#France の民事裁判所は結局統一はされなかったが、#民事訴訟法典 は大きく改正された
2020年1月1日より、フランスの民事裁判所の組織が大きく変わり、管轄も大きく変わったというフランス司法省のツイートを見て、さては大統一された始審裁判所ができたのかと思ったが。
実際には、日本の簡裁に当たる小審裁判所を廃止して、従来の大審裁判所を司法裁判所 Tribunal judiciaireという組織にして、小審裁判所と大審裁判所があったコミューンでは司法裁判所に一本化する。小審裁判所しかなかったところでは司法裁判所の近隣支部 chambre de proximité が近隣裁判所という名前で、1万ユーロ未満の訴額の事件などを担当する。
そして保護争訟裁判官 juge des contentieux de la protection によって、司法裁判所も近隣裁判所も成年保護事件、消費者金融、私人の過剰債務、居住用不動産の賃貸借、不法占拠者の立ち退きに関して管轄を有している。
商事裁判所、労働審判所、そして農事賃貸借同数裁判所はそれぞれ残された。
これに伴い、フランスの民事訴訟法典は、Décret n° 2019-1333 du 11 décembre 2019 réformant la procédure civile によって大改正を被った。
まず、訴え提起の方式が単純化された。とはいえ、フランス流の執行士による召喚状assignationは残るし、召喚状または申請により開始されると言っても申請は両当事者合同の申請がありうるので、あまり変わらないとも言える。→民訴法典54条〜58条
次に、仮執行宣言を原則化した。→民訴法典514条
そして大審裁判所の下での手続を全面的に、司法裁判所の下での手続に置き換え、小審裁判所に関する第2巻第2編の規定(旧827条〜852-1条)を全部削除した。ただし、条文番号は新規定も852条まであるので、853条から始まる第3編にはきれいに接合している。
従来の大審裁判所の手続の規定順序も大きく変わっているので、新旧対照表を作るのも簡単ではない。
商事裁判所の手続規定も大きく変わっている。
参加型手続も大きく変わっている。
この改正デクレは昨年12月19日に公布され、施行は1月1日から。流石に係属中の訴訟には適用されないが、それでも1月1日以降に提起される訴訟にはいきなりこの新規定が適用になる。大丈夫なんだろうか?
ともかく、第3巻以降の翻訳本は被弾最小限にとどまり、第2巻までの翻訳改訂は必須になった。
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