2016/04/30
■これ、本当に傑作! 「死者の書」 近藤 ようこ、 折口 信夫
”した した した。”
この作品は
近藤 ようこさんの傑作
だと思います。
今回、久しぶりに
「死者の書」の原作も再読しましたので
原著の二十章の要約をしてみました。
初読のときにこういうのあったら
きっと読みやすかったと思います。
20年前の自分に教えてやりたいですね。
クリックするとAmazonに飛びます。
死者の書(上)<死者の書> (ビームコミックス)
時は八世紀半ば、平城京の都が栄えた頃。いずれ氏神に仕える者として、館の奥深くで育てられた藤原南家の娘――郎女は、ある年の春分の日の夕暮れ、荘厳な俤びとを、二上山の峰の間に見て、千部写経を発願する。一年後、千部を書き終えた郎女は、館から姿を消し、ひとり西へ向かう。郎女がたどり着いたのは、二上山のふもと、女人禁制の万法蔵院。結界破りの罪を贖うため、寺の庵に入れられた郎女は、そこで語り部の姥から、五十年前に謀反の罪で斬首された滋賀津彦と耳面刀自の話を聞かされるのだが――。第18回文化庁メディア芸術祭[マンガ部門]大賞「『五色の舟』(原作:津原泰水)」 受賞後第一作! 日本民俗学を築いた折口信夫の傑作小説を、初読四十年にしてついに漫画化。古代へと誘う魂の物語。
死者の書(下)<死者の書> (ビームコミックス)
時は八世紀半ば、奈良の都・平城京が栄えた頃。二上山の峰の間に、荘厳な俤びとの姿を見た藤原南家の娘――郎女は、館から姿を消し、女人禁制の万法蔵院に入り込む。「姫の咎は、姫が贖う」――長期の物忌みに入った郎女の元に、五十年前、謀反の罪で斬首された滋賀津彦の亡霊が現れる。その、白玉が並んだような、白い骨ばかりの指を見た郎女は――。日本民俗学の基礎を築いた折口信夫の傑作小説を、近藤ようこが初読四十年にして、宿願の漫画化。古代へと誘う魂の物語、完結の下巻。
折口 信夫の「死者の書」。
折口 信夫は
柳田國男の高弟であり、
あの時代で男色家で
詩人(釈迢空)でもあった人です。
そこらへんは
「月に吠えらんねえ」(2)にも
雰囲気、かもし出されています。
わたしは
20数年前に一度、
どうにか読み切ったことがありましたが、
まったく理解したとはいいがたいレヴェルでした。
その後、
松本正剛の千夜千冊(1)でも「死者の書」は
かなり早い時期に取り上げられていましたが、
それを読んでも私には
全然、わかりませんでした。
今回、
近藤 ようこさんがマンガ化してくれて
ようやく作品全体のイメージが
つきました。
まずは主な登場人物。
死者: 滋賀津彦 大津皇子(663~686)。二上山に葬られた。
郎女: 豊成の娘 藤原南家の郎女(いらつめ)。死者は耳面刀自と考えている。
藤原豊成(704~766): 郎女の父、横佩大臣。
藤原仲麻呂(706~764): 郎女の叔父、藤原恵美、押勝、大師。
大伴家持(718?~785): 兵部大輔、三十六歌仙。
耳面刀自(みみものとじ): 淡海公の妹、郎女の祖父の叔母。
つまり、
死者が想っている耳面刀自は、
郎女の曽祖父(ひいじいちゃん)の妹、ってこと
だと思います。
あと、余裕があれば
知っておいたほうがいい登場人物。
淡海公: 藤原不比等(659~720)。郎女の曽祖父。
藤原武智麻呂(680~737): 郎女の祖父、不比等の長子、南家の祖。
当麻(たぎま)語部姥
この作品、
どんどん視点が変わります。
以下、各章の要約です。
当ブログ管理人が勝手に作っていますので
御指摘ありましたらお願いします。
最初の第一章は死者の語り。
次の第二章は白衣の修道者。
郎女の御霊の再魂呼い。
どうやってあとにつながるのか
