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大そうじへの備え
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洋弓と和弓のおよその形を図1に示しました。洋弓を見たときにまず目に付くのが、弓からたくさん生えた「角」です。これらはスタビライザーと呼ばれるもので、文字通り、弓を安定させるための道具です。 スタビライザーの主な働きは2つです。一つは、慣性モーメントを大きくして弓の動きを抑える働き。要するに、重たくすることで不要な回転や傾きが起こりにくくなるわけです。まん中の長い角は、弓全体の左右の動き(トルク)や、上下の傾き(ピッチング)を抑え、左右に突き出た角は、主に押し手を軸にした回転(ローリング)を抑えます。もう一つの働きは、余分な振動を抑えることです。引き絞っている時に腕が多少震えても、その振動がスタビライザーに伝わって吸収されるので、弓自体はあまり震えなくなります。また、引き手を離して矢を放つ(離れ=リリース)瞬間に発生する振動も吸収してくれます。 これらのスタビライザーは洋弓には必ずあるかとい
人間の五感の中で最も情報量が多いのは「視覚」でしょうが、「見聞」だとか「耳目を集める」などの言葉にも見られるように、「聴覚」も「視覚」と並べて語られることが多い感覚ですね。そして「視覚」が感知するものが「光」であるのに対して、「聴覚」が感知するのが、この項の主題、「音」です。 光と音はどちらも波の性質を持ち、回折や干渉などの波の基本的な性質に関しては、似たような振る舞いを見せます。しかし、光が電場や磁場という直接触れることのできない「場」の振動であるのに対して、音は実体のある物質の振動ですから、当然ながら光とは違った性質もいろいろと出て来ます。光は真空中でも伝わりますが、音は全く伝わりません(SF映画の宇宙戦争などのシーンでは派手な爆発音などが入っていることが多いですが、本当の真空の宇宙空間ではあのような音は聞こえないはずです)。逆に、光は通過できないものがたくさんありますが、音は、物さえ
実生活の中で、ゴムの恩恵は計り知れません。身近な輪ゴムやタイヤ、オモチャのボール、長靴、ゴムホースなどから、ビルの免震装置に至るまで、その活躍の場は極めて広い範囲にわたっています。ゴムが広く使われるのは、言うまでもなくその「伸び縮みする」性質のためなのですが、これってけっこう不思議な現象ですよね。他の物質の弾力とは一味違った、極端な伸び縮み。なぜこんなことが起こるのでしょうか。 弾力のある物と言えばバネもそうですが、例えば鋼鉄製のバネを考えた場合、例の螺旋状(つるまきバネ)にするか、薄い板状(板バネ)にしなければ、まともな弾性は出て来ません。鋼鉄の塊では、ものすごい力をかけて変形させれば別ですが、普通は弾力と言えるような性質は見えないのです。ところがゴムは、外形に関係なく伸び縮みします。ひも状であろうが塊であろうが、ちゃんと目に見える弾性を、それもケタ違いのスケールで示すわけで、このことを
ここに、とある場所の海岸線の地図があるとします。細かく入り組んだ地形のリアス式海岸です。中央付近には自然の造形とは明らかに異なる、直線的な形の港の突堤も小さく見えています。そして隣にもう1枚、同じような地図があります。複雑な海岸線の形は前の地図とそっくりで、少し離れた別の場所かと思いきや・・・・・・端の方に港の突堤が大きく描かれていることに気が付きます。そう、これは縮尺の違う、同じ場所の地図だったのです。 この地図の例のように、一部分を拡大すると全体と同じように見える複雑な形というのは、自然界のいたるところに見られます。このような形、あるいはこのような形を扱う考え方のことを「フラクタル(fractal)」と言います。フラクタルという言葉は比較的新しいもので、1975年にフランスの数学者マンデルブロ(Mandelbrot)が初めて提唱したそうです。語源はラテン語の「fractus(破片)」で
「静電気」という言葉を聞いたことのない人はいないでしょう。ドアのノブに手を触れた瞬間にパチッと来るのも静電気ですし、セーターを脱ぐ時にパチパチと火花が飛ぶのも静電気の仕業です。プラスティックの下敷きを服で擦って髪の毛を逆立てた経験は誰にでもあるでしょう。また最近では、静電気を帯びた風船で空中に漂うポリエチレンテープの房を操るだとか、紙コップに電気を溜めて口をつけた人を驚かすだとかの面白いパフォーマンスがテレビなどでよく紹介されています。こういう楽しい話だけではなく、静電気が火種になってガソリンに引火したり、粉塵が爆発したり、という事故も時々耳にしますね。これほど身近な静電気ですが、「その正体は何か?」と改めて尋ねられると、以外に答え難いものです。単純に言ってしまえば、「プラスやマイナスの電荷が流れないでじっと止まっている状態」ということになるのでしょうが、その電荷の正体や、それが溜まって行
