番組で説明した資料はこちらで公開しています。



Google Cloud Next’18 で発表された内容は、次の 3 つのブログ記事、Google Cloud Next ’18 初日の出来事、Google Cloud Next ’18 2 日目の出来事、Google Cloud Next ’18 3 日目の出来事でも詳しく解説しているので、ぜ日ご覧ください。

Cloud OnAir では、各回 Google Cloud のエンジニアがトピックを設け、Google Cloud の最新情報を解説しています。過去の番組、説明資料、さらには視聴者からの質問と回答はこちらよりご覧いただけます。 最新の情報を得るためにもまずはご登録をお願いします。


「私たちは、オンプレミスとクラウドの両方でコンテナを統一的にデプロイし管理できるプラットフォームを必要としていました。Kubernetes が業界標準となりつつある中で、デプロイのリスクとコストを低減するために GCP 上の Kubernetes Engine を採用することは自然な流れでした。」
- Dinesh KESWANI 氏、HSBC の Global CTO

Cloud Services Platform は、密接な協力関係にある Cisco とともに開発し市場に投入してきたハイブリッド クラウド製品と技術的、アーキテクチャ的に足並みを揃えたものになっています。Google Cloud と Cisco が共同開発した Cisco Hybrid Cloud Platform for Google Cloud は 8 月に正式リリースされますが、すでに Kubernetes Engine との整合性が証明されており、そのままの状態で GCP に対応できます。

本記事では、Cloud Services Platform のさまざまな要素を紹介しながら、完全なハイブリッド クラウド インフラストラクチャの基盤をどのように築いているかを説明します。

Istio によるアプリケーション アーキテクチャのモダナイゼーション

私たちは昨年、受け身の IT 管理から先手を打つサービス運用へと転換を図る企業を支援するため、大きな布石を打ちました。スタックの上位層を管理してアプリケーションの認識と管理を可能にするという考えのもとに、複数のパートナー企業と共同開発したオープンソースのサービス メッシュ、Istio を発表したのです。Istio は、マイクロサービスを大々的に管理するのに必要なパワーをオペレーターに提供します。オープンソースの Istio は近くバージョン 1.0 へと移行し、本番環境にデプロイできるようになります。

そして今回、この Istio をベースとして、Kubernetes Engine クラスタ内のサービスを管理する Managed Istio をアルファ リリースしました。このマネージド サービスは Kubernetes Engine で利用可能な Istio ベースのサービス メッシュで、エンタープライズ サポートを備えています。Managed Istio は、次の 3 つの高度な機能を提供することで、プロアクティブなサービス運用への転換を加速させます。

  • サービス ディスカバリとインテリジェントなトラフィック管理 : Managed Istio は、クラスタ内で実行されているすべてのサービスを把握し、サービス間のネットワーク トラフィックを管理します。アプリケーション レベルの負荷分散や、コンテナと VM ワークロードのための高度なトラフィック ルーティングを使用して、健全性チェックやカナリア / Blue-Green デプロイメントなどを提供し、サーキット ブレーカーとタイムアウトに対応したフォールト トレラントなアプリケーションを実現します。

  • 認証を必要とするセキュアな通信 : Managed Istio は、エンドポイントのセグメント化と粒度の細かいポリシー設定、異常動作の検出とコンプライアンスの確保、デフォルトでの mTLS 使用によるトラフィックの暗号化などを提供します。

  • モニタリングと管理 : Google Cloud のモニタリング / 管理ツール スイートである Stackdriver とのインテグレーションにより、Managed Istio のもとで実行されるサービス システムの把握とトラブルシューティングを可能にします。

まだ開発初期の段階ですが、お客様の環境のスケーラビリティと可用性、管理のしやすさを大幅に引き上げるとともに、コンテナとマイクロサービスの利用を促進するための基盤テクノロジーとして、私たちは Istio と Managed Istio に大きな期待をかけています。

エンタープライズ グレードの Kubernetes をあらゆる場所で実現

コンテナとマイクロサービスはアプリケーション管理の方法として間違いなく優れており、共通の Kubernetes 管理レイヤを設ければその実現は大幅に早まるはずです。それを可能にしたのが、私たちが 4 年前にリリースした Kubernetes から生まれた Kubernetes Engine です。マネージド サービスの Kubernetes Engine は数多くのテストを通じて飛躍的に成長しています。実際、Kubernetes Engine のコア時間は 2017 年に前年比 9 倍に達しました。

そしてこの Kubernetes Engine と同じものが、近くオンプレミス インフラストラクチャでも利用できるようになります。まもなくアルファ テストに入る GKE On-Prem は、どこでも好きな環境にデプロイできる Kubernetes です。GKE On-Prem は Google によって設定され、Kubernetes のインストールやアップグレードを容易にするとともに、GCP とオンプレミスの両方に次の機能を提供します。

  • 統一されたマルチクラスタ登録とアップグレード管理
  • Stackdriver との連携によるモニタリングとロギングの一元化
  • ハイブリッド IAM(Identity and Access Management)
  • Kubernetes アプリケーション向けの GCP Marketplace
  • GCP とオンプレミスの両方における統合的なクラスタ管理
  • プロフェッショナルなサービスとエンタープライズ グレードのサポート

GKE On-Prem の登場により、必ずしもクラウドに移行しなくても、オンプレミスにある既存アプリケーションの刷新に取り組めるようになりました。クラウドへの将来的な移行を自社のペースで進められるようになったわけです。

