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今年の「かわいい」
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米アリゾナ州の「オアシス・サンクチュアリ」で働くジーン・ボルドーさんと、コバタンの「サニー」。コバタンは60年生きることもある。(Photograph by Christie Hemm Klok) 米国アリゾナ州セドナに住んでいたルイーザ・ジャスクルスキーさんは、2023年に77歳で亡くなった。心臓病の手術は成功したかに見えたが、そのわずか数日後、睡眠中に息を引き取った。あとに残されたのは、4羽のクジャクバト、3羽のボウシインコ、3羽のヒインコ、つがいのフィンチ、2匹のサバクゴファーガメ、1匹のアゴヒゲトカゲ、そして1匹のアオジタトカゲだった。すべて、ジャスクルスキーさんが飼っていた保護動物だ。(参考記事:「カピバラやアゴヒゲトカゲなど、SNSの人気動物たちの危うい末路」) このような珍しいペットたちは、飼い主が亡くなった後どうなるのだろうか。これは非常に悩ましい問題で、おまけにそれほど珍
10月にはキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の脳の完全な地図が初めて完成した。このほか、2024年には多くの科学的な大発見があった。(Micrograph by Dennis Kunkel Microscopy/Science Photo Library) 2024年は激動の年になったが、科学はその間も絶え間なく前進しつづけたおかげで、人類はこの世界について、かつてないほど多くの知識を持っている。では、2024年の科学的な発見の中で、最もスリリングで衝撃的なものは何だろう? 科学的な発見の中には、人類や世界や宇宙に関するパラダイムを転換することが最初からはっきりしているものもあるが、小さな前進にしか見えない発見が、最初に倒れるドミノのように、想像を絶するほど壮大で革新的な発見への道筋を開くことも少なくない。その意味で、あらゆる進歩が注目に値する。 それ
ヒスイのモザイクでできた小さな仮面。目と歯にはウミギクガイの殻が使われ、マヤの嵐の神を表している。西暦350年ごろにグアテマラのチョチキタム遺跡に埋葬された王の胸に置かれていた。2024年に話題をさらった考古学的発見の一つだ。(PHOTOGRAPH BY RUBÉN SALGADO ESCUDERO, NATIONAL GEOGRAPHIC) 近頃の最も重要な考古学的発見の多くは、すでに発見されている遺物や遺体に新しい技術を使うことでもたらされている。たとえば、青銅器時代のイングランドで起きた災害の詳細や、古代エジプトのファラオ、ラムセス3世の暗殺計画の犯人などだ。(参考記事:「誰がラムセス3世を殺したのか? ついに解かれた「3000年の謎」」) 2024年の場合も例外ではなく、DNA分析やリモートセンシング技術などの現代的な手法によって、過去の文化や技術、社会構造に関する新たな証拠が明ら
肥満や2型糖尿病の治療薬であるGLP-1受容体作動薬(画像は生産ライン上のオゼンピック)が、アルコール、たばこ、薬物への渇望を減らすのに役立つ可能性を示す科学的証拠が増えつつある。(Photograph by Tom Little, Reuters/Redux) シャノン・ヒンダーバーガーさん(49歳)は、ただ体重をいくらか減らしたいという思いで2022年8月に「GLP-1(グルカゴン様ペプチド―1)受容体作動薬」(以下、GLP-1薬)を使い始めた。そして14カ月間で、実際に体重が30キロ近く減った。ところが、この薬は別の驚くべき効果をもたらした。飲酒の欲求が消え去ったのだ。 「今思えば私は、ストレスに対処するために、軽くアルコールに依存していたのだと思います。仕事から帰るとワインが飲みたくなり、一度にボトルの4分の3を飲み干すというのを週4回繰り返していました」と、米オレゴン州ベンド在住
