イリジウムとは? わかりやすく解説

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イリジウム【iridium】

読み方:いりじうむ

【一】白金族元素の一。単体銀白色硬くてもろい金属で、酸に溶けにくい。白金との合金にして理化学器械電気接点などに使用元素記号Ir 原子番号77原子量192.2。

【二】Iridium米国イリジウムコミュニケーションズ社が提供する衛星電話サービス66個の低軌道衛星協調して運用する衛星コンステレーションにより、地球上のどこからでも通信が可能。1998年モトローラの子会社イリジウム社によりサービスが始まるも需要伸びず、2000年サービス停止以降事業主体変更経て2001年サービス再開2008年より現社名になった。名称は当初77(イリジウムの原子番号)個の衛星を使う予定だったことにちなむ。イリジウムシステム


イリジウム

【英】Iridium

イリジウムとは、原子番号77レアメタルである。IT用語としては、衛星携帯電話実現する人工衛星、およびそれによって提供される携帯電話サービスを指すことも多い。

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物質名
イリジウム
英語名
Iridium
元素記号
Ir
原子番号
77
分子量
192.22
発見
1804年
原子半径(Å)
1.35
融点(℃)
2457
沸点(℃)
4527
密度(g/cm3
22.5
比熱(cal/g ℃)
0.031
イオン化エネルギー(eV)
9.1
電子親和力(eV)
1.6


イリジウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/02 04:49 UTC 版)

オスミウム イリジウム 白金
Rh

Ir

Mt
77Ir
外見
銀白色
一般特性
名称, 記号, 番号 イリジウム, Ir, 77
分類 遷移金属
, 周期, ブロック 9, 6, d
原子量 192.217
電子配置 [Xe] 4f14 5d7 6s2
電子殻 2, 8, 18, 32, 15, 2(画像
物理特性
固体
密度室温付近) 22.562 g/cm3
融点での液体密度 19 g/cm3
融点 2739 K, 2466 °C, 4471 °F
沸点 4701 K, 4428 °C, 8002 °F
融解熱 41.12 kJ/mol
蒸発熱 563 kJ/mol
熱容量 (25 °C) 25.10 J/(mol·K)
蒸気圧
圧力 (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 2713 2957 3252 3614 4069 4659
原子特性
酸化数 6, 5, 4, 3, 2, 1, 0, -1, -3
電気陰性度 2.20(ポーリングの値)
イオン化エネルギー 第1: 880 kJ/mol
第2: 1600 kJ/mol
原子半径 136 pm
共有結合半径 141±6 pm
その他
結晶構造 面心立方格子構造
磁性 常磁性[1]
電気抵抗率 (20 °C) 47.1 nΩ⋅m
熱伝導率 (300 K) 147 W/(m⋅K)
熱膨張率 6.4 μm/(m⋅K)
音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(20 °C) 4825 m/s
ヤング率 528 GPa
剛性率 210 GPa
体積弾性率 320 GPa
ポアソン比 0.26
モース硬度 6.5
ビッカース硬度 1760 MPa
ブリネル硬度 1670 MPa
CAS登録番号 7439-88-5
主な同位体
詳細はイリジウムの同位体を参照
同位体 NA 半減期 DM DE (MeV) DP
188Ir syn 1.73 d ε 1.64 188Os
189Ir syn 13.2 d ε 0.532 189Os
190Ir syn 11.8 d ε 2.000 190Os
191Ir 37.3% 中性子114個で安定
192Ir syn 73.827 d β- 1.460 192Pt
ε 1.046 192Os
192m2Ir syn 241 y IT 0.161 192Ir
193Ir 62.7% 中性子116個で安定
193mIr syn 10.5 d IT 0.080 193Ir
194Ir syn 19.3 h β- 2.247 194Pt
194m2Ir syn 171 d IT ? 194Ir

イリジウム英語: iridium [ɨˈrɪdiəm])は、原子番号77の元素で、元素記号Irである。遷移元素かつ白金族元素に分類される元素の1つで、単体では白金(プラチナ)に似た金属光沢を有する。

名称

「イリジウム」という名は、その塩類が、虹のように様々な色調を示す事から、ギリシャ神話の虹の女神イリスにちなんで名付けられた[2]