Kubernetes ワークロードの自動的な管理

大規模なクラスタの管理では、適切なセキュリティ制御手段を用いて、セキュリティ ポリシーを簡単に管理、徹底できるようにすることが必要不可欠です。私たちは今回、Kubernetes の実行場所に関係なく一元的にクラスタを管理できるようにする GKE Policy Management を発表しました。

GKE Policy Management を導入すると、Kubernetes 管理者は唯一真正なポリシーを設定して、すべての対象クラスタに自動的に同期させることが可能になります。GKE Policy Management は、リポジトリに格納された定義済みのポリシーをサポートするほか、既存の Google Cloud IAM ポリシーを流用することでクラスタを容易に保護します。GKE Policy Management はまもなくアルファ リリースされる予定です。興味のある方はこちらからサインアップしてください。

環境に対するサービス セントリック ビュー

Cloud Services Platform には、ワークロードのクラウドへの移行を単純化するだけでなく、サービス運用の改善を図るための基盤を築くテクノロジーが含まれています。インフラストラクチャからサービスを見るのではなく、サービスを中心に据えてインフラストラクチャを見るためのビューを提供するのです。今回発表した Stackdriver Service Monitoring は、次のような新しいビューを提供します。

  • サービス グラフ : 環境全体のリアルタイムな鳥瞰図を提供します。通信方法と依存関係を含めた形ですべてのマイクロサービスを表示します。
  • SLO(サービス レベル目標)モニタリング : Google の SRE 担当者がGoogle サービスに対して実施しているのと同様の方法(お客様中心で疲労が少ない方法)でモニタリングとアラートを行います。
  • サービス ダッシュボード : 1 つのサービスに対するすべてのシグナルを 1 か所にまとめ、従来よりも簡単かつ迅速にデバッグできるようにし、平均修復時間(MTTR)の削減に貢献します。

Stackdriver Service Monitoring は、強固な Istio インフラストラクチャと App Engine で動作するワークロードを対象として設計されています。

マイクロサービスが API になるとき

マイクロサービスは、ワークロードをクラウドに移行するスピードを引き上げるうえでシンプルかつ魅力的な手段であり、規模の大きいクラウド戦略へと進むためのルートとして機能します。マイクロサービスのディスカバリ、接続、管理は Istio によって実現できますが、社内のグループ、パートナー、あるいは社外の開発者がこれらのマイクロサービスを必要とするようになると、マイクロサービスはあっという間に境界線を越えて API になります。

企業はマイクロサービスの管理とともに API の管理も必要とします。Apigee API Management for Istio は、API 管理をマイクロサービス スタックにネイティブに拡張し、Google Cloud の Apigee API 管理プラットフォームである Apigee Edge の堅牢な機能で Istio を補完します。Apigee Edge には、API の利用状況の表示、アクセスの提供、製品化、カタログ化、ディスカバリなどの機能に加え、開発者のためにスムーズなエクスペリエンスを作り出して API の利用を促進するデベロッパー ポータルが含まれています。

クラウドの可能性を最大限に引き出すために

コンテナと Kubernetes がなければ、Google の社内で今行われていることはとても実現できません。システム運用のサービス セントリック ビューもこれと同じくらい重要です。Cloud Services Platform は、前述のコア機能に加えて、その他の新しい機能領域へのアクセスも提供します。

  • GKE サーバーレス アドオンを使用すれば、サーバーレス ワークロードを Kubernetes Engine にワンステップでデプロイして実行できます。ソースからコンテナを瞬時に生成し、コンテナ ベースのステートレス ワークロードの自動スケーリングやゼロへのスケールダウンさえ可能です。GKEサーバーレス アドオンの早期プレビューにはこちらから参加できます。

  • Knative(ケイネイティブと発音)は、GKE サーバーレス アドオンを支えているのと同じテクノロジーによるオープンソースのサーバーレス コンポーネントです。クラウドかオンプレミスかを問わず、Kubernetes 上で動作するサーバーレス アプリケーションの構築とデプロイに必要なビルディング ブロックを提供します。Knative を使用すれば、モダンでコンテナ ベースのクラウド ネイティブなアプリケーションを作成できます。

  • Cloud Build は、フルマネージドの CI/CD(継続的インテグレーション / 継続的デリバリ)プラットフォームです。ソフトウェアの迅速かつ大規模なビルド、テスト、デプロイを可能にします。

Cloud Services Platform の導入により、ワークロードがどこにあるかに関係なく、クラウドの可能性を最大限に引き出せるようになります。Cloud Services Platform とサーバーレス コンピューティングの関連について解説した記事もこちらにありますので、ぜひご覧ください。

*この投稿は米国時間 7 月 24 日、Technical Infrastructure の Senior Vice President である Urs Hölzle によって投稿されたもの(投稿はこちら)の抄訳です。

- By Urs Hölzle, Senior Vice President, Technical Infrastructure



創業以来、IT と不動産を融合した「不動産テック(リーテック)」を推進する株式会社 LIFULL(ライフル)。常に先進的なテクノロジーを活用し、人々の暮らしや人生を満たす、安心・安全な住まい探しをサポートする付加価値の高いサービスを提供し続けています。同社で、人工知能(AI)や機械学習を活用した、より付加価値の高い次世代サービスの提供を推進する 3 名のキーパーソンに話を伺ってきました。