人間の五感の中で最も情報量が多いのが視覚だと言われています。ということは、「百聞は一見に如かず」の諺を出すまでもなく、人に何かを伝えようとすれば視覚に訴えるのが一番効果がある、ということです。聴覚を対象にしたスピーカーと比べて視覚を対象にしたディスプレイの果たす役割は非常に大きいわけです。(情報通信の世界で、他の3つ、触覚、味覚、嗅覚に訴える手段は、いろいろ研究されてはいますが、まだ一般的とは言えませんね) その昔、ディスプレイと言えば何と言ってもテレビ(もちろんブラウン管)であり、電光掲示板でした。それが表示窓の付いた電卓が現れ、ワープロが普及し、パソコンが一般的になり、さらにデジカメや携帯電話と、あっという間に一般家庭の中にディスプレイが溢れるようになりました。ちょっとした家電や子供のオモチャにまで、ディスプレイ搭載のものがどんどん出て来ています。そして現在、薄型テレビや薄型パソコンモ
磁石の話は小学校4年生ぐらいで理科に登場するのでしょうか。砂鉄を広げて磁力線を出してみたり、いくつかの磁石を組み合わせて複雑な動きをさせてみたり、子供のオモチャとしてはけっこう楽しいものです。ところがひとたび磁性の原理・理論に足を踏み入れると、微積分の式がやたらに登場する電磁気学の世界に入りますから、ここで匙を投げてしまった人も多いのではないでしょうか。電磁気学それ自体は非常にすっきりした、きれいな体系にまとめられた学問で、理解してしまえばそれほど難しいものではないのですが、入口でつまづくと、頭の中が混乱してわけがわからなくなりやすいのも事実です。その原因の一つは、電気と磁気の関係がこんがらがっていることにあるのではないかと思います。そこで本稿では、まず電気と磁気の似たところ、違っているところをチェックしながら磁性の説明をし、その後、具体的な磁石の話に入って行こうと思います。 電磁気学の基
最近、新聞などで「ナノテク」という言葉を目にしない日はほとんどありません。現実にはナノメーター(nm = 10-9m)までは行かないマイクロメーター(μm = 10-6m)レベルのものもありますが、とにかく小さい物を扱う技術は花盛りです。かつて「大きいことはいいことだ」というフレーズが流行ったことがありましたが、小さいことの利点もいろいろあります。部品が小さくなれば、それを使った機械装置も小さく、持ち運びに便利になりますし、逆に全体の大きさが同じならば、小さいほど多くの部品が詰め込めて高機能になります。典型的なのがLSIやそれを活用したコンピューターですね。細い配管の中や、場合によっては人間の体の中で活動するロボットなども、「小ささ」の「大きな価値」の一つでしょう。また、単に物理的な大きさの問題だけでなく、小さくすることによって新しい機能が発生することもあります。先のLSIの例では、小さく
物質を構成している原子・分子の位置や向きが規則的にビシッと決まっていて流動性がないのが結晶、この中から位置の制限が緩くなって移動が許されるようになり、流動性が出て来たのが液晶であることは、別の項でも書きました。これに対して、原子や分子が自由に移動することはできず流動性がないのに、その位置や向きが「ビシッ」とは決まっていない固体があります。これが「非晶質(アモルファス)」で、その中で、ゴムのように柔軟ではなく硬いものを「ガラス」と呼んでいます。おなじみの窓ガラスやガラスコップだけでなく、プラスティックの類も温度によって結晶になったりガラス状になったりしますし、金属の中にも原子の配置が乱れたガラス状のもの(アモルファス金属)があるのです。とは言うものの、アモルファス全体まで範囲を広げると書くことが多くなり過ぎてパンクしそうですから、ここでは狭い意味の、ケイ素と酸素を主成分とするいわゆる「ガラス
「鏡に映った像は左右が逆になる」ということは誰でも知っていますね。でも、これって本当ですか? 床の上に鏡を水平に置いて、その上に立ったらどうなるでしょう。今度は上下が逆ですね。鏡は向きによって性質が変わるのでしょうか? それでは上下のない無重力空間だったら? 考えれば考えるほど、わからなくなって来ます。 実はこの問いはずいぶん昔からあって、これに対する解答もいろいろと考えられています。本も出ていますし、ネット上にもたくさんの関連サイトがありますから、これらを見れば、答えは得られるでしょう。ただし、その説明の仕方は人によって様々で、かえって混乱するかも知れません。どれが正しいというものでもなく、(明らかに間違っているものは別として)好みの問題、というところでしょうか。私もこの問題については子供のころから不思議に思っていて、ずいぶんいろいろと考えました。今でも完璧な説明ができる気はしないのです
