統合した方が便利だと思い採用を決めました。Actions on Google のログを GCP で統合すれば、Google Stackdriver で、簡単に管理できるのも採用理由の 1 つでした。」

「Cloud Datastore は、Google App Engine(GAE)とセットで使われることが多いのですが、今回、Cloud Functions と一緒に使えるかを検証しました。その結果、スピードもかなり速く、非常にうまくいきました。GCP を使うのは初めてだったので、開発中にはまった時期もありましたが、Google のサポートに問い合わせると、適切に対応してもらえたので、短期間で解決できました。」(黄さん)。


また、他社プラットフォームの開発を担当した、カヤック IoT 制作室・技術部・人事部の君塚 史高さんは、「スマートスピーカーの黎明期だったので、日本語に対応していなかったとか、仕様がどんどん変更されるとか、開発中はいろいろありましたが、個人的には有意義な開発でした。ローンチタイトルの開発とは、まさにこういうことなのだという、めったに経験できない、非常によいプロジェクトだったと思っています。」と話します。


「ピカチュウトーク」は、エンジニア 5 名を含む、延べ十数名のスタッフが、3~4 か月で開発しています。「システム開発以外にも、台本作りや音声収録など、作業は山積みでした。台本作りは、ポケモンの主題歌などを作詞している戸田 昭吾さんにも協力してもらいました。エンジニアではない戸田さんとエンジニアをつなぐ仕組みとして、Google スプレッドシートで、音声とロジックの対応表を作ったのは、開発期間の短縮に非常に有効でした。」と小川さん。

GCP の導入効果を村井さんは、次のように語ります。「GCP を採用したことで、Cloud Functions も、Datastore も、自動的にスケールされるので非常に便利です。急に大量のアクセスがあった場合、サービスが止まってしまうのは最悪です。その心配がないのは絶大な安心感でした。今回、バックエンド エンジニアがいなかったので、フロント エンジニアでも、簡単にバックエンドの管理ができる GCP の威力を思い知りました。」

今後の展開について小川さんは、「ポケモンは、サービスをグローバルに展開しているので、Google のサポートに、グローバル対応のプロビジョニングを支援してもらえたのは非常に助かりました。GCP は、とにかくとっかかりやすく、スピードが速いことに驚きの連続。グローバル対応が非常に楽だったのも GCP ならではです。今後も役立つ機能やサービスがあれば、GCP を積極的に活用していきたいと思っています。」と話しています。

©2018 Pokémon ©1995-2018 Nintendo / Creatures Inc. / GAME FREAK inc.
ポケットモンスター・ポケモン・Pokémon は任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。


株式会社ポケモンの導入事例 PDF はこちらをご覧ください。
GCP のその他の導入事例はこちらをご覧ください。


Dialogflow Enterprise Edition により可能となる機能:
  • Google Cloud Platform Terms of Service : Dialogflow Enterprise Edition には Google Cloud Platform Terms of ServiceData Processing and Security Terms を含む)が適用されます。Enterprise Edition のユーザーは Google Cloud サポート パッケージの利用条件も満たしており、Enterprise Edition は近いうちに一定レベルの可用性を保証する SLA も提供します。
  • 柔軟性とスケーリング : デフォルトのリソース割り当て量が多いため、ユーザーの要求に応じてアプリを容易にスケールアップまたはダウンできます。
  • 従量料金での無制限の音声サポート : Standard と Enterprise の両エディションはともに、音声コマンドを認識したり、音声会話に対応したりできる会話アプリを作成できますが、それに加えて Dialogflow Enterprise Edition では従量制の料金で音声サポートを無制限に提供します。

ユニクロ、PolicyBazaar.com、ストレイヤー大学などの企業や組織は、すでに Dialogflow を使って会話エクスペリエンスを設計し、デプロイしています。

ユニクロの新しいショッピング体験に活用

ユニクロは、全世界で 約 1,900 店舗を展開する日本の先進的なアパレル小売ブランドです。同社ではモバイル アプリにチャットボットを搭載し、オンライン上だけでなく店舗でも、お客様のさまざまな質問に対応しています。現在、一部の会員向けにサービスを提供しており、ショッピングをより楽しく、シンプルにするこのチャットボットは、ユーザーの 40 % が毎週利用しています。

「私たちのショッピング チャットボットは Dialogflow を使って開発しました。メッセージング インターフェースを通じて、新しいショッピング体験を提供するとともに、お客様とのやり取りを機械学習によって継続的に改善しています。将来的には音声認識への拡張や多言語展開も検討しています。」
― 松山 真哉氏、ユニクロ グローバル デジタル コマース部 ディレクター​

保険商品の買い方を変える PolicyBazaar.com

PolicyBazaar.com は、インドの主要な保険商品向けマーケットプレイスです。消費者の啓蒙に加え、保険商品の比較や購入を容易にすることを目的に 2008 年に設立されました。現在、PolicyBazaar.com の年間訪問者数は 8,000 万人を超え、月間取引件数は 15 万件近くに達しています。

PolicyBazaar.com は、Dialogflow Enterprise Edition を使って会話型アシスタント チャットボットの PBee を作成し、デプロイしました。その目的は、訪問者へのサービス向上とともに、オンラインにおける保険商品の買い方を変えることです。同社は、ロギングおよび訓練モジュールを利用して顧客からの要望が多い事項を追跡し、業務処理の改善に結びつけています。PBee は、デプロイ後の数か月で顧客からの問い合わせの 60 % 以上にチャットで対応するようになり、ユーザーからの依頼をより迅速に処理できるようになりました。

PBee をデプロイして以来、PolicyBazaar.com では、自動車保険に関する同社とのやり取りにチャット インターフェースを使うユーザーが 5 倍に増え、同社の自動車保険の販売額全体に占めるチャット経由での販売額の割合は 40 % に達しています。

「Dialogflow は、テキストでやり取りする会話チャットボットの卓越したプラットフォームです。Dialogflow により、私たちはフロントエンドの制約を受けることなく、機械学習のメリットを最大限に引き出しています。私たちがチャットボットを使って獲得する保険契約は毎月 30 % ずつ増えており、直近では月間 1 万 3,000 件以上、保険料ベースでは同 200 万米ドルに迫りました。」
― Ashish Gupta 氏、Policybazaar.com の CTO 兼 CPO

Dialogflow の Standard Edition と Enterprise Edition の違いについては、こちらのドキュメントをご参照ください。

パブリック ベータの期間中に Dialogflow を活用して構築されるものを楽しみにしています。Dialogflow Enterprise Edition に関する詳細はこちらのプロダクト ページをご覧ください。

編集部注 : このほど、Chatbase から提供される基本的なレポートに自動的にアクセスできるようになりました。これは、ボットを簡単に分析、最適化して精度を高めるためのサービスです。こちらのチュートリアルを見れば、Chatbase の幅広い分析サービスの利用方法がわかります。

* この投稿は米国時間 11 月 16 日、Cloud AI 担当 Product Manager である Dan Aharon によって投稿されたもの(投稿はこちら)の抄訳です。

- By Dan Aharon, Product Manager for Cloud AI