退職代行ADRその後
このブログで以下のような記事を書いた。
ところが先日とある宴会で聞いたところ、退職紛争解決センター「STAGE」なるサービスは止めてしまったようだ。
もっとも認証ADRの一覧ページには、まだ、今年の5月10日付け認証ADRとして株式会社アランプロダクツが掲載され、ホームページにもリンクされている。
しかし、上記のエントリに追記した「円満退職.com」のページは、現在以下の通りであった。
ドメイン名の登録者はWhois Privacy Protection Service by onamae.comにより隠されていて分からない。ついでに書いておくと、このプライバシー保護サービスの制度、法人によるドメイン名登録もプライバシーだと扱うという点で噴飯ものといってもいい。
本体のアランプロダクツのページも、それから同社のブログとしてリンクされているALAN BLOGというページも、2019年のお知らせとかエントリとかがない。更新が昨年までで止まっている。大丈夫なんだろうかというレベルだ。
ツイッターで見かけた記事「退職代行、法的にグレー 業者に交渉権なく」というのによれば、ADRではなく労働組合に衣替えということのようだ。
これもまた、制度の濫用の匂いがするが、というか退職代行が主要な機能の労働組合って実に概念矛盾な感じがする。労働組合が、その機能の延長線上に退職の条件交渉をするというのはあっても、退職させることを主目的とする労働組合って、そもそも組合員は誰なのかわからん。
で、いずれにせよ、ADRの名を借りようと労働組合と看板をつけようと、その実質が伴わなければ、報酬を得て法的紛争の一方当事者を代理することにほかならない。
なお、ADR機関が退職したい従業員と企業との間の紛争を取り持つことはもちろんあり得る。社労士団体のADRでも、また厚労省傘下のあっせん(総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談 都道府県労働局長による助言・指導 紛争調整委員会によるあっせん)も、退職をめぐるトラブルがあれば、その円満な実現に役に立つであろう。
しかし紛争には至らず、そもそも企業側が全く争っていないのに、ただ労働者の方が辞めたいというのが怖いからと言うのでは、扱ってくれないかもしれない。そうではなくて、会社側がパワハラ体質で、辞めたいのに言い出せなくなっているとか、退職したいというと損害賠償を払えといってくるとかのレベルであれば、かいけつサポートに載っている社労士ADRも、厚労省傘下の相談・あっせんも役に立つ。
あと、退職の意思表示を伝える代理業務はというと、弁護士さんがそのような依頼を受けてくれるかどうかは、費用との見合いもあって、わからないが、制度的にその種の代理業務で報酬を得ていいのは、原則として弁護士ということになっている。
| 固定リンク
「法律・裁判」カテゴリの記事
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- 民事裁判IT化:“ウェブ上でやり取り” 民事裁判デジタル化への取り組み公開(2023.11.09)
- BOOK:弁論の世紀〜古代ギリシアのもう一つの戦場(2023.02.11)
- court:裁判官弾劾裁判の傍聴(2023.02.10)
- Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか(2023.02.02)
コメント