所在

地球の地殻

イリジウムは白金の精錬時に得られる副産物として採取されている[3]。このためプラチナの生産量に、イリジウムの生産量も依存する。ただ、地球地殻中での濃度は0.001 ppmppb)に過ぎず[4][注釈 1]、イリジウムの1年間の採掘量は、4トン程度と少ない。このため、レアメタル(希少金属)として扱われている。

なお地殻中でも偏在が見られ、イリジウムの産出量の95パーセントを南アフリカ共和国が占めており、南アフリカ共和国のブッシュフェルトの埋蔵量は、現在知られている中で最大である。この他には、ロシアのノリリスクや、カナダのサドバリーでも採掘されており、僅かながらアメリカ合衆国でも発見されている。

その他の場所

このように地球の地殻中では希少だが、地球内部のマントルには、地殻よりも遥かに高濃度でイリジウムが含まれている。また隕石にも、より高濃度でイリジウムが含まれており、その濃度は0.5 ppm以上であるとされている。

特殊な地層中に含まれるイリジウム

恐竜絶滅に関する議論で、白亜紀古第三紀の境界の地層中に大量のイリジウムを含んだ地層であるK-Pg境界層が、しばしば登場してきた。イリジウムは、地表では非常に少ない金属であるため、これは隕石または地球の深部由来の物と判断され、これをユカタン半島への隕石の衝突を示す証拠であると言及されたり、デカン高原を形成した破局的な噴火が発生した証拠であると言及されたりしてきた。

性質

物理的性質

常温常圧で安定なイリジウムの結晶構造は、面心立方構造 (FCC)である。常温常圧におかれたイリジウムは、展延性に乏しく、非常に硬いため、加工も難しい。

常圧におけるイリジウムの融点は 2466 ℃、沸点は4428 ℃である。このように融点も高いため、そのままでは加工や成形を行う事が困難であり、一般的には粉末にしたイリジウム合金を焼結して使用する場合が多い。

イリジウム単体の密度22.562 g/cm3[5]であり、比重は全元素中で2番目に大きい[注釈 2]。かつてはイリジウム22.65 g/cm3、オスミウム22.61 g/cm3とされ、イリジウムが全元素中最大の比重とされてきたものの、計算時の原子数が間違っていたため修正された[6]

化学的性質

イリジウムの単体は、一般的なアルカリとは反応せず、常温では王水ともほとんど反応しない。せいぜい、粉末にすれば僅かに王水に溶ける程度である。常温では酸素とも反応が難く、貴金属として扱われる。このように反応性が低いため、Ir-10Al合金化する事で優れた耐酸化性能を与えられる[7]

しかしながら、高温でフッ素塩素、酸素と反応する。また、高温酸化雰囲気中では揮発性酸化物を生成する[8]。なお、イリジウムは、-1, 0, +2, +3, +4, +6価の原子価を取り得る。参考までに、酸素と化合したイリジウムで安定なのは、+4価の二酸化イリジウムである。

鉱物

イリジウムを含有した鉱石鉱物には、次のような物が見られる。

用途

2020年現在、白金との比較で、概ね2倍から2.5倍ほどと、非常に高価である。また、加工も難しいため、用途は限られてきた。

工業用

イリジウム単体や、イリジウムの合金は、その硬度や融点の高さから耐熱性耐摩耗性が求められる用途で使用される場合が多い[7]

高温耐酸化性
  • 人工のサファイア単結晶を製造するための工業用のるつぼは、非常に高い耐熱性が求められるため、イリジウムはるつぼの材料として使用され[9]、イリジウムの用途として最も一般的である。
  • 高温に曝されても酸化被膜が生成され難いため、飛行機自動車エンジンの点火プラグの電極の材料として使用される[3]
  • ロジウム (Rh)との合金は、IrRh熱電対温度計として 2100 までの計測が可能である[10][11]
耐摩耗性
  • 耐食性・耐摩耗性に優れているため、高級な万年筆のペン先の材料として、オスミウムなどと共に用いられる場合もある。
原器の材料
放射線源

宝飾用

白金の硬化のために、白金との合金の材料としてイリジウムが使用される場合が多く[12]、指輪やネックレスなどの多くの宝飾品に用いられている。

また、近年ではイリジウム単体を、結婚指輪などの材料として用いる場合もある[13]

