「科学捜査ケースファイル」
ヴァル・マクダーミド「科学捜査ケースファイル: 難事件はいかにして解決されたか」 (訳:久保美代子) について。
まだ途中までしか読んでいない本なのだけれど、ネットの情報サイトにおもしろい記事があったので、ちょうどこの本を読んでいて、関連する情報があるので、ほんの一部だけ紹介することにした。
そのおもしろい記事というのは、"ソ連で生まれた1100代目の「ハエ」が、なぜ注目されているのか"というもの。
有機廃棄物を「エサ」にして、ハエ(蛆虫)を育て、それから完全有機の肥料や飼料を作るというビジネスである。
「1100代目のハエ」というのは、こうした生産を行うのには過密環境などに耐えられるハエが必要で、普通のハエでは無理、品種改良を重ねて大量の蛆虫が生きていける品種をうみだしたということである。
この記事を目にしたとき、ちょうど読んでいたのが、冒頭の本。
この本に驚きの記述があった。
まだ途中までしか読んでいない本なのだけれど、ネットの情報サイトにおもしろい記事があったので、ちょうどこの本を読んでいて、関連する情報があるので、ほんの一部だけ紹介することにした。
ネットから記事が消えると、本記事もわけがわからなくなるので、急ぎアップ。
そのおもしろい記事というのは、"ソ連で生まれた1100代目の「ハエ」が、なぜ注目されているのか"というもの。
有機廃棄物を「エサ」にして、ハエ(蛆虫)を育て、それから完全有機の肥料や飼料を作るというビジネスである。
「1100代目のハエ」というのは、こうした生産を行うのには過密環境などに耐えられるハエが必要で、普通のハエでは無理、品種改良を重ねて大量の蛆虫が生きていける品種をうみだしたということである。
この記事を目にしたとき、ちょうど読んでいたのが、冒頭の本。
この本に驚きの記述があった。
…一七六七年、近代分類学の父と呼ばれるカール・リンネは、「三匹のハエが一頭の馬の死体を消費するスピードは、一頭のライオンが食べるスピードと同じである」ということに気づいた。
第3章 昆虫学)
この意味は、三匹のハエが馬の死体を食べるということではもちろんなく、三匹のハエがそれぞれ多数の卵を死体に産み付け、それが孵化して蛆虫となって死肉を食べるということで、それほど蛆虫の食欲が大きく、かつハエの繁殖速度が速いということである。
本書では、さすがにリンネの時代からは随分研究も進んでいて、各種のハエが一度に何個ぐらいの卵を産み、何日で孵化し、蛆虫がどのぐらいの食欲があり、それが最終齢に達して卵を産むまでの日数がどのぐらいで、というような基礎的なデータが、昆虫学者によって蓄積されており、これが犯罪捜査における死亡時刻の推定に役立っているということを説明している。
上の引用に続けて、
科学捜査というと「科捜研の女」、「法医学教室の事件ファイル」などのドラマでおなじみ(といってもドラマの話で、実際の科学捜査がどうなのかはわからない)だけれど、昆虫を使って死亡時刻を推定するという設定のドラマは今まで見たことがない。
本書では、解決された難事件とともに、どうも鑑定に問題があった事件も紹介されている。
また、法医学者は、事件の状況や背景を知るべきか否かも難しい問題としている。
「科捜研の女」(京都府警から表彰されたそうだ)がやっているような、あれほど徹底的な「科学捜査」がどのぐらい行われているのだろうか。
きちんと調べてくれたら私の無実は証明されると安心したいものだ。
(p.76
この意味は、三匹のハエが馬の死体を食べるということではもちろんなく、三匹のハエがそれぞれ多数の卵を死体に産み付け、それが孵化して蛆虫となって死肉を食べるということで、それほど蛆虫の食欲が大きく、かつハエの繁殖速度が速いということである。
本書では、さすがにリンネの時代からは随分研究も進んでいて、各種のハエが一度に何個ぐらいの卵を産み、何日で孵化し、蛆虫がどのぐらいの食欲があり、それが最終齢に達して卵を産むまでの日数がどのぐらいで、というような基礎的なデータが、昆虫学者によって蓄積されており、これが犯罪捜査における死亡時刻の推定に役立っているということを説明している。
