ローストビーフ・サンドウィッチ
Spring garden
湯たんぽ
。
フキノトウ/Waterford/
午後のMさん/
ご自宅で色々あって何となく帰宅拒否ぎみのMさん。大正生まれの92歳だが、お元気で、お茶を呑みに来られる。
私の84で死んだ祖母のお友達で、毎週水曜日、祖母をヨガに誘って下さっていた。
生粋の京都人であり、田舎者の知らない世界を教えて下さる。
お父上は仕出し屋「川介」の暖簾を束ねていた人で、大丸や裏千家などから料理の注文をとっていた。
商売の手を広げすぎて失敗するまでは、Mさんは当時で誰もが行けない幼稚園に、ハイカラワンピースを着て通うお嬢さんであった。
「“おいでやす”、と“おこしやす”では、そこからもう込められているものが違うのよ」
京都の人は本音と建て前の使い分けがはっきりしている。
この場合は、“おこしやす”の方が上らしい。
「“もう帰るやなんて、今きはったばっかりやない、ぶぶ漬けでも食べていかはったら”
と、帰り際に言われてもな、そこで食べたら、“あつかましい人やわ”になるのよ」。
夫は激戦地ビルマから復員を果たした人で、土生姜を齧って生き延びた。
Mさんは当時の教育により、GHQを極度に恐れていた国民学校の少女だったが、敗戦の後に、ポケットにスッとガムやチョコレートを入れてもらって、
「それが、さりげなくサッと入れてくれるの。紳士だと思って、ものーすごいうれしかった。日本の兵隊なんて、逆やったら何してたかわからんて、よう主人と言うてたわ」
家で焼いたパンを出すと、食べ残した耳の所をティッシュに包んだ。
何してるのよと訊くと、
「物のない時代過ごしてきたから、わたしら食べ物捨てるなんてでけへんのよ」
幼稚園の遊びで歌ったという、忘れていた懐かしい民謡を歌った。
ー黄金虫は 金持ちだ 金蔵立てて 家立てて こどもに水あめ なめさせたー
湯たんぽ/
苺/
フキノトウ/Waterford/
午後のMさん/
ご自宅で色々あって何となく帰宅拒否ぎみのMさん。大正生まれの92歳だが、お元気で、お茶を呑みに来られる。
私の84で死んだ祖母のお友達で、毎週水曜日、祖母をヨガに誘って下さっていた。
生粋の京都人であり、田舎者の知らない世界を教えて下さる。
お父上は仕出し屋「川介」の暖簾を束ねていた人で、大丸や裏千家などから料理の注文をとっていた。
商売の手を広げすぎて失敗するまでは、Mさんは当時で誰もが行けない幼稚園に、ハイカラワンピースを着て通うお嬢さんであった。
「“おいでやす”、と“おこしやす”では、そこからもう込められているものが違うのよ」
京都の人は本音と建て前の使い分けがはっきりしている。
この場合は、“おこしやす”の方が上らしい。
「“もう帰るやなんて、今きはったばっかりやない、ぶぶ漬けでも食べていかはったら”
と、帰り際に言われてもな、そこで食べたら、“あつかましい人やわ”になるのよ」。
夫は激戦地ビルマから復員を果たした人で、土生姜を齧って生き延びた。
Mさんは当時の教育により、GHQを極度に恐れていた国民学校の少女だったが、敗戦の後に、ポケットにスッとガムやチョコレートを入れてもらって、
「それが、さりげなくサッと入れてくれるの。紳士だと思って、ものーすごいうれしかった。日本の兵隊なんて、逆やったら何してたかわからんて、よう主人と言うてたわ」
家で焼いたパンを出すと、食べ残した耳の所をティッシュに包んだ。
何してるのよと訊くと、
「物のない時代過ごしてきたから、わたしら食べ物捨てるなんてでけへんのよ」
幼稚園の遊びで歌ったという、忘れていた懐かしい民謡を歌った。
ー黄金虫は 金持ちだ 金蔵立てて 家立てて こどもに水あめ なめさせたー
湯たんぽ/
苺/