民訴125条と新たな法定訴訟担当
新年に当たり、ぼちぼちIT化改正がされた民事訴訟法の新条文を整理しておこうと、一条一条再点検していたら、125条という削除されたはずの条文が復活しているのに気がついた。
第百二十五条 所有者不明土地管理命令(民法第二百六十四条の二第一項に規定する所有者不明土地管理命令をいう。以下この項及び次項において同じ。)が発せられたときは、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人(同条第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下この項及び次項において同じ。)が得た財産(以下この項及び次項において「所有者不明土地等」という。)に関する訴訟手続で当該所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。同項において同じ。)を当事者とするものは、中断する。この場合においては、所有者不明土地管理人は、訴訟手続を受け継ぐことができる。
2 所有者不明土地管理命令が取り消されたときは、所有者不明土地管理人を当事者とする所有者不明土地等に関する訴訟手続は、中断する。この場合においては、所有者不明土地等の所有者は、訴訟手続を受け継がなければならない。
3 第一項の規定は所有者不明建物管理命令(民法第二百六十四条の八第一項に規定する所有者不明建物管理命令をいう。以下この項において同じ。)が発せられた場合について、前項の規定は所有者不明建物管理命令が取り消された場合について準用する。
読めば想像できるように、所有者不明の不動産について処理を迅速化するための法律が令和になってできていて、その中で民事訴訟法も改正がされたのであった。
この条文、令和3年4月28日法律第24号(民法等の一部を改正する法律)によって制定されたもので、施行は今年の4月1日からである。
そして、この条文ができる前は、平成8年の原始規定に以下のような条文が置かれていたところ、破産法が全面改正された平成16年6月2日法律76号により削除され、破産法44条に同旨の規定が設けられていた。
(破産財団に関する訴訟手続の中断及び受継)
第百二十五条 当事者が破産の宣告を受けたときは、破産財団に関する訴訟手続は、中断する。この場合において、破産法(大正十一年法律第七十一号)の規定による受継があるまでに破産手続の解止があったときは、破産者は、当然に訴訟手続を受継する。
2 破産法の規定により破産財団に関する訴訟手続の受継があった後に破産手続の解止があったときは、訴訟手続は、中断する。この場合においては、破産者は、訴訟手続を受け継がなければならない。
従って、平成17年に破産法が施行されて以来、いわば空き地となっていた民訴125条に、所有者不明土地に関する規定が設けられたというわけである。
そして興味深いのは、この新しい125条が、所有者不明土地管理人による係属中の訴訟の受継を規定しているものだが、その前提としては所有者不明土地の真の所有者の裁判上の権利を、その法定果実も含めて、所有者不明土地管理人が行使することになっている。
つまり、所有者不明土地管理人というのは新たな法定訴訟担当者、厳密に言えば破産管財人などと同様の職務上の当事者となったわけだ。
そして、その裁判上の当事者となりうる権限を定めた規定は、やはりこの4月1日より施行される民法の改正規定にある。
(所有者不明土地等に関する訴えの取扱い)第二百六十四条の四 所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告とする。
ちなみに所有者不明土地等の管理処分権がこの所有者不明土地管理人にあることは、その前の264条の3に明文で定められている。
ということで、不勉強で知らなかったが、今年はこの点でもまた民法も民訴も変わるのだ。
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