上の引用に続けて、
メスのクロバエがいったん卵を産みつけると、生物学的な時計が時を刻み始める。夏の盛りだと、典型的な英国のクロバエが卵から成体になるまでには一五日かかる。一日後、卵が孵化して蛆虫になり、蛆虫は口にあるふたつの鉤状の歯で腐敗しつつある肉を切り裂いて、かき集める。蛆虫は食べる器官と呼吸する器官が体の両端に別々についているので、一日二四時間、食事と呼吸を同時に行えるのだ。蛆虫は四日間貪欲に食べ続け、もとの大きさの10倍、つまり二ミリメートルから二センチメートルへと成長する。
まるまると太った蛆虫は死体をあとにして、腐肉をあさる鳥やキツネに食べられないよう暗がりに向かう。肉の上の保育室が戸外だった場合は、地面に穴を掘り一五センチメートル下の土中に潜る。屋内だった場合は、納戸の床や床板のすき間がその役割を果たす。暗闇のなかで安心すると、蛆虫は蛹になる。三齢期、つまり最終幼齢の外皮がそのまま硬くなって蛹の殻になる。10日後、成体のハエがこの殻を破って出てきて、戸外の場合は土を掘って地上へ出てくる。この自由への前進がなかなかの離れ業なのだ。ハエは頭部の袋を血液で満たし、その風船形の槌を内側から外側へと振動させて土を除去する。地上の空気に触れると、しわくちゃの羽を振り広げ、ほぼ間をおかずに交尾を始める。二日齢で、ときにはそのハエが育った同じ死体の上で、メスは卵を産むが、蛆虫は1週間足らずで人間の死体の六〇パーセントをたいらげることがあるので、その場所には餌がたいして残っていないかもしれない。
ハエにたかられると、1週間で死体の60%が食い尽くされるということもあるということだ。まるまると太った蛆虫は死体をあとにして、腐肉をあさる鳥やキツネに食べられないよう暗がりに向かう。肉の上の保育室が戸外だった場合は、地面に穴を掘り一五センチメートル下の土中に潜る。屋内だった場合は、納戸の床や床板のすき間がその役割を果たす。暗闇のなかで安心すると、蛆虫は蛹になる。三齢期、つまり最終幼齢の外皮がそのまま硬くなって蛹の殻になる。10日後、成体のハエがこの殻を破って出てきて、戸外の場合は土を掘って地上へ出てくる。この自由への前進がなかなかの離れ業なのだ。ハエは頭部の袋を血液で満たし、その風船形の槌を内側から外側へと振動させて土を除去する。地上の空気に触れると、しわくちゃの羽を振り広げ、ほぼ間をおかずに交尾を始める。二日齢で、ときにはそのハエが育った同じ死体の上で、メスは卵を産むが、蛆虫は1週間足らずで人間の死体の六〇パーセントをたいらげることがあるので、その場所には餌がたいして残っていないかもしれない。
もちろん死体がおかれている状況によってこの数値はかなり変わるらしいので、環境の状況(温湿度など)も推定したうえで、死亡時刻が決められるという。
科学捜査というと「科捜研の女」、「法医学教室の事件ファイル」などのドラマでおなじみ(といってもドラマの話で、実際の科学捜査がどうなのかはわからない)だけれど、昆虫を使って死亡時刻を推定するという設定のドラマは今まで見たことがない。
これらのドラマの死体は、殺されてすぐか、白骨化していることが多く、腐乱死体というのはあまり出てこないように思う。茶の間向きではないからだろうか。本書でも言及されている海外のCSIシリーズ(未だ見たことない)ではどうなんだろう。
本書では、解決された難事件とともに、どうも鑑定に問題があった事件も紹介されている。
また、法医学者は、事件の状況や背景を知るべきか否かも難しい問題としている。
知っていれば予見にもとづく鑑定になるおそれがあり、知らなければ見落としが発生するおそれが大きくなる。
「科捜研の女」(京都府警から表彰されたそうだ)がやっているような、あれほど徹底的な「科学捜査」がどのぐらい行われているのだろうか。
きちんと調べてくれたら私の無実は証明されると安心したいものだ。