よくわかりませんでしたが、
コミックで初めてつながりがわかりました。
第十五章にある山尋ねが
この第二章の話を受けているのでしょう。
第三、四章は
万法蔵院の女人結界を破って境内に入った
郎女が、小さな庵に仮にとどめ置かれている。
当麻語部姥が郎女に語り始める。
第五章はふたたび死者。
第六、七章は郎女。
時系列では、第三章の前の話。
称讃浄土経を手に入れた郎女は
千部の写経を発願した。
二上山の間に荘厳な人のおもかげを見た。
そして千部の写経を終わった時、
郎女は姿を消した。
そして遠方の万法蔵院で
女人結界を破って境内に入っていたのを
見つけられた。
第八、九章は大伴家持。
いろいろともの思いにふけりながら馬上にいる。
偶然、家持は
郎女が神隠しにあったことを知る。
いきなり石垣の話されても
読んでいるほうは、わからないですよね。
第十章は石垣の話から
郎女の失踪前の話。
その天性の才能が周りの能力を追い越したとき、
予期したように父の大事な経文が出てきたり、
二十年まえの仏本伝来記が戻ってきたりした。
郎女はそれを手写した。
第十一章は郎女の
ほととぎすの話と
はすいとの話。
章の最後に
郎女が禁制を破って留め置かれている
庵をようやく家人がつきとめ、
寺の人と家人が押し問答をする。
多分、第四章の続き。
第十二章は第十一章の続き。
どんな大人も困ってしまうような事態に
郎女はきちんと答える。
姫の咎(とが)は、姫が贖(あがな)う。
身の償い、心の償いをするまで
万法蔵院の庵から動かないと決心する。
第十三章は
郎女の元に死者がしのびよる。
第十四章は
大伴家持と大師藤原恵美押勝朝臣(=藤原仲麻呂)。
それぞれのお家事情や郎女のうわさ話など。
上流階級の中年男性の
なやみ多い会話。
第十五章から最終二十章までは
郎女の話です。
第十五章は
郎女の関係者の
万法蔵院の庵での生活。
郎女は荘厳な人のおもかげを見る。
第十六章は郎女が、はすいとを作る
第十七章は郎女の姿がまた消える。
そして二子山の間に、郎女は
ふたたび荘厳な人のおもかげを見る。
第十八章は郎女が
はすいとを使って機織りをする。
蓮の糸は、すぐに切れたりしたが
郎女は聡明で、機織りを会得した。
第十九章は五反目を織りきって、
僧伽梨を縫った。
第二十章は最終章。
彩色(えのぐ)で僧伽梨に
絵を描いた。
そして、郎女はふたたび姿を消してしまう。
郎女が、筆をおいて、にこやかな笑いを、円く跪坐る此人々の背におとしながら、のどかに併し、音もなく、山田の廬堂を立ち去った刹那、心づく者は一人もなかったのである。まして、戸口に消える際に、ふりかえった姫の輝くような頬のうえに、細く伝うもののあったのを知る者の、ある訣はなかった。
(本文より引用)
周りの人に知られることなく、
そして多分、歴史からも消えてしまう。
見る人には菩薩が浮き上がってくるようだった。
以上が、ブログ管理人による
原著の簡単な各章の要約です。
20年間、読めなかったのに
近藤 ようこさんのマンガのおかげで
原作も読めました!
とても丁寧にマンガにしていると思いますし、
原作と順序が違うのも納得です。
GWにじっくりと読んでみるのは
いかがでしょう。
「死者の書」は
マンガ+原作W読みして、
かなり満足度の高い読書でした。
(1)松岡正剛の千夜千冊 143夜『死者の書』折口信夫
(2)
月に吠えらんねえ(4) (アフタヌーンコミックス)
当ブログ関連記事
■「月に吠えらんねえ(1)」清家 雪子
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2017/03/12 00:07 by 編集