クロワッサン

ComputerHotline_-_Lune_(by)_(9).jpg 今日(2023年12月16日)の月齢は3.1である。つまり今日の月は三日月である。

ただし旧暦では昨日が11月3日で三日月と言うべきかもしれない。昨日の月齢は2.1。
月齢0を朔日にするからこうなるのだろう。


三日月は、満ち欠けする月を代表するような図像だけれど、それらで使われる月は三日月よりも太いものが多いと思う。

本当の三日月というのは、もっと細く、人によっては新月だと言いそうなぐらいである。
本当の新月は光るところのないものである。

イスラムの旗―たとえば赤新月社の旗にある月は、新月と言っているがこちらが三日月に近いように思う。(ただし向きが反対)

20231216getsureical.png redcross_img2x2.jpg


さて、クロワッサンというパンがある。
バターをパン生地に折り込んで焼き上げたサクサクしたパンである。私も大好きだ。

ただし、ちゃんとしたブーランジェリーのものでないと見掛け倒しである。
問題はそういう店のクロワッサンは高価であること(1個で食パン1斤分)。

blankimage.png

  20231216Croissant.jpg   20170507_505188.jpg

ネットやたいていの事典でパンのクロワッサンを見ると、フランス語で三日月を意味し、形状が名前の由来とされている。(というかパンに限らずcroissantは三日月と和訳している)。

であるけれど、パンのクロワッサンの形状は三日月と言うには太すぎる。三日月はもっと細いものだ(冒頭に書いたとおり)。

疑問:本当にフランス語のcroissantは三日月なのだろうか?

日本のWikipediaでクロワッサンを調べるとパンの説明が出てきて、「フランス語で三日月を意味し」とある。これでは私の疑問に答えていない。

フランスのWikipediaで調べてみた。そうすると、Phase de la Lune(月相)のページで、croissantの語が使われているのは、
  • la nouvelle lune/le premier croissant
  • le premier quartier/la lune gibbeuse croissante
  • la pleine lune/la lune gibbeuse décroissante
  • le dernier quartier/le dernier croissant
の4つ(décroissante、つまりcroissanteの反対、も一つに数えた)。
そして次の解説文がある。
le premier croissant, où la surface éclairée augmente à chaque jour jusqu'au premier quartier, dans l'hémisphère nord elle prend la forme d'une parenthèse fermante,…
最初の三日月は、照らされる表面が第1四半期まで毎日増加します。北半球では閉じ括弧の形になります…

日本語でいう三日月は、月齢3あたりの月を言うのだが、フランス語のcroissantは、新月後の第1四半期までの月をすべて指しているようだ。
であれば、パンのクロワッサンの形もフランスではクロワッサンと呼んで良いわけだ。

また
alors que la Lune est croissante, c'est-à-dire que la proportion de sa surface illuminée visible…
と、月が大きくなっていくことをcroissanteと表現している。


croissanteと語尾が-eになっている。注意すれば不思議なことではないが、lune(月)は女性名詞なので定冠詞はlaが付き、形容詞croissanteも女性形である。
ところが、三日月(面倒なのでとりあえずそうしておく)のcroissantに付く定冠詞はle、つまり男性名詞である。

つまり月一般は女性なのに、三日月など欠けている(とんがっている?)月は男性ということになる。

満月はla pleine luneだから、中心語はluneそのもので当然女性。
上弦・下弦の月はそれぞれ、la lune gibbeuse croissante・la lune gibbeuse décroissanteで、いずれもluneが主でcroissante(女性形)の形容詞が付く。


ところでcroissantの原義だが、綴りからcroire(信じる)と関連があるのだろうかなど考えたこともあったが、フランス語の語源はわからないので、いつもお世話になる英語語源辞典を見てみた。それによると、croissantの項には、crescentを見ろとある。

これでガッテンだ。crescentは、イタリア語ならきっとcrescendo(クレシェンド)、音楽用語の「だんだん大きく」である。

英語語源辞典のcrescentの項を転載しておこう。
crescent (n.)

late 14c., cressaunt, "crescent-shaped ornament," from Anglo-French cressaunt, from Old French creissant, croisant "crescent of the moon" (12c., Modern French croissant), from Latin crescentum (nominative crescens), present participle of crescere "come forth, spring up, grow, thrive, swell, increase in numbers or strength," from PIE root *ker- (2) "to grow."

Applied in Latin to the waxing moon, luna crescens, but subsequently in Latin mistaken to refer to the shape, not the stage. The original Latin sense is preserved in crescendo.

Meaning "moon's shape in its first or last quarter" is from mid-15c. in English. Meaning "small roll of bread made in the form of a crescent" is from 1886. Adjectival sense of "shaped like the crescent moon" is from c. 1600 (earlier it meant "increasing, growing," 1570s).

A badge or emblem of the Turkish sultans (probably chosen for its suggestion of "increase"); figurative sense of "Muslim political power" is from 1580s, but modern writers often falsely associate it with the Saracens of the Crusades or the Moors of Spain. Horns of the waxing moon are on the viewer's left side; those of the waning moon are on his right.

英語の語源辞典だが、フランス語の説明も入っている(英語はフランス語を大量に取り入れている)。それに従えば、月の形として使うのは誤用からとのこと。なお、イスラムが三日月を使う理由まで書いてある(推測としてあるが)。

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