芽キャベツの苦味のもとは、グルコシノレートという物質だ。1990年代、研究者はこの野菜の苦味成分を抑える品種改良方法を見つけた。現代の科学者は、遺伝子操作によって、別の野菜で同じようなことを実現しようとしている。(lucentius-Getty Images) ホリデーシーズンに入り、家族で食卓を囲むとき、たいていの人はお皿にタンパク質や穀類、そして当然、デザートをどんどん盛っていく。しかし野菜にはなかなか手が出ないことが多い。とりわけ、苦味のある野菜、例えばケールやからし菜、芽キャベツ、ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜は人気がない。酸味のある果物を敬遠する人もいる。 近年、苦味や辛味のある食べ物を嫌う傾向を受け、農産物の遺伝子を操作して、苦味や辛味の原因となる酵素を抑えようとする研究が進んでいる。その結果、最近では、苦味の少ないからし菜や、甘味の強いパイナップルといった品種が市場に出回
映像作家でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)であるバーティ・グレゴリー氏は、8年にわたって南極でペンギンを撮影してきた。ところが2024年、自らが司会も務めるドキュメンタリー番組を撮影中に、それまでほとんど知られていなかった現象を目にすることになった。 若いコウテイペンギンが一列に並び、高い氷床から地平線に向かって消えてゆく。
調査のためにかけられた麻酔から意識を取り戻したメガネグマ。このときは位置情報を追跡する首輪を装着したが、別に4頭にカメラがつけられ、驚きの発見が続々ともたらされた。(PHOTOGRAPH BY THOMAS PESCHAK) 南米に生息する唯一のクマであるメガネグマ(Tremarctos ornatus)にビデオカメラを装着して行動を調べたところ、木の上で交尾をする映像が確認された。これはメガネグマだけでなく、クマ全体で初めての科学的な報告だ。2024年12月4日付けで学術誌「Ecology and Evolution」に論文が発表された。 論文の筆頭著者であるルースメリー・ピルコ・フアルカヤ氏は、オスのメガネグマから回収したカメラをコンピュータに接続したとき、自分がどんな映像を見ることになるのかまるで想像していなかったという。 「1000本以上の動画があったので、ただ適当に選んで再生した
2019年4月の火災の後、考古学者たちは損傷した大聖堂の床下を発掘する許可を得た。掘り出された遺物は数世紀にわたり行方不明になっていたもので、その多くが現在、パリのクリュニー中世美術館で開催されている「石の声を聴く。ノートルダムの中世の彫刻」展で展示されている。開催期間は2025年3月16日まで。(Photograph Courtesy Denis Gliksman, Inrap) 2022年2月、パリのノートルダム大聖堂の再建を始める準備がようやく整った。だがその前に、考古学者に助言を求めなければならなかった。フランスの法律では、古代の遺物や遺跡が見つかる可能性のある土を掘り起こすような建設プロジェクトには、政府の考古学者による介入が義務付けられているからだ。 今回の考古学者たちの仕事は、尖塔(せんとう)の再建に必要な770トンの足場によって貴重な遺物が押しつぶされないようにすることだっ
足首周りの腱や靱帯を鍛えるかかとエクササイズを実演する理学療法の学生。こうしたエクササイズは、関節の安定性を高め、結合組織全般の健康の促進によい。(Photograph by Izaiah Johnson, The New York Times/Redux) 体を鍛えるというと、筋肉だけに注目しがちだ。だが、力強い動きの裏には、靱帯や腱、関節など、体の動きを支える結合組織というあまり目立たない存在がある。 「バーベルを持ち上げるとき、ランニングをするとき、ゆっくりとヨガのポーズをとるとき。すべての動きには、そうした裏方が不可欠です」と、スポーツ理学療法士でパーソナルトレーナーのジェシカ・ウルキ氏は言う。氏は、米アカデミー・メドテック・ベンチャーズ社の臨床実装マネージャーも務める。 「靱帯や腱は結合組織の一種で、人体のさまざまな構造を支え、固定し、つなぎ合わせる重要な役割を担います」と、米ネ
旧江戸城の外堀で採取した水から、東京都では明治29年(1896年)以来128年ぶりに緑藻の「ボルボックス」が見つかった。ボルボックスは「緑の宝石」の異名を取るユニークな植物プランクトン。発見した法政大学自然科学センター・法学部の植木紀子教授(細胞生理学)は「長い間、謎に包まれていた東京産ボルボックスが非常に身近な場所に生息していることがわかり、今後も継続して調査を続けたい」と話している。