■ 利用している Google Cloud Platform サービス
Google Cloud AutoML VisionGoogle Cloud Machine Learning EngineGoogle App EngineGoogle Cloud EndpointsGoogle Cloud Storage


株式会社LIFULL
先進テクノロジーを駆使した不動産・住宅情報サイトを中核に、「あらゆる人の暮らしや人生(LIFE)を満たす(FULL)サービスを届けたい」というビジョンを実現するための各種関連サービスをグローバルに展開しています。


■ 写真左から
LIFULL HOME'S 事業本部
新 UX 開発部 デバイスソリューションユニット
 ユニット長 横山 明子 氏
 開発グループ 衛藤 剛史 氏

新 UX 開発部 AI 推進ユニット
 ユニット長 林 信宏 氏

AutoML の導入で HOME'S における利便性の向上を目指す

掲載物件数ナンバーワン(*1)の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S(ライフル ホームズ)」の運営を中核に、「世界一のライフデータベース&ソリューション・カンパニー」を目指す LIFULL。2014 年には世界最大級のアグリゲーションサイトを運営する Trovit 社を傘下に入れ、世界 57 か国で事業を展開してます。

そのほか、介護や地方創生、引っ越し、保険など、不動産・住宅情報とは異なる分野の事業にも積極的に参入。LIFULL HOME'S 事業本部 新 UX 開発部 デバイスソリューションユニット ユニット長の横山 明子さんは、「当社は、多くのサービスを自社開発しているので、最新の技術を取り入れやすい環境が整っています。今回、Cloud AutoML Vision(AutoML)の導入で、LIFULL HOME'S における利便性の向上を目指しました。」と話します。

最新技術の活用の一環として、AI や機械学習の活用を推進。2018 年 3 月には、おとり物件自動検出システムの刷新に機械学習を活用したほか、2018 年 5 月には、建物に AR 対応のスマートフォンのカメラをかざすだけで、物件の空室や売り物件を手軽に探せるサービス「かざして検索」をスタートしています。
(*1)出典:産経メディックス調査(2018 年 1 月 30 日)

専門知識がなくても非常に高い精度で物件画像を分類できる AutoML

LIFULL HOME'S では、全国の不動産会社やデベロッパーなどが、物件画像を一括でアップロードすることができるサービスを提供しています。物件の画像をアップロードするときに、画像のカテゴリーをプルダウンで登録する分類機能があり、この機能によりアップロードされた画像が、外観なのか、キッチンなのか、バスルームなのかといったことを判別できます 。
しかし、不動産会社やデベロッパーの担当者は、複数の不動産・住宅情報サイトに物件情報を登録しなければならないため、物件の写真をアップロードするだけで手いっぱいで、画像のカテゴリーまで登録する余裕がなく、その多くがプルダウンの初期値である「その他」で登録されていました。そのため、LIFULL HOME'S で物件を探している利用者は、物件画像を利用した効率的な物件選びを行うことが困難でした。そこで 2015 年~2016 年ごろ、不正カテゴリー登録検出システムを開発し、カテゴリー登録が不正な物件画像を検出するための解析を行いました。

解析の結果について、LIFULL HOME'S 事業本部 新 UX 開発部 デバイスソリューションユニット 開発グループの衛藤 剛史さんは、「アップロードされた物件の画像を解析し、カテゴリーを自動的に分類できる機能が必要だと感じました」と語ります。そこで 2018 年 2 月より、AutoML の本格的な導入プロジェクトをスタート。2018 年 5 月に、AutoML を採用した物件画像の一括アップロード機能を公開しています。AutoML の採用を決めた理由を衛藤さんは、「Google が最先端の AI や機械学習に関する情報を持っていることや、AutoML が非常に高い精度で物件画像を分類できたことが理由です。また、Google Cloud Platform(GCP)上で、統合的に利用できることも採用を決めた理由の 1 つでした。」と話しています。


今回、GCP 上に構築されたシステムは、Google App Engine(GAE)で開発されたアプリケーションと AutoML を、Google Cloud Endpoints で管理された API で連携。AutoML は、Google Cloud Storage に登録されている物件画像を、Google Cloud Machine Learning Engine で解析し、GAE で開発されたアプリケーションに解析結果を戻す仕組みになっています。当初は、分類の性能に課題がありましたが、バスルームひとつでも、バスタブや給湯器など画像の特徴が複数あるため、バスルームのカテゴリーを細分化させる工夫により性能向上を実現しています。

物件情報 入稿ツール システム構成図


AutoML の導入プロジェクトと同時に、 TensorFlow を使い、1 ~ 2 週間というごく短期間で検証用の独自モデルも開発。 AutoML で開発したモデルを比較すると、TensorFlow の評価指標(AUC)が 0.897 だったのに対し、AutoML の評価指標は 0.9559 という高い精度を実現しています。衛藤さんは、「TensorFlow で短期間に作成した独自モデルも悪くなかったのですが、AutoML の精度の高さを実感しました。専門家でなくても、簡単に AI の恩恵を受けることができます。また Cloud Endpoint は、セキリュティを自前で実装する必要がないので、開発を効率化できました。」と話します。

