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ポルトガル、ダークスカイ・アルケバ保護区にあるモンサラス城の上に昇るスーパー&ブルームーン(ひと月に2回満月が現れる現象)。2025年の10月から26年1月にかけて4カ月連続でスーパームーンを見ることができる。なぜ月が一番大きく明るくなるのか、それを観測できるタイミング、そして撮影の方法を紹介しよう。(Photograph by Miguel Claro) 10月6日は中秋の名月、つまり旧暦の8月の十五夜で、翌7日の満月はいつもより明るく見えるスーパームーンだ。おまけに、2025年はなんとスーパームーンが3カ月連続で発生する。10月7日、11月5日、12月5日の満月はそれぞれ「ハーベストムーン」「ビーバームーン」「コールドムーン」と呼ばれており、2025年はそのすべてがスーパームーンだ。めったに見ることができないこの現象について、詳しく解説しよう。(参考記事:「10月の星空9選:スーパーム
血を吸える獲物を探すステフェンスハマダラカ(Anopheles stephensi)。科学者たちは、蚊に刺されやすい人がいる理由を解明しようと音楽フェスの会場で調査を行った。(Photograph By VOLKER STEGER, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 多くの人が集まる音楽フェスは、蚊にとっては食べ放題のビュッフェだが、8月に論文投稿サーバー「bioRxiv」に発表された「血と汗とビール:騒音と酩酊の真っ只中で蚊が刺す好みについての大規模音楽フェスティバルにおける横断的コホート研究」という論文によると、ビールを飲む、日焼け止めを塗らないといった行動が蚊を引きつけている可能性があるという。論文はまだ査読を受けていないものの、衛生状態や酔った状態などの要因が、蚊の食事の選択に及ぼす影響を調べた研究としてはこれまでで最大規模だ。 獲物を探す蚊は、最初に人間が吐く息の二酸
著名な霊長類学者であるジェーン・グドール氏は、野生のチンパンジーの生活を数十年にわたって研究し、人間に最も近い知的な類人猿に対する私たちの理解を根本から変えた。(PHOTOGRAPH BY VICTORIA WILL, INVISION/AP) 2025年10月1日、ジェーン・グドール研究所は、その創設者で国連平和大使でもあるジェーン・グドール博士が91歳で死去したと発表した。グドール氏は霊長類学者で、動物行動学者で、自然保護活動家で、動物福祉の擁護者で、教育者でもあった。 「ジェーン・グドール博士はこの世界に多くの光をもたらし、ひとりの人間にどれだけすばらしいことができるのかを美しく示してくれました」とナショナル ジオグラフィック協会のジル・ティーフェンターラーCEOは語る。「ジェーンは非凡な科学者、自然保護活動家、人道主義者、教育者、指導者であり、そして何より希望の擁護者でした」 「6
人工甘味料や植物由来の甘味料は、砂糖の代わりに甘みをもたらすだけでなく、代謝、食欲、さらには腸内細菌にまで変化を及ぼす可能性があることが研究で示されている。(PHOTOGRAPH BY TONY CENICOLA, THE NEW YORK TIMES/REDUX) 市販されている低糖や低カロリーの食品の多くには、人工甘味料や植物由来の甘味料が含まれている。砂糖よりも健康的な選択肢だとうたわれてはいても、これらは中立的な代用品ではない。甘味料はカロリーを減らすだけにとどまらず、複雑な形でわれわれの体に影響を及ぼす可能性がわかってきた。 砂糖の主な成分はショ糖(スクロース)だ。小腸の酵素はそれをブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)に分解し、その後すばやく血流に取り込まれる。 「ブドウ糖は脳が好む燃料です」と、米ニューヨーク大学栄養学教授のマリオン・ネスル氏は言う。「砂糖を取りすぎたと
45億年前、火星に衝突した巨大な天体の破片が、いまも火星の内部にたくさん残っていることが分かった。米火星地下探査機「インサイト」が観測した地震データなどをもとに、英米などの研究グループが解明した。火星には地表のプレート(岩板)が移動するプレートテクトニクスの仕組みが存在しておらず、同じような惑星の内部構造の理解につながるという。 火星断面の想像図(縮尺は不正確)。地殻の下にあるマントルに、太古の天体衝突でできた岩石の破片が散在している。地表の左側の明るい部分は、天体が衝突して内部に地震波が生じる様子、右側はインサイトの機体を示している(NASA、米カリフォルニア工科大学提供) 地球とは違いプレートテクトニクスがない火星では、プレートの動きで地殻にひずみがたまって起きる地震はないものの、熱や圧力で岩石が割れて起きるタイプの地震と、天体の衝突で起きる地震はあるとされる。地震で生じた波はさまざま