同位体

イリジウムの安定同位体は、191Ir193Irの2核種のみで、天然に存在するイリジウムの同位体は、この2種である。

歴史

1804年にオスミウムと共にスミソン・テナント (S. Tennant) が、イリジウムも発見した[2]

脚注

注釈

  1. ^ 地球の地殻中では、オスミウムとロジウムに次ぎ、イリジウムは3番目に低濃度の元素である。
  2. ^ 密度が最大の元素はオスミウム(Os)で、その密度は、22.587 g/cm3である。

出典

  1. ^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
  2. ^ a b 桜井弘『元素111の新知識』講談社、1997年10月20日、314頁。ISBN 4-06-257192-7 
  3. ^ a b 御手洗 容子 『白金族金属の構造材料への応用』 まてりあ Vol.54 (2015) No.7 pp.339-342, doi:10.2320/materia.54.339
  4. ^ The Element Iridium”. It's Elemental. Jefferson Lab. 2016年10月1日閲覧。
  5. ^ J. W. Arblaster: Densities of Osmium and Iridium, in: Platinum Metals Review, 1989, 33, 1, S. 14–16; Volltext.
  6. ^ グレイ(2010)
  7. ^ a b 御手洗容子、村上秀之 『Ir 基合金の高温耐酸化性』 まてりあ Vol.52 (2013) No.9 p.440-444, doi:10.2320/materia.52.440
  8. ^ J. H. Carpenter: J. Less-common Met., 152(1989), 35-45., doi:10.1016/0022-5088(89)90069-6
  9. ^ イリジウムルツボ 株式会社フルヤ金属
  10. ^ 従来の約20倍の耐久性を持つ超高温用熱電』(PDF)(プレスリリース)株式会社フルヤ金属、2013年3月27日。オリジナルの2017年11月15日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/20171115143923/furuyametals.co.jp/pdf/20130327.pdf2017年11月15日閲覧 
  11. ^ 小倉秀樹 ほか、「1950℃付近におけるイリジウム-ロジウム熱電対の評価技術」 センシングフォーラム資料 31, 234-238, 2014-09-25, NAID 40020353679
  12. ^ 貴金属について”. 日本ジュエリー協会. 2017年5月1日閲覧。
  13. ^ Luxury Iridium Jewelry”. American Elements. 2017年5月1日閲覧。

参考文献

  • セオドア・グレイ 編、武井摩利 訳『世界で一番美しい元素図鑑』若林文高(監修)、創元社、2010年10月22日、176-177頁。ISBN 978-4-422-42004-2 

関連項目


イリジウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/13 01:17 UTC 版)

アベンジャーズ (2012年の映画)」の記事における「イリジウム」の解説

シェーファー保有していた、隕石含まれ反陽子作れ希少金属

※この「イリジウム」の解説は、「アベンジャーズ (2012年の映画)」の解説の一部です。
「イリジウム」を含む「アベンジャーズ (2012年の映画)」の記事については、「アベンジャーズ (2012年の映画)」の概要を参照ください。

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イリジウム

出典:『Wiktionary』 (2021/08/28 14:21 UTC 版)

名詞

イリジウム

  1. 原子番号 77元素記号 Ir金属元素原子量192.2。単体は、常温常圧では銀白色固体

語源

「虹」意味する古典ギリシア語「ἶρις (îris)」に因む。イリジウムの塩類多彩な色することから。日本語では宇田川榕菴の『舎密開宗』(1837-1847) にラテン語 iridium音写の「意利冑母/イリヂウム」の形で現れる[1][2]

発音(?)

い↗りじ↘うむ

関連語

翻訳

参照

  1. 宇田川榕菴舎密開宗巻1、1837、10ページ:
    ノ韻ヲ歩左ニ列舉シ以テ初學記誦ニ便ス。漢名譯名名ハ其下ニ嵌註シ別名ハ篇中條下に讓テ録セズ
    〔以〕伊阿冑母イヲヂウ゚ム ケルプストフ 依多母イトリウ゚ム イットル、メタール 意利冑母イリヂウ゚ム
  2. 藤原鎭男、岡本有子『舎密開宗における現代化学用語』

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