こう‐せい【公正】
公正
公正
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/09 01:00 UTC 版)
分析的(合理選択)マルクス主義は、共産主義から改良主義的な社会民主主義まで左派のうちに多様な政治シンパを持っている。彼らシンパは、1980年代には、資本主義の経済的ダイナミズムとプロレタリアートの階級利害によって革命が起こるというマルクス主義の説明を,ほとんど信じなくなっていたのだが、分析的(合理選択)マルクス主義は、そんな彼らがマルクス主義を見直す契機となった。 分析的(合理選択)マルクス主義者たちは、資本主義の変革は倫理的なプロジェクト・実験(ローマー)であると、大筋で合意している。こうして1980年代、英語圏のマルクス主義研究者の間で、公正の理論にマルクス主義が貢献できるかどうかという議論が発展した。こうした動きは明らかにジョン・ロールズ『公正の理論』(1971年)以後に復活した規範的政治哲学と結びついていた。 分析的道徳哲学は、すべての利害について等しい道徳判断をするために、人はすべての状況で自由であると考えるのだが,その一方で、マルクスが、「公正」の概念をブルジョアジーのイデオロギーの産物としてしか見なかったという者もいる。「公正」の概念は、賃労働契約において資本家と労働者は対等であるとすることで、搾取を正当化しているとして、マルクス主義者たちはいまだに公正の理論について敵対的だというのである。。 しかし大抵の分析的マルクス主義者たちは、上記のような見方を否定している。先駆者としての役割を担ったコーエンであったが、分析的マルクス主義者は、マルクス主義者の公正の理論は平等主義に焦点を合わせたものでなければならないと主張する。コーエンにとって、このことは、市場交換の非公正性を証明するために道徳哲学と政治哲学を結びつけ、適当な平等主義の測定基準を作り上げることを意味する。この主張は、コーエンの最近の著作『自己所有権、自由、平等』(1995年)や『もしあなたが平等主義者ならば、なぜそんなにお金持ちなのですか?』(2000年)の中で論じられている。 コーエンは、伝統的マルクス主義者の主張とは違って、資本主義は労働者の疎外をもたらすが故に、つまり労働者としての自己実現の欠如をまねくが故に不正であるという主張を否定する。コーエンによれば、伝統的マルクス主義者のこの主張は、人間の本性と歴史発展についての受け入れがたい形而上学的な主張:すなわち、このすべての人間が、あるひとつの目的、生産的な労働者になろうとするただひとつの目的や目標を持っているという主張に基づいている。こうした主張はア・プリオリな論理的真理や経験から導き出すことは不可能であるので、分析哲学が承認する厳密な手段によっては正当化できない。 かつてのマルクス主義者とは違って、コーエンはさらに、資本主義を、不公平な搾取を特徴とするシステムとして論じる際に、労働者は雇用者によって「盗まれている」が故に搾取されているのではなく、システムの「自律性」が侵害され、その結果、利益と苦役の配分が「不公平」になってしまうが故に搾取されていると考える。伝統的なマルクス主義は、搾取と不公正は、労働者の労働によって生産された価値を、労働者以外の誰かが自分のものとするが故に生じ、どの階級も生産手段を所有せずしたがって労働者が作り出した価値をどの階級も自分のものとできない社会主義社会においては、克服されるだろうであると説明してきた。コーエンはこうした伝統的説明を支えているのは、労働者は「自己所有権」を持っているという仮定であると主張する。労働者は彼/彼女が労働を通じて生み出した価値よりも少ない賃金を支払われるために、資本家は労働者の労働から剰余価値を引き出し、つまり労働者の作り出すもの、つまり労働力の時間の一部を盗み取ると言われる。 コーエンは、自己所有権の概念は、「それぞれの人の存在や力を超えた権利」、つまり、目的として扱われるものはいつもそう扱われ、決して手段として扱われないものを保障するロールズの原理にとって有利であると主張する。それだけでなく、コーエンは、マルクス主義者の公正の説明から、正反対の立場であるロバート・ノージックのリバタリアニズムまで、自己所有権が彼らに共通の基盤を与えていることを強調する。 しかしコーエンは,人々の個人的力を,だれも優先権を主張できない外部的資源のように扱うかどでロールズを批判するのと同様に,ノージックについても,自己所有権の概念を右派に自己所有のテーゼのように過度に拡大するかどで攻撃する。 コーエンの考えでは,ノージックの間違いは,自分自身に対する所有権と同じ道徳的性質をもった,合法的に外部の資源を獲得できる権利を人々に与えることである。いいかえれば,リバタリアニズムは才能の違いや外部資源の違いから生じる不平等を許しているが,しかしそれは世界が「容易に手に入る」」ことを,つまり私的所有権として手に入ることを,前提としているが故に不平等を許すのである。
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公正
「公正」の例文・使い方・用例・文例
- 公正な,公明正大な
- 公正な選挙は民主主義の生命線である
- その金を公正に分けなさい
- 公正な扱い
- 彼は常に公正であることによって人々の信用を得た
- 公正な裁決
- 公正な裁判官
- 正々堂々と勝負する,公正な態度をとる
- 公正な人
- 公正な取り引き
- 公正マークは公正競争規約に従って表示しているので、公正マーク付きのものは安心して購入できます。
- オープンリーダーシップとは単に温かさ、友好的であること、公正さを意味するだけでなく、すぐれたリーダーとしての技能を構築し増幅するものである。
- 実績評価では、評価者は公正で合理的評価を行うため、リアクション効果を排除しなければならない。
- 米国著作権法第107条は、著作物の公正利用は著作権侵害ではないと規定している。
- 売り崩しは不公正取引のうちの一つです。
- 不当廉売は不公正な取引方法の具体的な例のうちの一つです。
- 私があなたに以前提示した金額は公正な金額だと思います。
- 360度評価の導入により、公正な人事評価制度の実現が期待できます。
- 公正証書遺言の作成や秘密証書遺言には公証人が関与します。
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