力強くそびえるヒマラヤ山脈のアンナプルナI峰。標高は8091メートルで、世界で10番目に高い山だ。だが山の高さの測り方はいくつもあって、新たに提唱される方法で測った場合、雄大さという点でエベレストを上回るという。(PHOTOGRAPH BY OSWALD RODRIGO PEREIRA) 山の高さをどうやって測るのか? 最近、新しい測り方が提唱されて、この古くて新しい議論が再燃している。世界に名だたる峰々の高さの順位が大きく入れ替わるかもしれない。 1953年5月29日午前11時30分、エドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイは、エベレストの山頂を踏んだ。シェルパのノルゲイが晴れ渡る青空に向かってピッケルを突き上げると、くくり付けられたネパール、国際連合、英国、インドの四つの小さな旗が、強い風にあおられて激しくはためいた。それまでの30年間で少なくとも75人が登頂に挑み、十数人が命を落とし
【動画3-1】3頭のシャチはこの動画のヨットに向かって来る前に、そばで航行していた別の船に体当たりを仕掛けていたことが目撃されている。シャチたちは船体に穴を開け、海水を流入させた。(VIDEO BY MERCEDES-BENZ OCEANIC LOUNGE) 9月13日の正午ごろ、ポルトガルのリスボン沖で、イルカウォッチングツアーを楽しんでいた一行が岸に戻ろうとしていたところ、大型のヨットが前後に不規則に揺れているのに気付いた。ツアーを率いていたメルセデス・ベンツ・オーシャニック・ラウンジのマネジャー、ベルナルド・ケイロス氏は、シャチたちの仕業ではないかと考えた。 実際、ヨットを撮影していたケイロス氏は、3頭のシャチがヨットの横を泳いでいるのに気づいた。ヨットは下から体当たりされ、船体に穴が開き、やがて沈没してしまった。 「ツアーをしていると、イルカは98%の確率で現れますが、シャチが現れ
「バイユーのタペストリー」は、イングランド南部ケントの女性たちによって制作されたとされる。ノルマンディー公ウィリアム率いる軍によるノルマン侵攻、イングランド征服、そして1066年のヘースティングズの戦いでハロルド2世が命を落とすまでの出来事が刺繍で描かれている。ハロルド王は、目に矢を受けて死亡したとする伝説があるが、ここでは剣で殺されている。(Photograph by Bridgeman Images) 1000年近くの歳月を経て、「バイユーのタペストリー」がついに英国に里帰りする。1066年にウィリアム征服王がヘースティングズの戦いに勝利したさまを刺繍で描いた、11世紀の歴史的傑作だ。(参考記事:「ノルマン人の英征服を描く驚きの刺繍絵、バイユーのタペストリー」) 2025年9月19日の夕刻、この作品は厳重な警備のもと、フランスのバイユー・タペストリー美術館から保管施設へ移された。フラン
2025年1月頃からエーゲ海のサントリーニ島と周辺の島々で一連の謎の地震が発生した。このほど研究者たちが、その原因を明らかにした。(PHOTOGRAPH BY MARC STEINMETZ, VISUM/REDUX) 2025年1月下旬、ギリシャのエーゲ海に浮かぶサントリーニ島、アモルゴス島、アナフィ島の地下で何かがうごめきはじめ、のどかな島々は2万8000回以上の謎めいた群発地震に襲われた。マグニチュード5.0以上の地震も数回あり、非常事態宣言も出された。サントリーニ島の人々は、近々火山が激しく噴火するのではないかと恐れた。(参考記事:「サントリーニ島で謎の群発地震、科学者困惑 「極めて不可解」」) 地震の危機は約1カ月後に終息し、人々は胸をなで下ろした。そして今、科学者たちは各種の地震観測機器と人工知能(AI)を駆使し、犯人を特定できたと考えている。地殻の深くからシート状のマグマが急速
