公権力の行使とは? わかりやすく解説

公権力の行使

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/17 03:36 UTC 版)

国家賠償法」の記事における「公権力の行使」の解説

ここでいう「公権力の行使」とは、国又は公共団体ここでいう公共団体とは公権力の行使をゆだねられ全ての団体を含む)の作用のうち純粋な私経済作用国家賠償法2条によって救済され営造物設置又は管理作用を除くすべて作用意味するとされる東京高等裁判所昭和56年11月13日判決広義説)。なお、公権力の行使には不作為行政指導含まれ公権力には立法権司法権例外的に含まれる余地がある。 最高裁判例では「公権力の行使とは、行政行為強制執行など国民対し命令強制する権力作用限らず純粋な私経済作用国家賠償法2条によって救済され営造物設置または管理作用を除くすべの作用意味する。」としている。(最高裁判例 昭和62年2月6日通説) 公権力の行使に関わる判例 最高裁昭和56年4月14日判決民集353号620弁護士法23条の2に基づく照会漫然と応じた政令指定都市の区長がした前科及び犯罪経歴弁護士会への報告違法な公権力の行使とした(前科照会事件 )。 最高裁昭和62年2月6日判決・集民第150号75国家賠償法1条にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師教育活動含まれる最高裁昭和60年11月21日判決民集397号1512国会議員立法行為は、立法内容憲法一義的文言違反しているにもかかわらずあえて当該立法を行うというごとき例外的な場合でない限り国家賠償法1条1項適用上、違法評価を受けるものではない。 最高裁平成9年9月9日判決民集518号3850頁国会議員国会質疑演説討論等の中でした発言につき、国の損害賠償責任肯定されるためには、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、特別の事情があることを必要とする。 最高裁昭和57年3月12日判決民集363号329裁判官がした争訟裁判につき国家賠償法1条1項規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任肯定されるためには、右裁判上訴等の訴訟法上救済方法によって是正されるべき瑕疵存在するだけでは足りず当該裁判官違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与され権限趣旨明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情があることを必要とする。 最高裁平成5年2月18日判決民集472号574頁武蔵野市マンション建築しようとする事業主に対して指導要綱に基づき教育施設負担金寄付求めた場合において、右指導要綱が、これに従わない事業主には水道給水拒否するなどの制裁措置背景として、義務課することを内容とするものであつて、右行為が行われた当時、これに従うことのできない事業主は、事実上建築等を断念せざるを得なくなつており、現に指導要綱従わない事業主建築したマンションについて、水道給水等を拒否していたなど判示事実関係の下においては、右行為は、行政指導限度超え違法な公権力の行使に当たる。 公権力の行使の不作為権限不行使)に関する判例 最高裁昭和59年3月23日判決民集385号475大日本帝国陸軍海中投棄した砲弾海岸打ち上げられ、その爆発の危険を未然防止するために必要な警察官措置懈怠違法とした(新島砲弾爆発事件)。 最高裁昭和57年1月19日判決民集36巻119他人生命又は身体危害を及ぼす蓋然性の高い者の所持するナイフについての警察官一時保管措置懈怠違法とした。 最高裁平成1年11月24日判決民集43巻10号1169頁宅地建物取引業者対す知事免許付与ないし更新宅地建物取引業法所定免許基準適合しない場合であっても知事の右行為は、右業者不正な行為により損害被った取引関係者対する関係において直ち国家賠償法1条1項にいう違法な行為に当たるものではない。 知事宅地建物取引業者対し業務停止処分ないし免許取消処分をしなかった場合であっても知事の右監督処分権限不行使は、具体事情の下において、右権限付与され趣旨目的照らして著しく不合理認められるきでない限り、右業者不正な行為により損害被った取引関係者対する関係において国家賠償法1条1項適用違法評価受けない宅建業事件)。 最高裁平成7年6月23日判決民集496号1600厚生大臣当時)が医薬品副作用による被害の発生防止するために薬事法当時上の権限行使しなかったことが、当該医薬品に関するその時点における医学的薬学知見の下において、薬事法目的及び厚生大臣付与され権限性質等に照らしその許容される限度逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、右権限不行使は、国家賠償法1条1項適用違法となる(クロロキン薬害事件、もっとも結論では厚生大臣責任否定した)。 最高裁平成16年4月27日判決・ 民集58巻4号1032頁鉱山保安法に基づく省令改正行わずさく岩機湿式型化等を一般的な保安規制とはしなかったことなど判示事実関係の下では、じん肺法成立した後、通商産業大臣当時)が鉱山保安法に基づく省令改正権限等の保安規制権限直ち行使しなかったことは、国家賠償法1条1項適用違法となる(三井鉱山じん肺訴訟)。 最高裁平成16年10月15日判決・ 民集58巻7号1802頁(関西水俣病訴訟中国残留日本人孤児 国家賠償訴訟 最高裁判所大法廷平成17年9月14日判決民集597号2087頁。国会立法行為につき「国会議員立法行為又は立法不作為は,その立法内容又は立法不作為国民憲法上保障されている権利違法に侵害するのであることが明白な場合や,国民憲法上保障されている権利行使機会確保するために所要立法措置執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず国会正当な理由なく長期わたってこれを怠る場合などには,例外的に国家賠償法1条1項適用上,違法評価を受ける。」として「国外居住していて国内市町村区域内に住所有していない日本国民に国政選挙における選挙権行使機会確保するためには,上記国民上記選挙権行使認め制度設けるなどの立法措置執ることが必要不可欠であったにもかかわらず上記国民国政選挙における投票可能にするための法律案廃案となった後,平成8年10月20日衆議院議員総選挙施行に至るまで10年上の長きわたって国会上記投票可能にするための立法措置を執らなかったことは,国家賠償法1条1項適用違法評価を受けるものというべきであり,国は,上記選挙において投票をすることができなかったことにより精神的苦痛被った上記国民対し慰謝料5000円支払義務を負う。」とした。 (在外日本人選挙権訴訟

※この「公権力の行使」の解説は、「国家賠償法」の解説の一部です。
「公権力の行使」を含む「国家賠償法」の記事については、「国家賠償法」の概要を参照ください。

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