民訴教材:職分管轄違いで移送した先で口頭弁論を開かずに却下した事例
特許庁の拒絶審決に対する取消訴訟を東京地裁に提起したところ、東京地裁が民訴16条に基づいて事件知財高裁に移送し、その移送を受けた知財高裁が審決取消の訴えの出訴期間30日を経過していることを理由に補正の余地のない不適法な訴えであるとして、民訴130条に基づいて却下判決を下した。
特許庁の審決はR2年11月14日に原告に送達され、原告はこれに対して10日後に本件審決を取消して本願についての特許査定をすべきであるとの意見書を提出していた。この意見書に対する応答を行う手続がR3年3月11日までかかったところ、その後に原告が審決取消の訴えと意見書に関する手続の却下処分取消しと特許査定をすべきとの訴訟を提起したのがR3年5月19日であった。
審決取消の訴えについては、特許法178条で東京高裁(!)の専属管轄とされているので、管轄違いであるから移送される。
そして同条3項により、30日の出訴期間があるので、上記の経過ではもはや訴え提起自体が不適法となる。
こんなことなら、どうせ却下されるなら移送しないで東京地裁が却下すればよいのではないかという疑問を持つ人もいるだろうが、本案の判断のみならず、その訴えの適法性についての判断も専属管轄裁判所が行うべきだし、仮に東京地裁が判断してしまうと、これに対する控訴が可能になってしまうので、東京高等裁判所が専属管轄裁判所とされた趣旨が実質的にも尽くされなくなるので、やはりそれは駄目ということになる。
なお、知財高裁の専属管轄ではなく東京高等裁判所の専属管轄と書かれている条文は違和感を覚えるが、知財高裁は東京高裁の特別な支部という位置づけがここに活きているのかという感慨を覚える。
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