モロッコ北東部の山岳地帯にある「ハトの洞窟」(タフォラルト)は、かつて石器時代の人々によって利用されていた。その内部にある埋葬穴から、現代も伝統医療で使用されるマオウの球果が見つかった。(Photograph by maghribi, Alamy Stock Photo) 北アフリカ、モロッコの洞窟の古い埋葬穴で、薬または興奮剤として植物を使用していた最古の証拠になるかもしれない遺物が見つかった。11月2日付けで学術誌「Scientific Reports」に発表された研究によると、モロッコ北東部にある「ハトの洞窟」で、1万5000年前の人骨と一緒にマオウ(麻黄)属の低木の球果が埋葬されていた。 マオウに含まれる「エフェドリン」という物質は、強力な興奮剤で、交感神経による脳と体の情報伝達を刺激する働きがある。研究者らは、この植物が埋葬の儀式で摂取されたと考えており、石器時代にこの地域に住む
女児や女性が自閉症と診断される割合が高まっている。研究者らは、その理由のひとつとして、自閉症の人々の体験への理解が深まった点を挙げている。(Photograph by Sophie Chivet, VU/Redux Agency) セレニティ・カイザーさんは48歳で自閉スペクトラム症(ASD、自閉症)と診断された。診断結果は驚きであると同時に、彼女がずっと抱えていた問題に対する答えでもあった。子どものころ、カイザーさんはいつも「度が過ぎる」と言われ、笑い声が大きすぎる、動きが不自然、おかしなタイミングでおかしなことを言うといった指摘を受けていた。11歳のとき、彼女は施設に2度入れられたが、それがなぜなのかは、自分ではよくわからなかった。 自閉症と診断されたあと、カイザーさんは施設に収容されていた当時の書類を調べた。自分が施設に入れられる原因となった特徴が「ほぼ教科書通りの自閉症」だったこと
ドミニカの海で並んで泳ぐ2頭のマッコウクジラ。彼らはエコーロケーション(反響定位)を利用して深海の闇の中で狩りをする。(PHOTOGRAPH BY BRIAN SKERRY, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 深海に潜って餌をとるクジラには、暗闇の中で餌を見つけるため、音の反響を利用して獲物の位置を特定するソナーのようなしくみが備わっている。しかし彼らのソナーは、海に浮かぶプラスチックごみを好物のイカとして探知している可能性がある。 10月16日付けで学術誌「Marine Pollution Bulletin」に発表された新しい研究によると、ポリ袋(レジ袋)のようなプラスチックごみは、その形状、大きさ、風化の度合い、成分が相まって、イカと驚くほどよく似た「エコー」を返すという。 推定値には幅があるが、世界の海洋には毎年、重さにして数百万トン、数にして合計数十兆個のプラスチ
添加糖類の摂取量を減らすと、気分の改善から老化を緩やかにすることまで、さまざまな健康上のメリットがある。(PHOTOGRAPH BY TENDO23, GETTY IMAGES) 糖類の取り過ぎが体によくないことは、ほとんどの人が知っている。肥満、脂肪肝、2型糖尿病、心臓病、がんなどの健康上のリスクと関連していることから、糖類の摂取をぜひともやめたい悪習リストの上位に挙げる人は少なくない。 糖類の摂取量を減らせば、取り過ぎによる害を避けられるだけでなく、すぐに実感できる驚きの利点をもたらしてくれる。たとえば、「気分や肌の健康、歯の衛生、認知機能、運動能力の向上」が挙げられると、米テキサス州ダラスで活動する栄養学者で登録栄養士のエイミー・グッドソン氏は言う。 そうした恩恵を受けるにはどうすればいいのか、ほかの糖類よりも警戒すべき糖類があるのはなぜか、また、糖類の摂取量を減らすために今日からで