10 数枚の物件画像を登録する場合、カテゴリーを手作業で分類すると、入稿ツールを開いてから 40 ~ 50 秒かかりますが、AutoML の導入により 10~12 秒に短縮が可能。物件画像の登録の手間は確実に低減できます。画像分類だけに限れば、AutoML によるカテゴリーの自動分類は 2 ~ 3 秒で可能です。導入から約 1 か月検証した結果、「その他」の分類率は 2 %低減され、「その他」以外のカテゴリーは分類率が最大で 3.9% 改善されました。横山さんは、「今後、使い続けると、さらに効果が期待できます。」と話します。実際に利用した不動産やデベロッパーなどの担当者からは、「カテゴリーを一つひとつ選択する手間が省けて便利」や、「以前と比較して、画像入稿が格段に早くなった」というフィードバックも得られています。


物件情報 入稿ツール : 画像を一括でアップロードすると AutoML により自動で画像種別を分類

現在、AutoML では、新築、中古のマンション、一戸建ての画像しか対象としていませんが、今後は賃貸物件も対象とする計画。横山さんは、「LIFULL HOME'S の利用者が、物件探しで重視するのが物件画像です。正しい画像情報を提供することで、問い合わせ件数や資料請求率が向上し、最終的には成約率の向上が期待できます。経営層にも見てもらったのですが、ほかのサービスでも利用したいと高く評価されています。」と話します。

LIFULL HOME'S 事業本部 新 UX 開発部 AI 推進ユニット ユニット長の林 信宏さんは、「機械学習は参入障壁の高い分野でした。AutoML は、機械学習の専門的な知識がなくても、必要な項目を設定するだけで、精度の高いモデルを作成できます。操作性もよく、機械学習を活用するハードルを下げてくれます。今後も LIFULL HOME'S 全体で AI や機械学習を推進していきますが、Google の先進技術には期待しています」と話しています。



株式会社LIFULL の導入事例 PDF はこちらをご覧ください。
GCP のその他の導入事例はこちらをご覧ください。



番組で説明した資料はこちらで公開しています。
[Cloud OnAir] Google Compute Engine に Deep Dive! 基本から運用時のベストプラクティスまで 2018年7月19日 放送 from Google Cloud Platform - Japan


Cloud OnAir では、各回 Google Cloud のエンジニアがトピックを設け、Google Cloud の最新情報を解説しています。過去の番組、説明資料、さらには視聴者からの質問と回答はこちらよりご覧いただけます。 最新の情報を得るためにもまずはご登録をお願いします。


日々、多くの新作がリリースされ、厳しい競争が繰り広げられているソーシャルゲーム市場。この夏、その激戦区に、オンライン麻雀ゲームでその名を知られる株式会社シグナルトークが本格参戦します。今や、数十名~数百名の開発者が携わることも珍しくないという、ソーシャルゲーム開発ですが、シグナルトークの新作『ダンまつま!~ダンジョンで待ってます!~』の開発メンバーは何と 4 名+α。その少数精鋭での開発を可能にした Google Cloud Platform の活用法について聞いてきました。



■ 利用している Google Cloud Platform サービス
Google App EngineGoogle BigQueryGoogle Cloud StorageCloud Datastore など


■ 写真左から
プロデューサー 松井 聡弥 氏
プログラマー 佐藤 貴之 氏


株式会社シグナルトーク
100 万以上の会員を持つ PC、スマートフォン向けオンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan」の開発・運営を主軸に、ヘルスケアアプリや、ゲームアプリなどの開発・運営も行うゲーム開発会社。“クリエイターの理想郷” を作るをビジョンに掲げ、勤務体系や報酬制度など、クリエイターが働きやすい環境作りを追求している。2017 年、リクナビNEXT が主催する働き方改革アワード「第 3 回グッド・アクション」受賞。従業員数は約 40 名(2018 年 5 月時点)。

Google App Engine の高機能・柔軟性が開発のリスクを大幅に低減

『ダンまつま!~ダンジョンで待ってます!~(以下、ダンまつま!)』は、シグナルトーク初となる、企画から開発までを自社で行ったオリジナル ソーシャルゲーム。ゲームジャンルとしては、いわゆる「タワーディフェンス型」で、プレイヤーは、異世界に “転生” した魔王となって、ダンジョンに攻め込んでくる冒険者を、モンスターや罠などを駆使して撃退します。その差別化ポイントは「プチダークファンタジー」というコンセプト。ちょっとユルい、“日常系” な世界観が、殺伐とした雰囲気を和らげ、プレイヤーの間口を大きく広げる一助となっているそうです。人気声優を起用したかわいらしいキャラクターや、3DCG を駆使した迫力あるゲーム画面など、近年のソーシャルゲームに必須とされる要素もしっかり押さえています。



しかし、どうして麻雀ゲームで一定以上の成功を収めているシグナルトークが、未踏のソーシャルゲーム市場に挑戦することになったのでしょうか?その背景を本作のプロデューサーにして、自らゲームシステム、シナリオ、世界観設定なども手掛ける松井 聡弥さんに聞いてみました。
「シグナルトークにはラボという仕組みがあって、社員であれば誰でも新しい企画を提案することができます。『ダンまつま!』は、その仕組みを使ってスタートした新プロジェクト。会社として麻雀ゲーム以外の事業を開拓していきたいという狙いがあったのはもちろんですが、私自身、ゲームが大好きで、いつかこうしたものを手掛けてみたいと思っていたんです。」(松井さん)

