decision:虚偽Tweetに発信者情報開示の仮処分
東京地決平成27年9月30日
「安保法案に反対するデモで孫が死んだ」とするツイッターへの虚偽の投稿に1歳の娘の写真を転用され、肖像権を侵害されたとして、新潟市の30代夫婦が米ツイッター社側に発信者の情報開示を求めて仮処分を申し立て、東京地裁がIPアドレスなどの開示を命じる決定をしたことが13日、分かった。決定は9月30日付。代理人の斎藤裕弁護士が明らかにした。斎藤弁護士によると、インターネットに公開された顔写真を成り済まし目的で悪用し、発信者情報が開示されるのは珍しいという。
虚偽の投稿があったのは今年7月で、国会前デモに連れて行かれた孫が熱中症で死亡したとする内容。
肖像権侵害を理由として、発信者情報開示の仮処分命令を得たというところが興味深い。
名誉毀損や著作権侵害は普通にあり得るところだが、肖像権侵害というのは定型的に違法性が認められるというものでもないからである。
虚偽投稿ということが影響しているのか、あるいは他人の顔写真を公開したらすべからくプライバシー侵害で違法ということにしたのか。
参考となる裁判例として、ニコニコ生放送に関する最近の知財高裁平成24年6月14日の判決文を引用しておこう。事案は大きく異なるものの、最高裁が抽象的理由命題として判示したところを踏襲している。
人は,みだりに自己の容ぼう等を撮影されないこと及び撮影された映像をみだりに公表されないことについて法律上保護されるべき人格的利益を有するが,ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきであり,人の容ぼう等の撮影が違法と評価される場合には,その容ぼう等が撮影された映像を公表する行為も違法性を有するものと解するのが相当である(最高裁平成17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁参照)
やはり虚偽の内容のツイートで、死者として写真を勝手に使えば、この一般論に照らしても違法と判断されるのが自然かもしれない。
なお、肖像権やプライバシー権は特に濫用的に使われやすく、また素人的にも何でもかんでも肖像権と振り回しやすい権利だが、絶対的に尊重されなければならないものではなく、むしろ他人の行動の自由や公益との調整を余儀なくされる権利である。そもそも肖像権がパブリシティー権のような場合を除けば、独立して認められるべきものかどうかも疑問がないわけではない。
そのあたりを考えるには、プライバシー権・肖像権の法律実務〈第2版〉が参考になる。
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