「ライオンはとてつもなく不味い 」

81ZRPkEj-xL.jpg 山形豪「ライオンはとてつもなく不味い 」について。

このタイトルには大いに興味がかきたてられた。
だから、内容も確認せずに、図書館の棚にあった本を借りた。

本を読む前の妄想は、

普通、われわれが食べる陸上哺乳類は草食獣である。肉食獣を食べるという話は、あまり聞いたことはない。肉食獣は不味いから人類は食用にしてこなかったのではないだろうか。それがどのぐらい不味いものなのか、それがわかるのではないだろうか……
しかし考えてみると、肉食動物でも、クジラは食べるし、哺乳類でなければワニはけっして不味くはない。
食べたことがないものでは、狸汁で有名なタヌキとか、犬(チャウチャウ種はもとは食用種だと聞いたことがある)とか、猫(書生が食べるという話を読んだことがある)とか。
そういえば、鳥類は、たいていは肉食・雑食だと思うけれど、これは不味いとはいわない。
してみると、ライオンとかは、それこそケダモノ臭くて食べられたものじゃないとでもいうのだろうか……


はじめに――フィールドでの一日
CHAPTER1 アフリカについて
CHAPTER2 動物たちは日々、生き残りを懸けている
CHAPTER3 フィールドでのサバイバル術
CHAPTER4 アフリカに命の輝きを求めて
CHAPTER5 南部アフリカに見る人間と自然との関係
おわりに――なぜアフリカで写真を撮り続けるのか
妄想はこのぐらいにして、本を開くと、あらあら、そんな話ではない。
ライオンを食べる話は、最後の最後、申し訳程度に、アフリカの人から食べてみるかと渡されたその乾燥肉を食べたというものだけだった。(そして不味いと書いてある)。

そういえば、筒井康隆氏にゾウとかを食べた話があった。氏の父君は動物園の園長で、戦争中、空襲にあって猛獣が逃げたら大変とのことで、殺処分を命じられ、猛獣を食べてみたというような話。たしか、美味いものではないとあったような。


というわけで、「期待」は大いに裏切られた本なのだけれど、それは妄想した私が悪いわけである。

小説や映画のタイトルなんか内容を直接指しているとは限らない。純朴な子供だった私は何度も裏切られている。「地球の皮を剥ぐ」って、マグマもマントルも出てこないじゃないか。


内容は、アフリカでのサファリ(写真撮影。トロフィーハンティングではない)がどのように行われているか。
著者は、アフリカに憧れてこの職業についたというわけではなく、子供の頃からアフリカで暮らしていて、むしろ日本での生活・人間関係になじめず、チャンスを活かして、アフリカや動物の写真を撮って暮らすプロになったという。
だからだろう、外から憧れるような視線ではなくて、むしろアフリカ人として、アフリカの自然を「売って」いるような印象である。
素晴らしい写真を撮って見せてくれるわけだけれど、それによってアフリカに人が押し寄せて自然が荒れるようになっても、だけどそれで潤ってもいるし、なにより動物保護事業が成り立ってもいるという、一種のジレンマも吐露している。

アフリカの動物保護区の中には、一泊百万円というような超高級ホテルがあるが、そこを出ると一日数百円の収入しかない人たちがひしめく。

もちろん本書は社会批評の本ではない。あるがままのアフリカ、動物たち、サファリを紹介している。

シャッターチャンスを長時間待ち続け、とらえた写真は見事だ。

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