企画が承認されたのは 2017 年初頭、そして実際にプロジェクトが動き出したのはその年の 5 月頃でした。期待のプロジェクトではあるものの、採算性などが全く読めない新規事業であったため、開発チーム構成は可能な限り少数精鋭に。クライアントサイドのプログラマーが 1 名、デザイナーが 1 名、そしてサーバーサイドを佐藤さんが兼任というかたちでスタートすることになりました(ただし、キャラクターデザインおよび UI/UX 開発は外注。また、今年 4 月にはディレクターが 1 名追加されています)。
「開発チームも小規模で、何よりノウハウが全くなかったため、どれくらいのユーザーに遊んでいただけるのか、どういった負荷がかかるのかが読めません。フルマネージドかつオートスケールが優秀な Google App Engine(GAE)の採用は自然な流れでした。現在、主力の麻雀ゲームは全てオンプレ環境で運用しているのですが、それは開始当時にそれしか選択肢がなかったからで、今、積極的にやりたいことでありません。ですから、パブリッククラウドを使うことに抵抗はありませんでした。もちろん、他のプラットフォームも検討しましたが、どれもある程度、面倒を見てあげなければならず、フルマネージドの GCP ほど理想的ではありませんでした。そのほか、BigQuery の存在も決定打になりましたね。統計でも楽をしたかったので(笑)。」(佐藤さん)

ちなみに、オートスケールについてはスケールアウトはもちろん、効率的にスケールインすることも大事なのだそうです。PC 向けゲームと比べて、時間帯によって人の増減が激しいスマートフォン向けゲームでは、使われていない時間帯に費用を抑えられるというのはコスト対策的にも非常に重要。ピークに合わせて環境を構築せねばならないオンプレ環境はそういう意味でも現実的ではなかったと言います。

「なお、開発言語には Go を利用しているのですが、これはスピンアップが非常に速いのが魅力。100 ミリ秒にも満たないんじゃないでしょうか……。結果として、必要な時だけインスタンスを起動する、サーバーレスな運用が可能になります。そうすると運用コストをギリギリまで削減できますから、どんなに好調でもいつかはやってくるサービス終了を先に延ばすことができるのではないかと考えています。わずかでも楽しんでいるお客さんがいらっしゃるならクローズしたくないという気持ちは、ゲーム開発者なら誰もが持っていますが、GCP ならそれができるのではないかな、と。今、考えることではないですけどね(笑)」(佐藤さん)
『ダンまつま!~ダンジョンで待ってます!~』システム構成図


低コストで安定した開発環境もスムーズな制作に貢献

プロジェクトが実際に動き出したのは昨年 5 月頃でしたが、当然ながら、当初はクライアントサイドの開発が先行、サーバーサイドの開発がスタートしたのは、クライアントサイドがある程度作り込まれ、仕様の定まった 12 月頃でした。

「ある程度動く状態になったのが 2~3 月くらい。そこから作り込んでいき、β 版と言える状態になったのは 6 月くらいですね。開発をしていて、感心したのが GAE のログ周りが充実していたこと。本番環境でのログがすごく見やすくて、追いやすいんです。エラーが出ていたら、クリックするだけでソースまで開いてくれるのがありがたかったです。また、ローカル側のサーバーも安定して動くうえ、本番環境で動作が異なるということもほとんどなかったのも開発効率を高めてくれました。それと、GCP の管理用スマホアプリのエラー通知機能も重宝しています。将来的には Stackdriver の導入も検討しているのですが、とりあえずはこれで充分かな、と。本運用でも役に立ってくれそうです。」(佐藤さん)


「プロデューサーとしては、サーバーサイドの開発がスムーズに進んでくれたことに、とても助けられました。一応、スケジュールを立てていたものの、正直、もっとかかるのではないかなと思っていました。当初は、途中でサーバーサイドのスタッフを増やす必要があると考えていたのですが、その必要がなくここまで来ることができ、結果としてコストも抑えることができています。また、サーバーの利用料金についても、開発時点のアクセスでは数千円/月レベル。無料枠をまだ使い切れていないという状況です。一番最初の企画段階ではサーバー費用を 30 万円/月と見積もっていたので、驚きですね。その分の費用をキャラクターのイラストなどに回せたのは良かったです。」(松井さん)


取材時点(6 月中旬)では、7 月のリリースに向けて、最終調整中だった『ダンまつま!』。先日行われた負荷テストでは、「サーバーより先に、クライアント側の方が悲鳴を上げてしまいました(笑)。」(佐藤さん)とのこと。

また、こうした手応えを踏まえ、別途開発中の別プロジェクトでも GCP の利用が始まっているそうです。

「具体的なことはまだお話できないのですが、麻雀関係のプロジェクトで GCP を利用することが決まっています。GCP には GAE 以外にも多くのプロダクトがあるので、仮に GAE でできないことがあっても GKE(Kubernetes Engine)で実現できるなど、柔軟に対応できるのがいいところ。また、個人的には、Cloud Spanner や、Cloud MemorystoreGoogle Cloud Machine Learning なども使ってみたいですね。」(佐藤さん)


株式会社シグナルトークの導入事例 PDF はこちらをご覧ください。
GCP のその他の導入事例はこちらをご覧ください。

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9 月 19 日 (水) 、20 日 (木) の 2 日間にわたって開催する Google Cloud Next '18 in Tokyo まで 2 か月となりました。本日より、イベントサイトに各セッションのスピーカーや詳細スケジュールを公開し、セッション登録をしていただけるようになりました。