早わかり 分類: 鳥類 IUCNのレッドリストによる 危機の評価: 絶滅危惧種 食性: 肉食 平均寿命: 10~15年 体高: 約1.2メートル 体重: 約2.3~4.2キログラム ヘビクイワシとは ヘビクイワシは、アフリカのサハラ砂漠以南の地域の草原や灌木地に生息する猛禽類の一種だ。体高は1.2メートルほどで、主に地上を歩き回って過ごすため、立っている姿を見かけることが多い。木の上の巣に向かったり求愛行動をしたりなど、必要な時以外に空を飛ぶことはない。 ヘビクイワシの特徴は、長い脚と後頭部にある長く伸びた黒い飾り羽だ。体は灰白色の羽毛で覆われていて、先端が黒くて長い尾羽が2枚ある。顔には羽毛がなく、黄色や橙色、あるいは赤い皮膚が露出している。 長い脚の上半分は黒い羽毛で覆われているため、サイクリングパンツを履いているような印象を与える。下半分はうろこ(脚鱗)で覆われ、裸眼ではほとんど確認
アルゼンチンで発見されたメガラプトル類の新種ホアキンラプトル・カサリの復元図。口にくわえているのは白亜紀のワニの腕だ。(ILLUSTRATION BY ANDREW MCAFEE, CARNEGIE MUSEUM OF NATURAL HISTORY) 巨大なティラノサウルス・レックスが太古の北米で存在感を示していたころ、当時のアルゼンチンに全く異なる頂点捕食者がいた。新たに発見されたメガラプトル類のホアキンラプトル・カサリ(Joaquinraptor casali)だ。おまけに、その巨大な顎(あご)には、なんと白亜紀のワニの腕(前肢)がはさまっていた。この論文は9月23日付けで学術誌「Nature Communications」に発表された。 「行動が化石化されていたわけです。もしこれが本当にそうであれば、極めてまれな現象です。発見したら、祝うしかありません」と米カーネギー自然史博物館の
致命傷を負ったシルバーバック(ゴリラの群れを率いるオス)を運ぶ人々、孤児となったマウンテンゴリラと飼育係の間に生まれた強い絆、政治的紛争の犠牲者、そして自然保護に必要な闘志。100年にわたる不屈の精神をたたえるため、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)でもあるフォトジャーナリストのブレント・スタートン氏が制作したビルンガ国立公園の写真集には、胸に刺さる光景が収められている。 コンゴ民主共和国のビルンガ国立公園の創設は1925年。以後1世紀にわたり、約7800平方キロメートルに及ぶ自然を保護してきた。そこには豊かな森と活火山があり、ゾウ、カバ、ライオン、そして現存する最後のマウンテンゴリラを含む希少な野生動物が生息している。 スタートン氏は、ビルンガの光と闇を記録するため、18年間で13度足を運んだ。ビルンガやほかの野生生物保護区で撮影した写真は広く発表され、「ナショナル
パキケファロサウルス類の新種ザヴァケファレ・リンポチェ(Zavacephale rinpoche)が頭突きしあっている様子を描いた復元図。この行動こそが、パキケファロサウルス類の頭蓋骨が厚くなった理由だと一部の研究者は考えている。(ILLUSTRATION BY MASAYA HATTORI) パキケファロサウルス類として知られる白亜紀の草食恐竜は、頭蓋骨の上部が分厚くドーム状に丸みを帯びていた。その有名な頭部の用途は謎のままで、これまで北米やアジアで見つかった断片から推測するしかなかった。だが今回、知られている限り最も古く、最も完全なパキケファロサウルス類の化石が発掘された。2025年9月17日付けで学術誌「Nature」に発表された論文で、新種として「ザヴァケファレ・リンポチェ(Zavacephale rinpoche)」と命名された。 モンゴルで見つかったこの新種の草食恐竜は、約1億
浮いた氷に囲まれて死んで横たわるマッコウクジラ。その肉は黒ずみ、ところどころに腐敗を示す、古い船についたさびのようなオレンジ色の斑点が見える。だらりと開いた口は無音の叫び声を放っているようだ。そんな光景に目を奪われて、クジラの上をホッキョクグマがゆっくりと歩いていることに、見る人はしばらく気付かないかもしれない。 写真家のロイエ・ガリッツ氏は、北極圏の北緯82度でクジラの死骸を見たという友人からの知らせを受け、この光景に遭遇した。自然愛好家や写真家を率いて、7月上旬にノルウェーのスバールバル諸島から北極点を目指している途中だった。 氷海に浮かぶ黒い塊を見つけたガリッツ氏と船員は、24時間をかけて彼らが乗る砕氷船をクジラの死骸に近づけた。そばで居眠りをするオスのホッキョクグマを見つけたのはその時だった。 ガリッツ氏は船体から体を乗り出し、できる限り低い位置からホッキョクグマを撮影し始めた。毎
