Univ:火曜の午前は「法体系の歴史」
Histoire des systèmes juridiques
ポワチエ大学で、Master1、昔のメトリズ、日本の大学で言えば四年生と修士一年の位置づけで、F. Rideau先生とE. Gojosso先生とが共同で行うこの授業、そもそも科目名の訳し方も難しいが、一応、法体系の歴史というところであろうか、色々と変わった授業であった。
まず、二人の先生の分担が、前半と後半という形で別れておらず、10回中5回は火曜日の午前中の9時から10時までがリドー先生、11時から12時15分までゴジョソ先生、後半5回は逆の担当で、それぞれ15時間づつ担当ということである。
また、リドー先生は配布物なしプレゼンもなしで話を進め、ただ重要な点は何回も繰り返して話し、その合間にやや早口で補足説明や例示を挟むスタイルだし、ゴジョソ先生はパワーポイントのプレゼンを使いつつ流暢に話を進めるタイプである。
内容は、西洋法体系がいかにして他の世界に継受されていったかという話であり、具体的にはスペイン法の中米への移植、フランス法のインドシナ等への移植、そして西洋法の日本への移植が取り上げられる。
広い意味では比較法の一部だが、法制史でもある。
今日は第1回だったので、リドー先生が総論的な話をした。
なかなか幅広な総論で、項目で表すと以下のようなお話であった。
法体系 Système juridique とは何か
法系 famille de droit とは何か
この授業の問題提起
強制に基づく法の移植・文明化(植民地化による)
受容による法の移植・文明化(例は日本)
そのインパクトとその後
法移植の現象
植民地への法の移植のように、基本的に強制によるが、強制だけではうまくいかないことについて
慣習との比較
自然法概念からの観察と正当化
特にトマス・アキナス
キリスト教普及との関係で、また普遍主義の関係で、法の移植が正当化される。
次回以降は、三部構成で話が進む。
1 征服前の社会と法の状況
中米の状況については予習してこいという。
2 征服の正当化方法、法の適用と制度化
3 征服後の受容と抵抗、そして現在の状況
次いで、ゴジョソ先生のパートでは、主に仏領インドシナへのフランス法移植過程がテーマであった。
前提知識として、世界の植民地を持った征服国を一覧。その中にはアメリカのフィリピンや日本の韓国・満州国もあり、必ずしも西洋諸国だけではないと指摘された。
またフランスの植民地獲得過程およびインドシナ植民地化の過程も前提的歴史知識として紹介された。
興味深かったのは、植民地化の動機ないし理由の説明であり、以下の五つをあげる。
1 経済的理由
原料入手や市場確保、投資対象として
2 移民のため
3 人道的理由
植民地の文明化と住民の救済
4 政治的支配力
5 宗教的理由
主にキリスト教布教
このうち5は、3の一部といっても良いかもしれない。ポルトガルの植民地獲得がその典型例だという。
そしてフランスにとって、いうまでもなく経済的理由が大きいところだが、第三共和制の下での左翼政治家だったJules Ferryなどの議会演説を引用し、特に左翼にとっての植民地政策正当化の論理が、未開文明の開化であり、人道的な行為であること、演説の文言を引くなら優等民族による劣等民族の救済という点にあったと指摘された。
こうした考え方にはナチズムにも共通するものがあるとの指摘もなされていた。
日本で最近幅を効かせるようになった大陸進出の正当化の論理を思い出さざるを得ない話である。
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