Court:法廷の安全と公開
仙台の被告人が警察官に切りつけた事件を契機に、法廷持ち込み所持品の検査が強化されるなど、波紋が生じている。
この記事では、東北の裁判所で特に在宅事件の被告人に対する検査が強化されていることが報じられている。
東北で検査強化の対象は被告に限られるが、東京など一部の地裁では事件前から入庁者全員を対象に検査を実施している。法曹関係者からは、過剰な警備が「開かれた法廷」の理念を損ねかねないと危惧する声も上がっている。秋田弁護士会の三浦広久会長は、身体検査について「傍聴人や証人の安全確保のために必要」と理解を示す一方、「過剰警備は裁判の公平性にも影響する」と指摘。岩手弁護士会の東海林利哉会長は「裁判員制度導入後に掲げてきた『開かれた司法』の考えに反しかねない」と警鐘を鳴らす。
被告人が切りつけ事件を起こしたからといって、被告人に限っての検査強化をするというのが少し面白いが、リスクはより一般的に、深刻なトラブル渦中にある民事の当事者にも存在するし、傍聴人だって事件関係者であれば被告人と同じかそれ以上に危険な存在が入っていても不思議はない。そもそも一般的に被告人だから危険人物というわけでもない。
リスクについては、一般的に認められる以上、一般的に手荷物検査をするのが良いと思われる。
その「一般」から法曹や裁判所の関係者を除外するかどうかは考えどころで、大抵は弁護士・関係者入り口とその他の入り口とを分けて、その他の入り口に手荷物検査ゲートを設置している。
そのやり方で良いのではないか。
飛行機の手荷物検査ゲートには少し厳重さが劣るかもしれないが、拳銃やらナイフやらの持ち込みを防ぐ程度の警備は必須というべきだ。
これまで多くの国で裁判所を訪問し、法廷傍聴もしてきたが、ノーチェックで一般人が入れるというのは記憶がない。マフィアの脅威が現実にある某国では極めて厳重で、行き先も答えさせられるくらいだったし、裁判所構内に観光名所があるパリの最高裁・高裁・地裁の裁判所では、極めて多数の観光客と傍聴人や当事者本人が一緒に荷物検査を受ける。ポーランドではそもそも関係者でないと入れてくれなかった。他方でオーストラリア、特にタスマニアでは、来てくれたことが嬉しい州最高裁事務局長さんが、アポ無しでいきなり行ったのに、法廷の中のみならず島内を自分の車で案内するというサービスぶりだったし、メルボルンでも歓迎された。
ということで、千差万別な法廷の開放ぶりだが、極めて開放的なところでも手荷物検査ゲートくらいはあった。
そういえば、ニューヨークの連邦高裁の民事法廷のある建物は、ノーチェックだったと思うが、あそこはそもそも弁護士以外の者が立ち入ることを予定していない。
結局、日本では安全神話に寄りかかって警護が甘いことは否めず、それはそれで良い社会かも知れないが、刃物くらいは誰でも持っている可能性があるので、その検査くらいはしても良い。
ただ、時として日本の手荷物検査ゲートを配置している裁判所のガードマンの態度が高圧的なのはなんとかならんのか、とは思う。警護するのは良いが、高圧的な態度で接するなら、上記記事に現れているような「開かれた裁判所」の理念に背馳する。
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