244エクサ電子ボルト(2.44×10の20乗電子ボルト)は、たったひとつの原子核にしては驚くほど巨大なエネルギーです。蛍光灯のエネルギーは約2電子ボルト、胸部X線検査で使われるものが10の3乗電子ボルトほどですから、その「桁違い」の大きさがおわかりいただけるかと思います。もしこのようなエネルギーをもつ粒子を1グラム集めることができれば、そのたった1グラムで「地球が壊れる」ほどのエネルギーになります。 この正体不明の宇宙線について、私たち観測チームは「アマテラス粒子」と名づけました。アマテラス粒子のように、異様なほど巨大なエネルギーをもつ粒子を「極高エネルギー宇宙線(Extremely-High-Energy Cosmic Rays:EHECR)」といいます。これまで人類が編み出した、もっとも高いエネルギーを生み出す装置は「粒子加速器」ですが、極高エネルギー宇宙線は、地球上での加速限界をは
アルベルト・アインシュタインは、有名な数式を導いた科学の天才というだけではなかった。音楽を愛し、市民権運動が巻き起こるはるか以前から市民権のために戦っていた。(PHOTOGRAPH BY PICTURELUX/THE HOLLYWOOD ARCHIVE/ALAMY STOCK PHOTO) アルベルト・アインシュタインはドイツ生まれの理論物理学者で、物理学の世界に革命を起こし、私たちの宇宙に対する理解を変えた。数ある革新的な発見には、特殊相対性理論に一般相対性理論、そして量子力学(光電効果)などがある。一般には、E=MC2の方程式を導き出した人物として知られている。(参考記事:「アインシュタインと原爆、呪いを背負った天才科学者の矛盾」) アインシュタインの専門的な業績が知れ渡ったのは生涯で比較的後半のことだ。世界中から賞賛を受ける科学者になる前、若いころは個人的な苦悩と勉学での挫折に満ちて
日本ではじめて人工雪の生成に成功した中谷宇吉郎は、「雪は天から送られた手紙である」ということばを残しました。それになぞらえて言うなら、宇宙線は、たくさんのメッセージを抱えて地球にやってきた「宇宙から送られた手紙」です。 中谷が「だれも生まれないまえから雪はふっていた」と書いたように、宇宙線も人類が誕生するはるか昔から地球に降り注いでいました。「脳の肥大化」という、私たち現生人類が誕生するきっかけとなった突然変異に、宇宙線が関連している可能性もあるとさえ言われています。宇宙線という「手紙」に、私たち人類の起源が記されていたとしたら──。とても興味深い、ワクワクするような話だと思いませんか? 「宇宙からの手紙」としての宇宙線が、どれほど重要な知見を私たちに伝えてくれたのか。そのインパクトの大きさは、ノーベル賞を例にするとわかりやすいかもしれません。宇宙線観測によって、これまでに数多くのノーベル
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した3I/ATLASの画像。太陽系内で観測された史上3番目の恒星間天体だ。科学者たちは、ハッブルの観測データを使用して大きさや速度を推定している。(PHOTOGRAPH BY NASA/ESA/DAVID JEWITT (UCLA)/JOSEPH DEPASQUALE (STSCI)) 2025年7月、ATLAS(アトラス、小惑星地球衝突最終警告システム)を運用する科学者のチームが、太陽系とは別の惑星系から飛来した「恒星間天体」を捉えた。これは観測史上3例目だ。「3I/ATLAS」と名付けられたこの天体は、発見当時、地球から約5億2400万キロメートル(太陽までの距離の約3.5倍)離れた位置にあり、画像では白くぼやけた点にしか見えなかった。当時わかっていたのは、どうやら彗星らしいということだけだった。(参考記事:「観測史上3つめの太陽系外から飛来した天体を発見、今わ
織田信長や足利義政などが求め、切り取ったとされる、正倉院に収蔵の「蘭奢待(らんじゃたい)」という香木の香りの成分と、木が生えていた年代が判明した。専門家が大型放射光施設「SPring-8」やガスクロマトグラフィーなど、最新の機器を用いて測定。8世紀後半~9世紀後半の樹木で、ラブダナムという植物の甘い香りをベースに、バニラなど約300種類の成分が混じったものだった。宮内庁正倉院事務所では「今回の研究成果を元に、他の香木についても調べられれば良い」としている。