大西洋原産のウミヤツメは、1800年代に北米の五大湖に侵入し、運河を通ってさらに広がった。(Photography by Andrea Miehls/GLFC) 北米の五大湖で、年間70億ドル(約1兆800億円)の規模を誇る漁業を崩壊寸前に追い込んだ外来魚ウミヤツメ(Petromyzon marinus)の駆除プログラムが、まれにみる成功を収めている。数十年におよぶ努力の末、人類は侵略的外来種の広大な湖全域における制御に成功した。世界でも類を見ない、野生生物管理の成功事例だ。 ヤツメウナギの仲間で大西洋原産のウミヤツメは、100年以上前に人間の活動によって五大湖の全域に侵入し、サケやレイクトラウト、ウォールアイといった在来種を食い荒らすようになった。 「ウミヤツメは、ただ泳いで入ってきただけです。我々人間が運河を建設して扉を開けてしまったのです」と、ウミヤツメの管理に取り組む五大湖漁業委員
米国ニューヨークの赤外線サウナに座る女性。赤外線サウナは電気ヒーターや蒸気ではなく光で体を温める。赤外線は痛みの緩和から睡眠の改善まで、さまざまな健康効果が期待されて人気が高まっている。(PHOTOGRAPH BY LAUREL GOLIO, REDUX) サウナやホットエクササイズで体を温める手段として赤外線が人気を集めており、慢性痛の緩和からストレスの軽減までさまざまな効果がうたわれている。従来の暖房が空気を暖めるのに対し、赤外線は人の体や床などの物体を電磁波(光)で直接温める。 米国ミシガン州でピラティススタジオ、パフォーミング・ファンデーションを経営するピラティスインストラクターのブルック・アレクサンドラ氏が初めて赤外線を試したのは、ライム病(マダニにより媒介される感染症)の症状を和らげるために赤外線サウナを使い始めたときだった。(参考記事:「マダニからうつるライム病が急拡大、ワク
ドイツのフライブルクで、魔女の仮装をした2人の人物。1950年頃。(Photograph by Hermann Fuss, Bridgeman Images) 魔女を魔女たらしめるものは何か。黒い服と細長いとんがり帽子を身に着け、ほうきにまたがり空を飛ぶだけではない。ときにはいぼがある老婆であったり、ときには人魚姫のような美女であったりするが、それだけでもない。アメリカン・ポップカルチャーのアーキタイプ(原型)となったこのような魔女のイメージは、近世の魔女狩りの歴史が今に至るまで影響を及ぼし、魔女と呼ばれる人物に対して多くの人が強い関心を持っていることの表れだ。(参考記事:「世界の恐ろしい「魔女」5選、皮を脱ぐ魔女から残忍な吸血女まで」) そこで、魔女の大鍋、とんがり帽子、ほうき、黒猫が、どのようにして魔女の必須アイテムとなったのかを振り返ってみよう。(参考記事:「「アブラカダブラ」は誰が
ローマ皇帝マルクス・オペッリウス・マクリヌスは217年から218年まで在位した。ローマ属州マウレタニアのカエサリア(現在のアルジェリアのシェルシェル)で生まれた。(PHOTOGRAPH BY UNIVERSAL HISTORY ARCHIVE, UIG/BRIDGEMAN IMAGES) 映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』で、デンゼル・ワシントンが演じる「マクリヌス」は、3世紀ローマの危険な王宮と闘技場で、権力への道を切り開いていく謎の奴隷商人だ。一方、同時代のローマ皇帝マルクス・オペッリウス・マクリヌスは、現在のアルジェリアで生まれた数少ないアフリカ出身の皇帝だった。 マクリヌスは低い身分からローマ帝国で最も権力のある男へと一気に駆け上がったが、その生涯は映画とは異なる。マクリヌスの急速な出世は古代ローマの多様性、そして、民族や出生地が権力への障壁にならないことを示している。異色
報告書によると、世界の温室効果ガス総排出量は1990年以降、多少の増減はあっても基本的には増加傾向が続いている。1990年の総排出量は378億トンだったが、2010年には510億トンに増加。2020年は世界のコロナ禍の影響もあって前年より減りながらも537億トンになり、23年には571億トンに達した。 各国別の排出量では、中国が160億トンで世界の排出量の約30%を占める。次いで米国が59億トンで、インドも41億トンと排出量が多い。20カ国・地域(G20)加盟国(アフリカ連合の国を除く)の合計は世界全体の77%を占めた。 UNEPの報告書は日本の温室効果ガスの排出量を詳述していないが、環境省によると、2013年度は14億トン。その後減少傾向にあったが、21年度は11億トンで前年度比2.0%増加した。 UNEPだけでなく、多くの地球温暖化に関係する報告書が世界の平均気温が上昇傾向にあることを