この世の中が3次元であることは誰でも知っていますね。アインシュタインの相対性理論では時間と空間を同列に扱って、この世界を4次元としていますが、ここでは空間の部分だけ取り上げますので、3次元でOKです。それでは、次元とは何でしょうか。 辞典を見てみましょう。「線形空間で互いに独立にとれる成分の数」・・・。またわかったようなわからないような表現が出てきました。別の言い方をすれば、空間の次元というのは、「その空間のある場所を特定するのに必要な要素の数」ということです。例えば、京都の「四条河原町」と言えば、四条通りと河原町通りの交点ということで、「四条通リ」という要素と「河原町通り」という要素の2つが示されて初めて場所が特定される、ということです。あれっ、1個足りない? 残りの1個は高さ、例えば「マンションの5階」、といったところでしょうか。 要するに、縦方向と横方向と高さ方向の3つの要素があるの
電気を通さない絶縁体は、電場をかけるとプラスとマイナスの電荷が位置ズレを起こして分極する「誘電体」としての性質を持ちます。誘電体の話(その1)では、このような誘電体の基本的な性質として、分極が起こるしくみや交流をかけた時の振舞いなどを説明しました。これに続いて本稿では、主に誘電体の利用に焦点を当てて話を進めることにします。誘電体の話(その1)を「基礎編」とすれば、「応用編」というところでしょうか。 普通の誘電体は、絶縁体としての用途はたくさんありますが、誘電性を積極的に利用したものとなるとコンデンサー材料ぐらいです。誘電率の大きい材料を挟めば、それだけ大容量のコンデンサーが作れるわけで、これだけでも世の中で十分に役立っています。身の回りには電気回路が溢れていますが、その中のコンデンサーのほとんどに誘電体が使われているのです。とは言え、やはり面白いのは、普通でない誘電体の性質を利用したもので
世の中の物を2つに分ける分け方にもいろいろありますが、「電気を通すか通さないか」という観点もその一つでしょう。「半導体の扱いをどうするか(半導体の話参照)」とか、「ものすごい高電圧をかけたらどうなるか(静電気の話参照)」といったややこしい話は抜きにして、普通の条件で電気を通す物は「導体」、通さない物は「絶縁体」と呼ばれます(ただし直流での話で、後で出て来ますが、交流の場合は状況が変わります)。「導体」に属するのは言うまでもなく金属やグラファイトですし、「絶縁体」に属するのは、木や紙、ガラス、レンガや陶磁器などのセラミックス、プラスティックなどです。空気などの気体や、何も溶けていない水などの液体も、普通は絶縁体ですから、種類から言えば圧倒的に絶縁体の方が多そうです。それでは、これらの絶縁体は電圧をかけても全く何の変化も起こさないのでしょうか。実はそうではありません。物を作っているのは原子や分
バグダッドの2000年前の遺跡から古代の電池と思われる壷が発見された、という話を聞いたことがある人も多いでしょう。陶器製(つまり絶縁体)の壷の中に銅製の筒と鉄製の棒を入れた構造で、壷の中に酸を入れれば間違いなく電池になる構成です。誰がどのようにして作り出し、何に使っていたのか・・・・・。私は考古学者ではないのでよくわかりませんが、とにかく、こういうものが2000年前に実在していたことは事実です。ところがその後、大きな発展はほとんどなく、ようやく1800年になってボルタが有名な「ボルタの電池」を発明することになるのです。 その後の電池の発達は言うまでもないでしょう。身の回りは電池で溢れています。その種類も、ボルタの電池の延長線上にあるものから、充電可能な2次電池、高電圧仕様のリチウム電池、さらに最近注目の燃料電池から太陽電池に至るまで、実に多種多様です。最近では、もう行き着くところまで行った
普通に「モーター」と言って想像するのは、模型の車や船などに使う小型の直流モーターでしょう。これの原理は中学校の理科で習うと思いますが、一応、図1で簡単におさらいしておきましょう。 モーター本体は、中で回転するローター(電機子、アーマチュア)と、外側に固定されたフィールド(界磁、ステーター)から成っています。ローターは鉄芯にコイルを巻いた電磁石(磁石の話参照)で、導線の端は整流子と呼ばれる筒状の金属片(整流子片)につながれています。図1のモーターは2極型ですから、整流子片も2つに分かれています。整流子片はブラシと呼ばれる別の導体に接触しており、ここから電流が供給されます。電源をつなぐと、電流はブラシから整流子片を通ってローターに巻かれたコイルを流れ、もう一方の整流子片から反対側のブラシを通って出て行きます。 初めにローターが図1(a)の位置にあったとしましょう。電流は左のブラシから橙色の矢印