ベーグルからかぶりつくか、卵から食べ始めるか。専門家によれば、食べる順番が健康に大きな影響を与える可能性があるという。(PHOTOGRAPH BY LINDSAY KREIGHBAUM) 「物事はタイミングが全て」とよく言われるが、それは食事にも当てはまりそうだ。体調やパフォーマンスをベストな状態に保ちたいなら、何をどのタイミングで食べるかが重要になるかもしれない。 近年、食べる順番が注目されている。栄養素を特定の順番で取ることで、間食の衝動を抑えたり、血糖コントロールを改善したり、健康全般に良い影響があると紹介されることが多い。 決して目新しい考え方ではないが、なぜ今、急に注目を集めているのだろうか。 「人は方向指示を求めますし、ガードレールを好むものです」と、米ニューヨーク市にあるHSS女性スポーツ医学センターでスポーツ栄養士を務めるハイディ・スコルニック氏は語る。氏は、書籍『The
コートジボワールのタイ国立公園で食事中のオスのチンパンジーたち。新しい研究によると、この公園のチンパンジーはアルコール度数の高い果物を好むという。(PHOTOGRAPH BY ALEKSEY MARO) ヒトに最も近い動物であるチンパンジーが、かなりの量のアルコールを摂取していることが新たな論文により明らかになった。学術誌「Science Advanecs」に9月17日付けで発表された研究で、チンパンジーが食事をした木の下で見つかった500個以上の果物と1日の食物摂取量、そして各種の果物を食べた時間を分析し、1日のアルコール摂取量を初めて推定した。その結果、体重を考慮すると、チンパンジーが1日に摂取する平均的なアルコールの量は、人間ならアルコール飲料2.5杯分に相当することがわかった。 果物に含まれる糖分は、環境の中にある酵母によって自然に発酵してアルコールへと変化する。チンパンジーは熟し
画面でDNA(デオキシリボ核酸)配列を確認する科学者。(Photograph by Tek Image, Science Photo Library) 英語版ウィキペディアの全ページ、シェイクスピアのソネット154編と悲劇8編、そして映画創成期に撮影された作品1編。科学者たちは、これらすべてを、小型の試験管よりも小さな場所に収めることに成功してきた。ミニチュアを作ったのではない。DNA(デオキシリボ核酸)という、あらゆる生命の部品である微小な物質に情報を記録し、保存したのだ。 AI(人工知能)のような高度なツールが活用されるのに伴い、データの重要性が高まっている。米マイクロソフト社などの巨大テクノロジー企業は、すでに莫大な費用をかけてAI用のデータセンターを建設している。(参考記事:「「AI」 人工知能が切り開く科学の未来」) 実際、急激に増えるデータを安全に保存(ストレージ)する方法を見
アカボウクジラ(Ziphius cavirostris)は、哺乳類の最深潜水記録を保持している。研究者たちは、このクジラが深さ千メートル以上の低酸素環境にどのように適応しているかを調べることで、人間の命を救う薬を開発できるのではないかと期待している。(PHOTOGRAPH BY VINCENT LEGRAND/AGAMI PHOTO AGENCY/ALAMY) アカボウクジラ(Ziphius cavirostris)は、既知のどの哺乳類よりも深く潜水し、世界中のほとんどの海に生息している。彼らは日常的に水深1000メートルまで潜り、20〜40分にわたって狩りをする。最深潜水記録は2992メートルで、最長潜水記録は222分だ。ちなみに人間の潜水記録はそれぞれ253メートル、約25分だ。(参考記事:「哺乳類最強の潜水能力?アカボウクジラ」) 驚異的な潜水を行うアカボウクジラの体は、人間ならすぐ
ノドジロミユビナマケモノ(Bradypus tridactylus)は、南米北部の熱帯雨林におけるオロプーシェウイルスの保有宿主のひとつ。(PHOTOGRAPH BY MIROSLAV SRB, SHUTTERSTOCK) 「ナマケモノ熱」ことオロプーシェ熱は、近年までアマゾン地域の外ではほとんど見られず、2023年末より前には、症例も年間で数百ほどに過ぎなかった。ところが今、かつて症例が見られなかった南北米地域の国々にも、この病気を引き起こすオロプーシェウイルスの感染が広がっている。2024年には世界で初めての死者がブラジルで確認され、健康だった若い女性2人が命を落とした。 西半球全体での増加傾向に、科学者は警戒を強めている。8月13日付けの汎米保健機構(PAHO)の報告書によると、2025年はこれまでに11カ国で1万2000件以上の確定症例が記録されており、英国でも初めての症例が報告さ