2020年、マンモスの牙の発掘作業をしていた作業員が、シベリアの永久凍土の中で約3万2000年前のサーベルタイガーの子どものミイラを発見した。(PHOTOGRAPH BY Alexey V. Lopatin) さまざまな復元図や博物館の模型のほか、映画『アイス・エイジ』シリーズにも登場するが、サーベルタイガー(剣歯虎)が実際にどんな姿をしていたのか、古生物学者はおよそ200年ものあいだ疑問に思ってきた。見つかるのは骨の化石と足跡だけで、長い牙を持つこの肉食動物の本当の容姿はずっと謎だった。だが、シベリアの永久凍土で3万2000年前の子どものミイラが見つかり、ついに外見を披露した。論文は11月14日付けの学術誌「Scientific Reports」に掲載された。 「素晴らしい標本に大興奮しています」と、カナダ自然博物館の古生物学者であるアシュリー・レイノルズ氏は喜ぶ。なお氏は、今回の研究に
Q:不眠症にかかったら医師に相談すると回答した国民の割合は? A:スペイン、ドイツ、ブラジル、ベルギーは40%以上、中国は20%以上、日本は10%以下 Q:不眠症にかかったら睡眠薬を服用すると回答した国民の割合は? A:スペイン、ベルギーは40%以上、中国、ブラジルは30%以上、ドイツは20%以上、日本は20%以下 このデータは、第44回「寝酒がダメな理由」で紹介した図にもあるように、世界10カ国、 計3万5327人を対象に2002年に実施されたSLE-EP (SLEep EPidemiological) Surveyで得られた結果の一部である。他の不眠対処法についても、自宅でも簡単にできる「カフェインを控える」も最下位、一方で睡眠の質を低下させるため勧められない「寝酒」を選択する人の割合はダントツであった。教育レベルが高い日本人だが、眠ることに関しては落第点のつく残念な結果であった。 さ
「ガス」と名付けられたオスのコウテイペンギンは、2024年11月1日、西オーストラリア州の町デンマーク近くの海岸で発見された。(Photograph By Miles Brotherson/DBCA via AP) ペンギンには優れたナビゲーション能力があり、自分の縄張りよりもはるか遠くへと移動することがよくある。通常、このような冒険はかなり短期間で終わるが、驚くべきことに、やせ細った1羽のコウテイペンギン(Aptenodytes forsteri)が単独で故郷の南極から約3200キロメートル以上も離れたオーストラリアの海岸に上陸した。 2024年11月1日、オーストラリアの西オーストラリア州の町デンマークにあるオーシャンビーチで、おとなのオスのコウテイペンギンがよたよたと浜辺を歩く姿が目撃された。その後地元の野生動物専門家によって保護されたこのペンギンは、ローマ皇帝のアウグストゥスにちな
米セントラルフロリダ大学の生物学者ジェンナ・パルミサーノ氏が持つRaillietiella orientalisの標本。ヘビに肺感染症を引き起こす、外来種の寄生虫だ。(Photograph by Nicolas Conzone) 今、米国フロリダ州の藪(やぶ)の中で、在来種のヘビを襲う恐ろしい病が広がりつつある。ヘビは皆、口から白っぽくて細長い寄生虫を出して死んでいる。もやしのようなこの寄生虫の名はRaillietiella orientalis)。ヘビの体内に入ると、死に至るまで肺を食べるという。 R. orientalisに感染した在来種のヘビが最初に見つかったのは、2012年、フロリダ州南部でのこと。発見者はフロリダ大学と提携する侵入生態学者のメリッサ・ミラー氏だった。 同氏はその後、感染源を、1990年代半ばにアジアから米国に入ってきた侵略的外来種であるビルマニシキヘビ(Pytho
大麻の長期常用と関連付けられるカンナビノイド悪阻症候群(CHS)で入院する人の数が、米国で2017年から2021年までに倍増した。なぜCHSを発症しやすい人がいるのかは、まだ解明されていない。(Photograph by Bill Marr, Nat Geo Image Collection) 繰り返し起こる吐き気、嘔吐、激しい腹痛。そして何度も風呂に入りたがる。こうした胃腸などの異常は、長期にわたる大麻(マリファナ)の常用に関連付けられる「カンナビノイド悪阻(おそ)症候群(CHS)」の典型的な症状だ。 CHSは、2004年に初めてオーストラリアの医師たちによって報告された。米国では患者数が年間275万人と推定され、その数は増えているという。2024年10月号の医学誌「JAMA」に掲載された一般患者向けの記事によると、米国とカナダではCHS関連で救急外来を訪れる患者の数が2017年から20