イベント申し込み & セッション登録


1 日目の基調講演は、“Building a Cloud for Everyone” をテーマに、Google Cloud CEO のダイアン グリーン、グローバルアライアンス & インダストリプラットフォーム部門 プレジデントのタリク シャウカットをはじめ多数のスピーカーが登壇し、最新のクラウドテクノロジーや “ AI for everyone “ にまつわるトピックをお届けします。さらに、企業の経営者の方をお招きし、ビジネスやプロジェクトの根幹を支える Google Cloud 活用術についてお話いただきます。

2 日目の基調講演は、“Bringing the Cloud to You” をテーマに、Google Cloud Apps 部門 バイス プレジデントのプラバッカー ラガバンが登壇。G Suite の活用で進化する働き方について、実際に G Suite を導入されている企業の経営者の方をお迎えしてご紹介します。さらに、昨今注目を浴びるサーバーレスやオープンハイブリッドなどのテクノロジーを深掘りするとともに、今月サンフランシスコで開催する Next SFO で発表する最新テクノロジーのハイライトをご覧に入れます。

2 日間にわたり、午後は興味やレベルに合わせて選べる、130 を超えるブレイクアウト セッションをご用意しています。 セッションを選定いただく際は、カテゴリーやレベルでフィルタリングしてご自身に合ったものをセレクトいただけるようになっています。Next SFO に登壇するスピーカーも多数来日するとともに、日本オリジナルのセッション、ハンズオンラボ、GCP トレーニングも予定しています。ぜひこの機会に、Google Cloud のスペシャリストが企画したコンテンツを体感いただければと思います。

また、Google Cloud Expo では、最新のクラウド技術を体験できるデモブースや、独自のサービスをご紹介するスポンサーブースをご用意しています。さらに、2 日目の夜には ネットワーキングパーティーとして、“ Next '18 in Tokyo Night ” を企画しておりますので、ぜひふるってご参加ください。

人気セッションは早期の満席が予想されますので、まずはイベントにお申込みいただき、ご希望のセッションへのご登録をお願いたします。皆さまのご参加をお待ちしております。
イベント申し込み & セッション登録


イベント名: Google Cloud Next '18 in Tokyo
公式ハッシュタグ: #GoogleNext18
日  程: 2018 年 9 月 19 日(水)・20 日(木)
開  場: 8:30 (予定)
基調講演: 9:30 〜 11:30 (予定)
セッション: 12:00 〜 19:20
会  場:
 ザ・プリンス パークタワー東京 〒105-8563 東京都港区芝公園 4 - 8 - 1
 東京プリンスホテル 〒105-8560 東京都港区芝公園 3 丁目 3 - 1
お問い合わせ先:
 Google Cloud Next Tokyo '18 運営事務局
 googlecloud-next18-tokyo@google.com


(注意事項)
  • 本カンファレンスは、各種 Google Cloud 関連製品サービスの導入を検討中のエンドユーザー企業、団体、教育機関、政府自治体向けのイベントになります。導入を検討されていない方には、ご登録いただいてもご受講いただけない場合もございます。
  • 十分な座席数をご用意しておりますが、定員を超えた場合にはエンドユーザー企業様優先の抽選とさせていただきます。
ご不明な点は、こちらの FAQ をご確認ください。
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7 月 12 日放送 : リクルートライフスタイル様の GCP 活用事例

番組で説明した資料はこちらで公開しています。

[Cloud OnAir] お客様事例紹介 リクルートライフスタイルにおける デジタルトランスフォーメーションとクラウド活用 2018年7月12日 放送 from Google Cloud Platform - Japan

次回(7 月 19 日(木))は、「Google Compute Engine に Deep Dive!基本から運用時のベストプラクティスまで」がテーマです。Google Compute Engine で仮想マシンのバージョンアップ・負荷分散をどのように行うかをご説明します。ぜひご覧ください。

Cloud OnAir では、各回 Google Cloud のエンジニアがトピックを設け、Google Cloud の最新情報を解説しています。過去の番組、説明資料、さらには視聴者からの質問と回答はこちらよりご覧いただけます。 最新の情報を得るためにもまずはご登録をお願いします。
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Google Cloud に代表されるクラウド技術の進化が引き起こすその先の世界を、機械学習、VR / AR、IoT などの領域で活躍されているスタートアップの方々と一緒に議論するイベント「INEVITABLE ja night」。
今回のテーマは「最新技術で変わる、エンタメ、スポーツ、ライフスタイルビジネスの不可避な未来」です。モバイルデバイスの進化や AR などのエッジなテクノロジーがますます身近となり、エンターテイメントや日常生活にも浸透してきています。これは同時に、この分野でのテクノロジー提供者やビジネスにも大きな変化が起きることを意味しています。

そこで、「エンターテインメント×テクノロジー=エンターテックはカルチャーを創る」をビジョンにさまざまな事業に参画しているエンターテック・アクセラレーターの鈴木貴歩さんをメインゲストに迎え、South by Southwest(SXSW)などで見られる世界の潮流や事例を踏まえ、今起きている変革と今後の不可避な流れについて議論していきます。

