アナフィラキシー
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百合/アルシュ
一泊二日の遠征から帰って一息つくと、突然手の平と足の裏が熱く腫れたようになり、全身に蕁麻疹が。
地図のようになってゆく。
蕁麻疹は過去二度
どちらも数時間で引いたので、病院に行く気はなかったが、呼吸のしずらさを感じ、タクシーで夜間外来へ。

呼吸困難とばたばた手足が浮くほどの痙攣。
突然に身体がコントロールできなくなり、空中を蹴っている自分の足を見て混乱する。
サランラップを口に巻かれているか、透明な海で溺れている状態で息ができない。
「コー」とラップの隙間まから息が漏れ、涙がこぼれる。
駄洒落先生の顔色が変わり、タンカで運ばれ呼吸器。
天井のライトを見て、死を覚悟する。
(村上春樹が一番苦しい死に方を小説で書いていたが本当だな、日本では犬猫を窒息死させているが、このやり方は
大変な罪だな)
などと、脳は考えていた。
そして、「死」の間際とは、自分が今まで考えていた暗く重たいイメージがあるとすれば、それより百分の一ほどあっさりしたものであった。

次の日、私は生きていた。
しゃかしゃかと、個室の便所を、掃除係の方が磨いている音が聴こえてくる。

病院の窓/

百合/アルシュ
一泊二日の遠征から帰って一息つくと、突然手の平と足の裏が熱く腫れたようになり、全身に蕁麻疹が。
地図のようになってゆく。
蕁麻疹は過去二度
どちらも数時間で引いたので、病院に行く気はなかったが、呼吸のしずらさを感じ、タクシーで夜間外来へ。

呼吸困難とばたばた手足が浮くほどの痙攣。
突然に身体がコントロールできなくなり、空中を蹴っている自分の足を見て混乱する。
サランラップを口に巻かれているか、透明な海で溺れている状態で息ができない。
「コー」とラップの隙間まから息が漏れ、涙がこぼれる。
駄洒落先生の顔色が変わり、タンカで運ばれ呼吸器。
天井のライトを見て、死を覚悟する。
(村上春樹が一番苦しい死に方を小説で書いていたが本当だな、日本では犬猫を窒息死させているが、このやり方は
大変な罪だな)
などと、脳は考えていた。
そして、「死」の間際とは、自分が今まで考えていた暗く重たいイメージがあるとすれば、それより百分の一ほどあっさりしたものであった。

次の日、私は生きていた。
しゃかしゃかと、個室の便所を、掃除係の方が磨いている音が聴こえてくる。

病院の窓/