物質には「固体」、「液体」、「気体」の3つの状態、即ち「三態」がある、と学校で習いました。では「固体」とは何でしょうか。物質を構成する分子が強く結合し、互いの位置を変えないで一定の形を保つ状態です。「液体」とは何でしょうか。分子は互いに位置を変えて運動できるが、ある程度の相互作用があり、一定の形は持たないがほぼ一定の体積を持つ状態です。それでは「気体」とは何でしょう。分子がほとんど相互作用をせずに自由に飛び回っており、形も体積も一定値を持たない状態です。 ここで、これらの定義をもう一度よく見てみましょう。分子が互いの位置を変えられるか変えられないか、という基準は、かなりはっきりしています。ですから固体と他の2つとは明確に区別できそうです(粘弾性の話でも触れているように、ものすごく長い時間スケールで考えると、この差が曖昧になる場合もありますが)。それでは液体と気体の違いはどうでしょう。分子ど
「粘性」という言葉はご存知でしょう。微粒子分散系の話でも少し触れましたが、これは、液体などが流れている時に流れの速さが違っている部分があると、それを均一にならそうとする性質です。定義はそうですが、日常的には、液体に棒を突っ込んでかき回した時に感じる抵抗であり、液を垂らした時の流れにくさであるわけです。一方、「弾性」というと、まず思い浮かべるのはバネやゴムでしょう。力をかけて変形させた時に、それに逆らって元に戻ろうとする力が発生する性質です。それでは「粘弾性」は・・・。文字通り、「粘性」と「弾性」の両方を併せ持つ性質、ということになります。とは言っても、「粘性」の方は「流れ」に関する性質ですから、「流れない」固体には関係ありませんし、「弾性」の方は、「変形」に関係する性質ですから、「形」を持たない気体や液体には関係ないはずです。これらを「併せ持つ」とはどういうことでしょうか? 実は、ほとんど
天体望遠鏡の話や顕微鏡の話で書いたように、光を使った望遠鏡や顕微鏡では、光の波長よりも小さい物を鮮明に見ることはできません。光を使って得られる位置の情報には、必ず波長程度の不明確さが含まれているからです。それならばもっと波長の短い紫外線やX線、ガンマ線を使えばよいわけですが、これらの進路を曲げて像を作るレンズがなかなかありません。紫外線が透過する材料は少ないですし、X線やガンマ線はいろいろな物質を簡単に透過する反面、屈折させるのは困難だからです。最近では、屈折ではなくて全反射や回折の現象を利用してX線を操作するレンズ系を構成したX線顕微鏡もありますが、あまり一般的とは言えないでしょう。そこで電子線を使った電子顕微鏡が登場します。電子線は光のようにガラスのレンズで進路を曲げることはできませんが、電場や磁場をかけることで、レンズを通る光と同じように操作することができます。つまり、光を電子線に、
ゼオライトの一種であるナトリウムモルデナイトに対するオルト水素とパラ水素の収着現象を解析し、水素の収着熱と、オルト/パラ水素の収着性の違いについて、実験と理論の両面から検討。水素分子はモルデナイト細孔内で壁面のナトリウムイオンに対して水平に配向していること、分子の回転を束縛して配向を決めている主要因は四重極子と静電場の勾配との相互作用であることを実証。 シランのグロー放電分解によって作製したアモルファスシリコンを、種々の酸化還元電位を持つ水溶液に浸し、暗時、および光照射時の電気化学的挙動を解析。アモルファスシリコンはn-型半導体の挙動を示し、適当な電気化学系において光起電力を示す。アモルファスシリコン表面は水溶液中で酸化され、それに伴って生じた表面準位によってFermi Level Pinningの現象を示すが、この過程は光電流によって加速される。また、液のpHと電極の電位に応じて、表面の
光の代わりに電子線を使って試料の拡大像を作る装置が電子顕微鏡であり、透過型と走査型の2種類があるということは、電子顕微鏡の話に書いています。そのうち透過型電子顕微鏡(TEM)については電子顕微鏡の話の中で詳しく説明してありますので、ここではもう一つのタイプ、「走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope = SEM)」について見てみましょう。 SEMではその名の通り、電子線でもって試料の表面を「走査」します。「走査」とは、テレビ画面の「走査線」の「走査」であって、試料上を右から左へ、さらに縦位置を少しだけずらしてまた右から左へと、目的の範囲を隈なくなぞることを言います。もちろん、ただなぞっただけでは何も見えませんから、なぞりながら試料から出てくる信号を捕まえます。SEMの場合は、電子線を照射することで試料から叩き出された「2次電子」をキャッチし、これを別の画面
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