講演会後には恒例の交流会も行います。参加者様同士の交流はもちろん、日頃の業務の課題や悩みについても、ご相談/共有いただける良い機会となります。

AR や AI サービス事業の企画、関連するシステム構築に関心のある方々のご参加をお待ちしています。

開催概要

イベント名 : INEVITABLE ja night - “インターネットの次にくるもの”
                     第 5 回 最新技術で変わる、エンタメ、スポーツ、ライフスタイルビジネスの不可避な未来
日程 : 2018 年 8 月 2 日(木) 19:00 〜 21:00(開場 18:30 より)
会場 : グーグル合同会社
定員 : 200 名
ハッシュタグ : #inevitableja
プログラム :
INEVITABLE 対談「エンターテックを実現するテクノロジーとプレイヤー」
 スピーカー : 鈴木 貴歩 氏  (パレードオール株式会社 代表取締役 / エンターテック・アクセラレーター 氏)
 聞き手: 小島 英揮 氏(Still Day One合同会社 代表社員 パラレルマーケター・エバンジェリスト)
Google テクノロジーアップデート
スピーカー: 松田 白朗(グーグル合同会社 デベロッパー アドボケート)
※その他、調整中
講演後は講師や参加者の皆さんとの交流や情報交換をお楽しみください。
参加を希望される方は、お申し込みサイトをご覧ください。
皆様のご参加をお待ちしております。

■■■ INEVITABLE TV のご案内 ■■■

イベントでは取り上げることができなかったこと、語り尽くせなかったことを中心に、「インターネットの次に来るもの」に関連する話題を深く掘り下げていく番組「INEVITABLE TV」ももぜひご覧ください。

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ゲームアプリ「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」(配信元:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)の開発にあたり、株式会社バンダイナムコスタジオは Google Cloud Platform(GCP)の導入を決断します。
Google App Engine(GAE) は、スケーリングが極めて高速であり、突発的なアクセス数増加にも柔軟に対応することが可能です。この GAE を活用し、大きなメリットを生み出した同社の事例をご紹介します。


■ 利用している Google Cloud Platform サービス

Google App EngineGoogle Kubernetes EngineCloud DatastoreBigQueryGoogle Stackdriver など


株式会社バンダイナムコスタジオ

アーケードや家庭用ゲームの他、モバイル向 けのソーシャルゲームにも積極的に取り組み 多くのヒットを生み出しています。「Innovation through Creativity」を スローガンに時代の先頭に立ち、新たな広がりと深み をもった数々の人気ゲームタイトルを世に送り出すことで、社会に「夢・遊び・感動」を 提供することをモットーにしています。

IaaS ベースのインフラの課題とソーシャルゲーム運用の難しさ

数多くの人気コンテンツを提供する株式会社バンダイナムコスタジオ。同社のモバイル用ゲームコンテンツの提供は i モード時代の 1999 年からで、当初システムはオンプレミスでしたが、2012 年頃から、あるクラウドサービス(IaaS)への移行を始めました。
ただ、この IaaS サービスにはいくつか課題があったと保科さんは言います。「大量のアクセスのため、コンテンツによっては十数台のデータベースサーバーを並列化して運用するのですが、サーバーが増えれば増えるだけ障害発生率も増加していたのです。また IaaS では 1 度データベースの構成を決めると、サーバーの増減は簡単ではありません。さらにフロント側の Web サーバーのスケーリングでは、台数の変更に時間がかかり、実際のアクセス増減にうまく追従できない問題がありました。」(保科さん)

ソーシャルゲームでは、リリース直後、テレビ CM 放映時、ゲーム紹介の動画配信などをきっかけに「スパイク」と呼ばれる急激なアクセス数の増加が発生します。「スパイクの発生を予測することは極めて困難です。SNS など我々の知らないところで注目が集まり、それをきっかけに爆発的なアクセスが殺到しスパイクが発生することもあります。」(八重樫さん)
スパイクが発生した際、Web サーバーを迅速にスケールアウトして台数を増やせば、レスポンス低下などの問題を避けられますが、スパイクが去ってアクセスが落ち着いた後に、増やした台数を元に戻さなければ、無用なコストが発生し続けます。従来の IaaS では、このようなアクセス数の増減に完全に自動的には追従できず、人手による監視や運用の手間が随時発生する課題がありました。
またデータベースについても、実際のアクセスにより必要となった規模・処理能力が、最初の見積もりを外した場合は、適正な構成に変更するまで、辛いメンテナンスの時間を過ごすことになります。

こうした背景から今回のゲームアプリ「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」(配信元:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)の開発にあたって、同社は Google Cloud Platform(GCP)の導入を決断します。


「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」
(配信元:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)
©窪岡俊之 ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.


「今回のゲームでは、サービス開始後にどの程度のアクセス数が集まるか予測できず、適切なデータベースや Web サーバーの規模を事前に決めることは困難でしたが、その頃 Google App Engine(GAE)について知り、データベースの Cloud Datastore がほぼ無制限の自動スケール性能を持つこと、Web サーバーのプログラミング言語に Go を使えば起動がすごく速く、スパイクを含むアクセス数の極端な増減にも自動で対応できることを知りました。実際にテストでも、よい手応えを感じられ、よし GCP を使ってみよう!と考えました。」(保科さん)
GCP の採用においては、エンジニア側の熱意も大きかったようです。「GAE と Datastore、Go 言語でやりたいという思いがエンジニアにすごくあったんです。社内からは、本当に GAE で大丈夫かという声もありました。そこで事前に負荷試験を実施したり、GCP パートナーの協力のもと開発体制を整えたりと取り組みを進めました。そういった社内での努力、エンジニア以外のステークホルダーに向けたアピールの甲斐もあり、最終的に GCP の採用に至りました。」(保科さん)

