Franceの個人情報保護事情、CNILは守り神たりうるか
昨晩のFrance2 で放映されたCash Investigation. Données personnelles : mais à quoi sert la CNIL ?は極めて興味深い内容だった。
日本では、アメリカとEUとの個人情報域外移転に関するセーフハーバー協定が、EU裁判所によって無効とされたことをめぐって色めきだっているようだが、当のヨーロッパでも、個人情報のマーケティング利用は極めて盛んに行われ、これに対する保護は見かけほどには充分でないことが上記番組で伝えられている。
具体的には、フランスの郵便事業会社La Posteが、その子会社Mediaposteを通じて、保有している個人情報をマーケティング目的で販売したり、また宛先データや配達した先のデータを蓄積して、あるいは外部の団体や会社から購入して、要するに名簿屋商売を大規模に行っているというわけである。
色々と突っ込みどころはあるが、個人情報の収集にあたっては、もちろん本人の同意を得て行っていて、その点では合法だというのがポストや個人情報保護委員会に相当するCNIL(Commission nationale de l’informatique et des libertés)のIsabelle Falque-Pierrotin委員長の言い分である。
しかし、Mediaposteが個人情報を買い入れていた相手には、なんとUNICEFもあり、そのユニセフのサイトでは、個人情報は他に提供しないことがウェブ上に明らかにされている。にも関わらず、ユニセフからMediaposteには個人情報の提供を内容とする契約が結ばれていた。
この事実には、さすがのIsabelle Falque-Pierrotin委員長も、「それは違法の可能性があります」と答えていた。
そして番組中では、そのインタビューの行われた数日後に、Mediaposteとユニセフとの契約は打ち切られたとアナウンスされていた。
もう一つの話題は、カルフールを中心とする顧客購入データのマーケティング利用であり、Carte de fidérité、お得意先カード、要するに自社型ポイントカードと組み合わせて購入履歴を蓄積分析し、これにもとづいてターゲティング広告を打つというわけである。
ターゲティング広告は、テレビではネット上の買い物ではなかったので、アマゾンのようなものではなく、レシートの裏におすすめ商品や特定の商品の割引券を表示するというものであった。
さらに仕入先にも提供され。商品構成にも検討材料とされる。
ここでは外部への提供データが匿名化されていることの真偽や効果が問われていたが、インタビューの拒否にあっていた。
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