詐欺による結婚も無効ではない(France民法)
昨日のフランス民法の授業は、家族法の婚姻のところだったので色々と興味深く、面白かった。
特に教室がざわついたのは、先生が、婚姻の無効取消し事由として、自由な意思によらない婚姻を挙げ、自由な意思ではない=瑕疵のある意思として「詐欺、錯誤、暴力」による場合が考えられるけれども、詐欺による結婚は無効にはならないと言った時であった。
詐欺による結婚は無効ではない!
注)フランス法は日本法の無効と取消しに対応した区別しない。どちらもannulationであり、annulerする必要がある。無効でも無効にする行為が必要だという意味では、取消と訳した方が良いかもしれないが、nulともいうし、無効と取消しに無理に対応させるよりも、無効にも様々な程度があるという理解の方がよい。
でも当たり前でしょう、という感じで、詐欺と誘惑は区別できず、結婚を決意するのに誘惑はつきものだと。
私はとても美しいとか、世界で最も哀れな私を助けて下さいとか、フランス語で聞くとなんとなく誘惑言葉に聞こえてくるが、そういう口説き文句で結婚したとしても、それで無効にはならないというわけである。
ただし、錯誤erreurは無効事由になる。
そして、当初は人違いのようなケースしか認められなかった錯誤が、今では人格の本質的な性質qualité essensielleとか、結婚に決定的 déterninant な要素に間違いがある場合でも、無効が認められるようになってきて、法改正もされたとのことである。→フランス民法180条2項
例えば性的指向がその例になるが、ある男が相手を処女だと思っていたのに違ったから無効だと主張した裁判は、一審で請求が認められて世間を騒がしたが、控訴審であえなく棄却になったそうだ。
そうだとすると、無効事由になる間違いを引き起こした詐欺・誘惑は、やはり無効になるのではあろう。
暴力により強いられた結婚は、昨今の強制結婚を女性に対する暴力の一典型として糾弾する流れから、注目テーマではある。
日本的にいうなら、強迫による結婚だ。
親が、親の権威を振りかざして子どもに結婚を強いるのも、2006年以降はちゃんと明文で無効事由に当たるとされている。
フランス民法180条
Le mariage qui a été contracté sans le consentement libre des deux époux, ou de l'un d'eux, ne peut être attaqué que par les époux, ou par celui des deux dont le consentement n'a pas été libre, ou par le ministère public. L'exercice d'une contrainte sur les époux ou l'un d'eux, y compris par crainte révérencielle envers un ascendant, constitue un cas de nullité du mariage.S'il y a eu erreur dans la personne, ou sur des qualités essentielles de la personne, l'autre époux peut demander la nullité du mariage.
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