2025-07-09

ルーマニア孤児の原因は「避妊中絶禁止」ではなく「共産主義

参政党の少子化対策が注目される中で、ルーマニア孤児問題が注目されている。

https://togetter.com/li/2573540

これは、あまり一方的すぎるので、別の見方を紹介したい。参政党に賛成の人も反対の人も軽く読んでくれたらうれしい。

ルーマニア孤児問題とは

ルーマニア独裁者チャウシェスクは、人口労働力を増やして国を経済成長させるため、避妊中絶原則禁止したり、子なし税を導入したりした。

しかルーマニア貧困だったので、親たちに子どもを育てる余裕がなく、捨て子が多発した。その結果、ルーマニアストリートチルドレンだらけになった。

最終的にルーマニア革命体制崩壊した。チャウシェスク処刑された。

ルーマニア孤児の原因

避妊中絶禁止」という施策が特徴的なので、これが原因と思うかも知れない。しかしそれは早計だ。

よく考えると、この話は少しおかしい。人は、そう簡単に我が子を捨てるだろうか? 人類がそこまで母性を失っているなら、人類もっと早期に絶滅しているのではないか

この問題本質は「貧困」にある。ただの貧困ではない。食料店からモノが消え、冬でも暖房が止まるほどの極度の貧困だった。なぜか。

共産主義だったからだ。

ルーマニア共産主義の失敗

1950年代ルーマニアは大規模な重工業化を進めた。これは初期には成功し、工業生産は40倍になった。

チャウシェスクは、西側諸国から借金をし、さら重工業化を進めた。すると、労働力が不足し始めた。そこで、「避妊中絶原則禁止」という人口増加政策をはじめた。

しかし、ここで共産主義の非効率性が発動した。生産しても評価されない人々の労働意欲は上がらず、多くの工場エネルギーと金を食いつぶすだけの施設になってしまった。

そこへ1970年代石油危機も直撃する。西側から借金と輸入原油に頼っていたルーマニア経済は、根底から覆され、完全に破綻した。

それでもチャウシェスク西側諸国に泣きつくことはせず、意地で借金を完済した。その動機は、ルーマニア共産主義の失敗を認めたくなかったため、つまり彼の誇るルーマニアメンツを保つためだった。

無理な借金返済は美徳ではない。彼は返済のために、国内のあらゆるもの海外に売った。そして、国民の食料まで売った。当然、国民飢餓に陥った。

そして、ルーマニア孤児につながった。

避妊中絶禁止」の他国の例

そもそも、「避妊中絶禁止」はそこまで珍しい話ではない。なにしろ、かのキリスト教カトリック)が原則的に避妊中絶禁止という教義をもっている。

そのため、中絶規制していたり、強い忌避感をもっていたりする国・州は今でも多数存在する。それでもルーマニアのように、国が崩壊する例は見かけない。なぜか。

共産主義ではなく、極度の貧困でもないからだ。

(余談だが、ポーランドのように、中絶法規制していても少子化に苦しんでいる国はある。中絶禁止少子化特効薬にならないということでもある)

本当の原因

ここまで共産主義だけを原因のように言ってきたが、これはこれで偏っている。突き詰めると、真の原因は「チャウシェスク独裁」だ。

チャウシェスクルーマニア共産主義の失敗を決して認めなかった。

彼は失敗が見え始めると、さらなる無謀な巨大投資を進め、自体悪化させた。

また、ナショナリズムメンツのために国民犠牲にして借金を返済した。

そして、検閲秘密警察を復活拡大し、反対運動弾圧した。

すべては、チャウシェスク独裁体制が空回りして起きてしまたことだ。

(なお、チャウシェスクは、もともとこのような人物ではなかったらしい。当初の彼は検閲を緩和し、自由主義的な政策を展開した。彼が国家主義イデオロギーに変わったのは、彼が中国北朝鮮訪問した際、毛沢東金日成のやり方に強い感銘を受けてしまった結果とされる)

これを踏まえて何を考えるか

ルーマニア孤児問題を「避妊中絶禁止」のだけのせいにすることはできない。極度の貧困、それを引き起こし共産主義の失敗、それらすべての過ちを認めずに暴走した独裁者存在が非常に大きい。

参政党の少子化対策を見てルーマニア孤児のようになるというのは、歴史の一面を切り取っただけの暴論と言えるだろう。

一方で、チャウシェスクの失敗の根底には、ナショナリズムがあることにも注意したい。彼は国を守るために国民犠牲にした。これは矛盾しているようだが、しばしば実際に発生する、ナショナリズムの負の側面だ。参政党の掲げる政策にこのような危うさがないか、よく分析する必要があるだろう。

  • そもそもの問題は女がいっこうに下方婚せず収入の大黒柱をやろうともしてないことにあるからね。

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