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プロテインは骨をもろくする?〜最新の研究結果を知っておこう


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 筋トレの効果を高めるには、タンパク質の摂取がとても大切になります。

 

 トレーニング後にはプロテインを飲み、帰り道にはいきなりステーキに寄っていくというルーティンが確立されるくらい、トレーニーはタンパク質を意識しています。

 

 しかし、スポーツ医学や栄養学では、これまでもタンパク質の取りすぎが骨をもろくする可能性についての議論が続いていました。

 

 そして今年1月、この議論にひとつの結論が示されたのです。

 

 「プロテインによるタンパク質の摂取が骨をもろくする証拠はない」

 

 今回は、タンパク質の摂取が骨に与える影響について考察していきましょう。

 

Table of contents



◆ タンパク質の摂取が骨をもろくするという酸性食仮説とは?

 

 なぜ、タンパク質の摂取によって骨がもろくなってしまうのでしょうか?

 

 これは「酸性食仮説」にもとづいています。

 

 骨は形成と吸収のバランスでその強度や密度が維持されます。24時間、骨形成と骨吸収を繰り返しながら、新陳代謝を図っているのです。そして骨形成に必要な栄養素がカルシウムになります。カルシウムが不足すると骨の形成と吸収のバランスが崩れ、骨吸収が多くなり、骨密度の低下や強度が弱くなるのです。

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 プロテインやステーキなどの動物性タンパク質は消化される過程で酸を生成します。この酸には体内のカルシウムを尿中に排泄する作用があります。このようなメカニズムは2000年ごろから提唱され「酸性食仮説(The acid-ash diet hypothesis)」と呼ばれています。

 

 2008年に報告されたメタアナリシスでは、酸性食の量とカルシウムの排泄量が相関していることが示されました(Fenton TR, 2008)。つまり酸性食を食べれば食べるほど、カルシウムが排泄されてしまう可能性が示唆されているのです。

 

 酸によってカルシウムが排泄されると、骨の形成と吸収のバランスが崩れ、骨がもろくなります。これがタンパク質を取りすぎると骨がもろくなると言われる根拠になっています。

 

 そこで議論になったのが、動物性タンパク質のひとつである乳清タンパク質からつくられるプロテインによる骨への影響です。プロテインによる高タンパク質の摂取が骨の形成を妨げるという意見があったのです。

 

 このような背景から、サウスダコタ州立大学のバラードらは、6ヶ月間のプロテイン摂取による骨への影響について検証しました。

 

 バラードらはトレーニング経験のない男女を被験者として、プロテインによるタンパク質補給を行うグループと同じカロリーの炭水化物を摂取するグループに分けました。プロテインを補給するグループは、通常の食事に加えて、42gのタンパク質(ホエイプロテイン)を1日2回摂取しました。

 

 6ヶ月間、プロテインによるタンパク質摂取を行い、その前後で骨形成マーカーであるIGF-1が計測されました。

 

 その結果は、これまでの仮説を覆すものでした。プロテインを摂取したグループは炭水化物を摂取したグループよりもIGF-1の値が有意に高くなることが示されたのです。

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Fig.1:Ballard TL, 2005より筆者作成

 

 IGF-1が高くなるということは、骨形成が促進されたことを意味します。プロテインによるタンパク質の過剰摂取が骨の形成を妨げないことが示唆されたのです。

 

 しかしバラードらの研究には、いくつかの不十分な点が指摘されていました。

 

 そのひとつは、被験者にトレーニング経験がなかったことです。トレーニング経験者は筋トレの効果を高めるために、通常よりもタンパク質の摂取量が多くなる傾向にあります。そのためバラードの研究では、トレーニング経験者による高タンパク質摂取が骨に与える影響についての答えを見出すことはできませんでした。

 

 また、酸性食仮説では特に骨粗鬆症との関連の高い「女性」に影響するとされています。バラードの研究では男女混合であったため、女性限定で検証する必要がありました。

 

 そして2018年1月、こられらの指摘をもとに再検証された研究結果が報告されたのです。



◆ 筋トレ女子にも影響はなし

 

 ノバ・サウスイースタン大学のホセらは、トレーニング経験者の女性を対象にプロテインによる骨への影響について検証しました。

 

 トレーニング経験のある24名の女性が被験者として集められました。被験者は高タンパク質を摂取するグループと、常食を摂取するグループに分けられました。高タンパク質グループは1日1kgあたり2.2gのタンパク質をホエイプロテインにより摂取しました。

 

 両グループともにトレーニング内容や量、日常の活動量に対しては特別な指示がなく、これまで通りのトレーニング、生活を維持するように求められました。

 

 研究は6ヶ月間つづけられ、その前後で全身の骨密度、腰部の骨密度が計測されました。その結果、両グループに骨密度の有意な差は認められなかったのです。

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Fig.2:Jose A, 2018より筆者作成

 

 この結果から、ホセらは日常からトレーニングを行っている女性においても、プロテインによる高タンパク質の摂取が骨形成を妨げることはないと示唆しています。

 

 タンパク質の1日推奨摂取量(RDA)は体重1kgあたり0.8gとされています。これに対して、トレーニング後に推奨される1日のタンパク質摂取量は1.6g/kgとされています。

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 今回のホセらの検証では、1日のタンパク質摂取量が2.2g/kgとかなり高めの設定になっています。体重55kgだと1日121gなので、かなり高い摂取量であることがわかります。このような高タンパク質の摂取でも骨密度が減少しないことを示したホセらの研究結果は、多くのトレーニーに安心を与えてくれるでしょう。

 

 プロテインによる高タンパク質の摂取が骨をもろくする証拠はないのです。

 

 

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◆ 参考論文

Fenton TR, et al. Meta-analysis of the quantity of calcium excretion associated with the net acid excretion of the modern diet under the acid-ash diet hypothesis. Am J Clin Nutr. 2008 Oct;88(4):1159-66.

Ballard TL, et al. Effect of protein supplementation during a 6-mo strength and conditioning program on insulin-like growth factor I and markers of bone turnover in young adults. Am J Clin Nutr. 2005 Jun;81(6):1442-8.

Jose A, et al. High protein consumption in trained women: bad to the bone? Journal of the International Society of Sports Nutrition 201815:6

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