FRANCEの司法はヨーロッパの中で劣っている par 欧州委員会、しかし日本は?
欧州委員会は、Tableau de bord de la justice 2016と題するEU加盟国の司法の比較表を、この4月に発表した。
これは2014年段階での司法の現状をEU諸国内で比較したもので、下記の記事ではその中でも司法予算、裁判官定員、弁護士数、そして訴訟にかかる期間に関してフランスが劣後していることを指摘している。
La France au bas du classement de la justice en Europe
Par Fanette Hourt
それによると、まず司法予算は、フランスがEU28カ国中14位につけていて、国民一人あたり年間24ユーロを司法に費やしているという。
ちなみにドイツは146ユーロで倍、イギリスは155ユーロ、ルクセンブルクが179ユーロである。
裁判官定員は国民10万人あたり10人で、これはEU28カ国中24位、EUの平均の半分以下である。
弁護士数も、EUの中で20位、国民10万人あたり94人である。対してイタリアは368人、スペインは291人、ドイツは202人もいるのだ。
その結果か、訴訟に要する期間はフランスが一審平均304日かかっていて、デンマークの19日、オランダの91日、スウェーデンの133日などと比較して極めて長い。
ちなみに日本は、2018年の裁判所の予算が3212億円なので、一人あたり21.4ユーロ程度となろうか(1ユーロ=125円、人口1億2000万人として)。→裁判所データブック2018
裁判官定員は、3866人(2018年予算、最高裁から簡裁まで含む)なので、国民10万人あたりにすると3.2人。フランスの約3割である。→同上
弁護士数は2018年3月段階で40066人なので、国民10万人あたり33.4人。フランスの約3分の1である。→基礎的な統計情報(弁護士白書2018年版等から抜粋)
ところが、第一審判決に要する期間は、平成31年4月の第8回迅速化報告書では9.1ヶ月(=273日)でフランスよりは速い。上記の記事では民事と刑事とを区別していないので、正確なところはわからないが、日本の刑事裁判の平均1審審理期間は3.3ヶ月なので、民刑合わせれば若干短くなるだろう。→裁判の迅速化に係る検証に関する報告書の概要
というわけで、少なくともフランスとの大雑把な比較では、裁判官・弁護士とも極めて少ない人員でありながら、また予算的にも恵まれないながら、審理期間だけは短いのが日本ということで、これを喜ぶべきか悲しむべきか、評価は難しい。
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