怪物、創造者と対峙する ボリス・カーロフ(右)が演じる怪物が、その創造者と緊迫した対面を果たす。メアリー・シェリーの小説を原作とした1931年の映画『フランケンシュタイン』より。(JOHN KOBAL FOUNDATION/GETTY IMAGES) 暗い嵐の夜に生まれた『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』は、暖炉のそばで語られる怪談として始まり、世界的な現象へと発展したSF&ホラー小説のさきがけと言われている。作者は当時十代だったメアリー・シェリーだ。自らの悪夢をもとに、恐ろしくも魅力的な傑作を彼女は紡ぎ出した。 この物語が作られたのは「夏のない年」として知られるようになった1816年のことだった。前年の1815年に、スンバワ島(現在のインドネシアの一部)のタンボラ山が噴火し、大量の火山灰、岩石、そして硫黄を含んだ塵が大気中に放出された。そのせいで翌年の1816年、地球の
多くの人が、人間の子どもに対するのと同じようにペットに愛情を注ぐのには理由がある。(Photograph by Corey Arnold, Nat Geo Image Collection) あなたの周りにイヌを飼っている人がいたら、まるで人間の子どものように愛情を注いではいないだろうか。これには科学的な裏付けがある。研究によると、基本的に人間の脳は、飼いイヌに対して人間の赤ちゃんに対するのと同じ反応を示すことがわかっている。(参考記事:「犬のいちばんかわいい時期が判明、最新研究」) しかし、元からそうだったわけではない。イヌは、人間に飼われるようになって以来、人間のような社会性や認知能力を身に着けるようになった。人間の赤ちゃんのように振舞い、見た目さえも似るようになり、人間の脳もそれを認知するようになったという。 そのため、人間がイヌに強い感情を抱くのは意外でも何でもないと、米オクシデン
米国では侵略的外来種であるジョロウグモを理解するために研究が進められている。新たな研究により、メスのジョロウグモが一定の条件下で攻撃性を高め、共食いをすることが示された。(PHOTOGRAPH BY STUART CAHILL / BOSTON HERALD / GETTY IMAGES) 黄金色に輝く糸で巨大な巣を作るジョロウグモ(Trichonephila clavata)。米国では侵略的外来種として、2014年以降、東部で急拡大し、注目を集めている。巣は単体で存在する場合もあるが、集合住宅のようにモザイク状につながり、樹上まで長く伸びた巣に10~15匹のメスが同居している場合もある。だが寛容的とされるジョロウグモも、互いを攻撃し、時には共食いすることが7月10日付けで学術誌「Arthropoda」で報告された。(参考記事:「「空飛ぶ巨大ジョロウグモ」が米国を征服中? どこまで本当か」
新しい研究によると、子どもが男児ばかり、または女児ばかりになるのは単なる偶然ではない可能性がある。(PHOTOGRAPH BY SKIP BROWN, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 生まれてくる子どもの性別はコイントスのように決まるのだとすると、男児が生まれる確率も女児が生まれる確率も半々のはずだ。けれども現実には、息子だけ、娘だけの家族は偶然よりもはるかに多いように見える。実際、2025年7月18日付けで学術誌「Science Advances」に発表された論文は、子どもの性別の偏りが統計的な偶然のみで生じるわけではない可能性を示している。 「私は子どもの頃から、世の中には(男の子ばかりや女の子ばかりの家庭がありがちだという)パターンがあると感じていて、それが本当に偶然なのか、それとも生物学的な背景があるのか、不思議に思っていました」と、米ハーバード大学T・H・チャ
大麻が卵子の形成過程に影響を与えることが最新の研究により示された。精子への影響も含めて、大麻が生殖能力に及ぼす影響について今わかっていることも紹介する。(PHOTOGRAPH BY REBECCA HALE, NATIONAL GEOGRAPHIC) 大麻(マリファナ)が女性の生殖能力にリスクをもたらす可能性が、最新の研究で示唆された。この研究は、大麻と女性の生殖能力との関係を検証したさきがけの1つだ。論文は2025年9月9日付けで学術誌「Nature Communications」に掲載された。 「大麻は植物なので自然のもの、だから他のドラッグほど危険ではない、と思っている人もいるかもしれません。でも、大麻は卵母細胞(卵子の元になる細胞)に影響を及ぼす可能性があることを知っておいてほしいのです」と、論文の筆頭筆者で、カナダ、CReATE生殖医療センターで臨床エンブリオロジスト(不妊治療の
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