ねつでん‐はつでん【熱電発電】
熱電発電
もちろん熱で発電することは珍しくありません。例えば蒸気が吹き上がる力でタービンの羽根を回して電気を作る火力発電があります。水を沸騰させて蒸気を作るために化石燃料を燃やして熱を発生させます。この熱は発電を目的に作られた熱です。熱電発電は捨てられている熱を使って発電する装置です。捨てられている熱ですから、化石燃料を直接使いません。
仕組みの説明の前に捨てられている熱について。例えばゴミ焼却場ではゴミを燃やすと熱が発生します。自動車も走行のためにガソリンを燃焼させると熱が発生します。普通ならこういった熱はそのまま空気中に捨てられています。考えてみて下さい。捨てられている熱はたくさんあります。テレビやパソコンは使っていると熱くなります。工場に行けば溶接や金属を溶かす作業で熱が生まれています。こういった熱が捨てられている熱(廃熱)です。
それでは熱電発電の仕組みについて。材料は金属や半導体です。と言っても、ただの金属や半導体ではありません。温めると電気が流れる性質を持った金属や半導体を使います。捨てられている熱で温め、流れた電気を回収して発電する仕組みです。
昭和電工は開発した熱電発電モジュールを使い、ゴミ焼却場からの廃熱で発電する実験をしています。性能を調べる以外に、高温でモジュールが壊れないかなど耐久性も評価しています。ちなみにモジュールはいくつかの部品が集まることで機能を持った装置と考えて下さい。
コマツ子会社のKELK(ケルク)は、280度Cでも発電するモジュールを開発しました。ものすごい高温でなくていいので、自動車や建設機械、船のエンジンの熱で発電できます。
現在、KELKは工場で発電の実験中です。金属を熱する熱処理炉で余分に生じた熱でモジュールを温めます。モジュール1台(5センチ×5センチメートル)の出力は24ワットなので小さな照明ぐらいの電力にしかなりませんが、いくつかのモジュールを接続したり、蓄電池を使えば、いろいろな分野で活用できます。
熱電発電は捨てられている熱で電気を作るので、エネルギーの有効活用になります。実用化されると、石炭や石油の使用が減り、温暖化防止につながります。
(掲載日:2010/04/26)
【熱電発電】(ねつでんはつでん)
異種金属を接合し、それぞれに温度差を与えると電流が流れるゼーベック効果を用いた発電方法。
発電用途には一般に、熱電素子として半導体のP-N型を接合したものを複数繋いで用いる。
小さな温度差でも動作でき、温度差は世の中に溢れている。また、可動部が無く、信頼性が非常に高い。
しかしながら、熱電素子の両端に効率良く温度差を与えることが難しく、温度差が高ければ高いほど高出力になるが、そうなると素子が持たなくなるため、エネルギー効率は低い(数%)。
このため、時計等消費電力の低い機器に用いられている。
また、大規模発電には向かないが一切環境汚染をしないため、廃熱の有効利用としての研究も進められている。
応用として、温度差を与える手段として原子力を用いる「原子力電池」や「宇宙用原子炉」がある。
原子力電池は、放射性同位体の発する放射線を別の物質に吸収させ、発生する熱を温度差として利用する発電で、別名「ラジオアイソトープ電池」とも呼ばれる。
太陽光が届かず、高い信頼性が求められる深宇宙や深海で用いられる。
宇宙用原子炉は、原子力電池を遥かに超える出力を必要とする用途に向けて研究されているもので、宇宙探査機の電源としてだけではなく、電気ロケットの電力としても考えられている。
参考リンク(原子力電池):http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/08040208_1.html
参考リンク(宇宙用原子炉):http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/03041103_1.html
熱電発電
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/07 05:50 UTC 版)
熱電発電(ねつでんはつでん、英語: thermoelectric generation)とは、広義にはゼーベック効果による熱電変換素子、アルカリ金属熱電装置(AMTEC)、熱電子発電装置(TIC)、PETE素子などの熱電素子をもちいて熱エネルギーを電力エネルギーに変換する発電法である。狭義にはこの内、ゼーベック効果による熱電素子を用いた発電を意味する[1]。以下主に狭義の熱電発電について説明する。
- ^ a b c d e f g h “熱電変換について J. Plasma Fusion Res. Vol.87, No.12 (2011)818‐824” (PDF). 松原覚衛. 2012年9月27日閲覧。
- ^ “熱電おもしろ話”. 株式会社KELK. 2012年9月27日閲覧。
- ^ “A SELF-POWERED FIELD FEEDING SYSTEM”. US Army Natick Soldier Center. 2012年9月27日閲覧。
- ^ a b c “「高効率熱電変換システムの開発」事後評価報告書”. NEDO. 2012年9月27日閲覧。
- ^ a b Sybil P.Parker/〔原編〕物理学大辞典編集委員会/編『MARUZEN物理学大辞典 第1版』丸善、1999年3月。ISBN 4-621-04547-4。
- ^ “二酸化炭素排出抑制に資する革新的技術の創出”. 科学技術振興機構. 2012年9月27日閲覧。
- ^ a b “省エネルギー技術開発プログラム 高効率熱電変換システムの開発”. NEDO技術開発機構 ナノテクノロジー・材料技術開発部. 2012年9月27日閲覧。
- ^ Si/SiGe Quantum Well Thermoelectric Materials and Devices for Waste Heat Recovery From Vehicles and Industrial Plants
- ^ “熱電変換の多様な活用に向けて/熱電発電フォーラム(2005.10.31)”. 藤田 稔彦 財団法人エンジニアリング振興協会. 2012年9月27日閲覧。
- ^ ろうそくラジオ
- ^ 大型ディーゼル車排ガス発電
- ^ 熱電腕時計
- ^ Hi-Z Tecnology Inc.のHP
- ^ “燃焼ガスから直接発電して走行する熱電発電ビークルを世界で初めて発進”. 大阪産業大学. 2012年9月27日閲覧。
- ^ “未利用エネルギーを有効に活用する熱電発電システム”. 株式会社東芝. 2012年9月27日閲覧。
- ^ “世界最高効率の熱電発電モジュールを開発・発売”. 株式会社KELK. 2012年9月27日閲覧。
- ^ “熱あるところ"熱電"あり”. 梶川武信. 2012年9月27日閲覧。
- ^ “Photon Enhanced Thermionic Emission (PETE) for Solar Concentrator Systems”. STANFORD UNIVERSITY. 2012年9月27日閲覧。
熱電発電
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 01:41 UTC 版)
研究段階である。熱電素子を用いて物質の表と裏の温度差による電子の移動を電力として取り出す。原理の発見は古いものの高温に耐える材料がなく実用化は原子炉の熱を有効利用する目的で宇宙開発に限定されていた。近年適した材料が開発されマグマ発電が研究されるほか、自動車等の廃熱を利用する方法が研究されている。温度差が生じると起電力が発生する(ゼーベック効果)ため、継続して発電するには温度差を維持しなければならない。
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