1588年にスペイン艦隊が英国海軍に敗北した様子を描いた絵画。エリザベス朝時代の海賊「シードッグ」は、女王エリザベス1世の命を受け、その名のもとにスペインの船を狙って私掠行為を行っていた。(Photograph by The History Emporium, Alamy Stock Photo) 16世紀に大西洋で活動した海賊といえば、「シードッグ」と呼ばれたエリザベス朝時代の英国の海賊たちだ。女王エリザベス1世(在位1558〜1603)の命を受け、この海域で英国の存在感を高めるべく、彼らは大きな役割を果たした。その結果、主な標的とされたスペインの船にひどく恐れられた。 シードッグは、女王の権限のもと私掠船(しりゃくせん)として活動した。シードッグには国王が発行する私掠免状が与えられており、他の海賊と一線を画していた。彼らはスペインと戦争中でなくても、英国の法律のもとで合法的にスペイン船
ポルトガルのアラビダ自然公園でヨガをする女性。騒がしい世の中で心身の安定を図ろうと、誰かと一緒に静かに読書や瞑想をしたり、騒音の少ない場所で過ごしたりする人が増えている。(Photograph by Matthieu Paley, Nat Geo Image Collection) 街を行き交う車の騒音や落ち葉を吹き払う機械の音、スマートフォン(スマホ)から四六時中流れてくる動画の音声など、現代に生きる私たちを取り巻く音はうるさくなる一方だ。こうしたあふれんばかりの騒音から逃れようと、今では手に入れるのがどんどん難しくなっている環境、つまり「静寂」を求める人は多い。 「人は、こうした騒音の量や過剰な刺激に適応するようにはできていません」と、ノルウェー在住の心理学者で静寂を専門に研究するオルガ・レーマン氏は考えている。騒音公害、具体的には85デシベル(騒がしいレストランレベル)を超える音に過
194平方キロメートルに及ぶユネスコの世界自然遺産ワディ・アル゠ヒタンは、進化の大きな謎の1つを解く鍵を握る場所だとされる。(PHOTOGRAPH BY BELLA FALK) ツタンカーメンの黄金のマスクやギザの大スフィンクスなど、古代エジプトの歴史を鮮やかによみがえらせるものは多い。だが、カイロの南西およそ160キロの砂漠に、はるか昔の栄華を伝えるものが残されている。巨大な生物が暮らしていた頃が垣間見える世界自然遺産の「クジラの谷」ことワディ・アル゠ヒタンだ。人家もなく、水もなく、草木も生えない200平方キロメートルほどの砂漠の谷は、進化の謎を解き明かす鍵を握る場所だと言われている。(参考記事:「エジプト クジラが眠る谷」) 言わば隠れた秘宝 多くの観光客が古代エジプトの宝物を見に訪れる王家の谷とは違い、ワディ・アル゠ヒタンは言わば隠れた秘宝だ。この人里離れた地は、風食と古生物学者たち
1924年に見つかった「タウング・チャイルド」の頭蓋骨。世界初となるアウストラロピテクス・アフリカヌスの発見だったが、人類の祖先だという進化史上の位置づけは、なかなか受け入れられなかった。(Photograph Pascal Goetheluck/Science Photo Library) 最初、その霊長類の頭蓋骨の化石は、暖炉に飾る置物に過ぎなかった。だがまもなく、人類がどこでどのように進化してきたのかを解き明かす初の手がかりとなった。ただし、それは決して簡単な道のりではなかった。 1920年代、科学者たちは人類の先祖の化石を求め、世界中を探しまわっていた。人類がどこで進化したのかという疑問は未解決のままで、チャールズ・ダーウィンはアフリカの可能性があると述べていたものの、当時最も注目を集めていたのは、ヨーロッパとアジアだった。 1924年末、南アフリカで解剖学を学んでいたジョセフィン
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