Google App Engine の活用でエンジニアが開発に集中できる環境を構築

本ゲームの開発は、GAE で行われました。大量アクセスへの対処は、検証時の負荷テスト時に想定される 2 倍以上の負荷をかけ問題がないことを確かめました。サービスインした 2017 年 6 月 29 日正午、当時を宮野さんは次のように振り返ります。
「サービスイン後、サーバーエンジニア全員で、Stackdriver Logging や Stackdriver Monitoring を使ってモニタリングし、さらにお客さまが SNS で発信する生の反応をチェックしながらサーバーの状況を見守りました。予想以上のお客さまに遊んでいただき、リセマラ(リセットマラソン)もありましたが、アクセス数の増加、スパイクによるトラブルは発生せず、期待以上の安定動作で大量のアクセスを耐えきってくれました。ゲーム操作を自動化するプログラムボットのアクセスも多数確認されましたが、GAE の自動スケール性能を上回ることはなく、お客さまのアクセスには影響しませんでした。」

公開から半年以上が経過した今も、Cloud Datastore を含むサーバーインフラの構成変更は 1 度もなく、すべては GAE の自動スケールで運用されており、サーバーアプリケーションの更新もサービスを停止せずに行われています。運営中も絶えず開発が必要なソーシャルゲームにおいて、完全無停止の自動化インフラ運用がもたらすメリットは極めて大きいといえます。この安定稼働について、1 つの大きな利点は GAE のバージョン機能です。本機能は、バージョンアップの際、従来の環境に手を加えず、別系統として新バージョンを用意しておき旧バージョンから瞬間的に切り替えられます。
「デプロイが本当にしやすいんですよね。秒間数千リクエストがあり、かつ数百のインスタンスが稼働している状況でも、バージョン機能なら普通に新しいバージョンに切り替えられます。」(保科さん)
「従来は、デプロイのためのインフラ安定のために、大変な時間と労力を要していました。また運用中のデプロイは完了までに数 10 分かかったり、サービスが不安定になったりするリスクが伴うのですが、GAE なら、バージョン機能で瞬間的かつ安全に切り替えられるし、問題があったら即座に元のバージョンに戻せる。これは感動しましたね。」(八重樫さん)

さらに八重樫さんは、GCP は運用でよく使われるユースケースがしっかり考えられていると話します。「GAE のバージョン機能のように、『普通、こう作るよね』という仕組みが、はじめからわかりやすい形でドキュメントと共に用意されていて、期待通りに動いてくれる。これはすごく重要なことです。不要な試行錯誤をせずとも GCP の機能をフル活用できたのは本当にありがたかった。」

今回は、ログ解析基盤として BigQuery が使われています。ゲームシステムからのログは膨大で、社内のログ解析基盤では処理しきれないほどでしたが、BigQuery は、タイミングやクエリの性質を気にせず、任意のログを探し出すことがスムーズに行えたと評価します。
「今回のプロジェクトで、BigQuery はあらゆるところで活用されています。特に Stackdriver Logging との連携により、アクセスログが 1 日や 1 時間などではなく 1 分未満のディレイで BigQuery のテーブルにストリーミング挿入され、それに対して様々なクエリを発行できる機能があり、これにより直近 1 分から数ヶ月といったスパンのアクセス分析をリアルタイムに実施できます。様々な不具合や障害に対する早期対応には BigQuery は欠かせません。」(八重樫さん)

今回の GCP の導入効果を振り返ると、インフラ運用負荷の大幅な低減があったと言います。「IaaS ベースですと、仮想マシンに必要なソフトウェアのインストール・設定、独自開発など、ある程度はエンジニアをインフラ運用や開発に割かざるを得ないんです。でも GAE なら、そのような時間は全体からみたらごくわずか。エンジニア全員がゲーム開発に注力できました。」(宮野さん)

他の Google サービスとの統合による利便性の高さも大きかったと語るのは八重樫さんです。「クラウドのコンソールへのアクセスや、ゲーム管理画面へのログインなどでも Google アカウントが使えるので、新たに認証・認可の仕組みがいらないことは楽でした。Google アカウントはほぼ皆使っているので、新規メンバーでも即座にプロジェクトに入れますし、シームレスに使える Google スプレッドシートも、自動化のスクリプティング環境や API が整備されており、よいところを挙げるときりがありません。Excel ファイルの添付メールが飛び交っていた頃とは一線を画していると思います。」

「GAE や Google サービスを活用できるまでには相応のコストが必要でしたが、トータルではそれを上回るメリットが得られました。GAE と Go 言語による開発で最大のパフォーマンスを引き出すには、設計思想やベストプラクティスの理解が必要です。今回短期間での開発の達成には、我々の努力や覚悟以外にも、有償トレーニングや高度なサポートプランといったプロフェッショナルの力を借用するコストが必要でした。しかしその苦労やコストと引き換えに、ゲームリリース後の我々の労力は大幅に軽減され、今は平和な日々を送れていることは、大いに強調したいですね。」(八重樫さん)


株式会社バンダイナムコスタジオの導入事例 PDF はこちらをご覧ください。

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6 月 28 日放送: ビッグデータ事例紹介 - eLearning 編

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[Cloud OnAir] ビッグデータ事例紹介 データ分析と実践編 (e-Learning) 2018年6月28日 放送 from Google Cloud Platform - Japan

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