マイナンバーカード実質義務化?

K10013644831_2205261720_0526172853_01_02.jpg 健康保険証を廃止して、マイナンバーカードを使った保険確認に一本化するという話が出てきた。
もちろん同時にマイナンバーカードの読み取りのためのICカードリーダーや保険照会のシステムの導入が、医療機関に義務付けられるという。

ただこの制度の受け止め方には誤解―マイナンバーと保険証を紐づけるという誤解もあるようだ。
マイナンバーカードと保険証の紐づけは以前から行われている。マイナンバーが保険証にで書いたとおりだが、その記事のときには、マイナンバーを使うのか、マイナンバーカードを使うのかわからないと書いているが、マイナンバーは使わないということがはっきりしている。

つまり、マイナンバーカードを保険証として利用する仕組みは、カードに納められている利用者認証用電子証明書(おそらくその証明書の公開鍵)を使って、それと保険証を紐づけるもので、マイナンバーは直截利用されない。また、マイナンバーカードに納められているもう一つの証明書(署名用電子証明書、e-Taxなどで申請書に署名を付すもの)も使われない。

もっともマイナンバーを使わないから問題なしとは、私は考えていない。同じ証明書に紐づけられるサービスが複数あれば、当然、それらの利用者を名寄せすることは原理的には可能になる。
それに、利用者認証用電子証明書には、誰の証明書であるかを示す情報(名前や住所、生年月日など)は記載されていない。券面情報も同時に参照するのでなければ、別人がこの証明書を使えるのではないだろうか。(実際のサービスがどうなっているかは知らない)
なお、生活保護受給者は無保険で医療を受けられるはずだから、保険証は持ってないのでは。


この誤解もあってか、マイナンバーカードの事実上の義務化であると、反対する意見も良く見る。
賛成・反対、いずれにせよ、政府は真正面からの議論を避けながら、事実上の義務化を画策し、マイナンバーカードは義務ではないというのでは、どう考えてもペテンと言わざるを得ない。

私はマイナンバーカードの義務化については、どっちでも良いと考えているのだが、もし義務化するのであれば、保険制度のようなものに乗っかるのではなく、やはり住民登録制度の上に乗っかるのが自然だと思う。以前の住基カードと同様である。

義務化するなら身分証明書として通用させることが基本だと考える。以前、知り合いの地方公務員の方が、総務省入口のセキュリティチェックで、住基カードを示したが、入れてもらえなかったと言ってたが。

そして一枚のカードでいろんなサービスを受けられるという便利さに賛同した人が、自分の意志でそのサービスの利用登録をするのが王道だと思う。

住基カードは、署名用電子証明書は納められた(任意)が、マイナンバーカードのような利用者認証用電子証明書などは入っておらず、いろんなサービスで利用しようとすると、それぞれが独自の認証機能を用意する必要があったし、住基番号と住基カードの概念区分が曖昧で、カードだけの利用でも法例整備が必要など、ハードルが高かったと思う。


政府は全国民に使わせたいらしいが、見えない(わからない)ところで行われることに対しては、恐怖心を抱くのが人情というものである。どういう仕掛けがウラで動いているのかわからないと、使用を躊躇するだろう。
それに、保険証とリンクといっても、加入保険が変更になることはそう珍しいことではない。その場合は保険者間で紐づけを変更するのだろうか。それには、保険者間で登録情報を交換する制度が用意され、かつ利用者の理解と同意が必要となるだろう。
それとも利用者の自己責任、つまり利用者があらためて利用登録するのだろうか。

政府は保険証廃止を言っているから、新しい保険加入にあたっては保険証は発行されず、保険番号の通知だけが行われることになるだろう。

一方、マイナンバーカードは、カードの紛失や有効期限(10年)と住所地変更などが発生したら無効化されるわけだが、保険証はそれで直ちに無効になるわけではない。この場合、利用者認証用電子証明書は変わるから、保険証との紐づけはやり直さなければならない。それを他人が代行することは、ポリシーとして不可である。

こうしたシステムを理解していなければ、自動で切り替わらないのとか、代りにやってとか、まごついて、保険者や市役所へ問い合わせが発生するだろう。
つまりできるだけシンプルで見通しのよい制度・システムにして、利用者が理解の上、自己責任で利用するというのが正しい姿だと思う。
さらにシンプルなシステムであれば、たとえば外国人でも同じ仕様の利用者認証用電子証明書を持っていれば、同様のサービスが受けられるだろう。あるいは証明書の有効期限(5年)では短すぎると考える人のために、マイナンバーカード共通仕様(ただし証明書の期限が長い)カードを発行することだってできる。マイナンバーカードでなければならないという法的根拠などないのだから。

思うに政府関係者は、システムはシンプルであるべきとは考えていないのではないだろうか。
だから、異常なほど高額のシステム費用や自治体などへの過剰な負担が発生するのだろう。

デジタル化の進展を、投資額で判断するなら、日本国は間違いなく世界でもトップクラスのデジタル先進国だと思う。


img_63700c8f3c3f4ed16b49848d7ecfdd96131934.jpg いずれにせよ、今ならマイナンバーカードを保険証として利用できるようにしたら、マイナポイント(7,500pt)がもらえる。義務化が始まったら、そういう恩典はなくなるかもしれない。早く登録するのが良さそうだ。

それに、マイナンバー保険証を使うと、医療費がちょっと安くなるという話(右表)もあるようだ。



【訂正】(2022.10.28)

健康保険証番号は既にマイナンバーと紐づけられている。
マイナポイントをもらうために、マイナンバーカードを保険証として利用する手続きをするとき、どこで保険番号等を入れるのだろうと思っていたのだが、そんな必要はなく、私の保険証の情報が確認できた。
となると問題は医療機関がマイナンバーを使って保険証を検索できるのか、それとも、あくまで本人の意思として、つまりマイナンバーカードを提示することで、保険証データへのアクセスが許可されるのか、ということになるのだろう。多分後者なのだろう、それがネットワールドへ入る鍵がマイナンバーカードだというポリシーに則った使い方だろうから。
であるけれど、それは国民にとってであって、肝心の行政側では名寄せができている状態であることには変わりない。それら国民の情報へのアクセスが行政組織内でどれだけきちんとコントロールされているのかという問題とは別の話。
今、いろんな公的書類にマイナンバーの記入が求められている。これらはすべて名寄せされている(やろうと思えばできる)と考えるべきだろう。
同じような申請項目をあちこちで記入させるのは、名寄せしないというタテマエを守るためか。

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