constitution:法制局が憲法の番人であることを自ら捨てた日
内閣法制局の法令審査というのは、法情報学的には、あるいは立法学的には重要な項目であるのだが、それだけに以下のニュースはショッキングといってもよい。
集団的自衛権:憲法解釈変更 法制局、経緯公文書残さず 審査依頼、翌日回答
法制局によると、解釈変更を巡り閣議前日の昨年6月30日、内閣官房の国家安全保障局から審査のために閣議決定案文を受領。閣議当日の翌7月1日には憲法解釈を担当する第1部の担当参事官が「意見はない」と国家安全保障局の担当者に電話で伝えた。横畠裕介長官は今年6月の参院外交防衛委員会で、解釈変更を「法制局内で議論した」と答弁。衆院平和安全法制特別委では「局内に反対意見はなかったか」と問われ「ありません」と答弁した。法制局によると今回の件で文書として保存しているのは、安倍晋三首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の資料▽安保法制に関する与党協議会の資料▽閣議決定の案文−−の3種類のみで、横畠氏の答弁を裏付ける記録はない。
「集団的自衛権行使は憲法上許されない」とする1972年の政府見解では、少なくとも長官以下幹部の決裁を経て決定されたことを示す文書が局内に残る。法制局が審査を行う場合、原則としてまず法制局参事官が内閣や省庁の担当者と直接協議し、文書を残すという。しかし、今回の場合、72年政府見解のケースのように参事官レベルから時間をかけて審査したことを示す文書はない。
いかにでたらめな経緯で憲法解釈の変更が行われたのかということが如実に示されたニュースである。
憲法解釈にかぎらず、「立法の中枢 知られざる官庁・内閣法制局」と言われるような権威を自ら作り上げてきたのだが、40年間積み上げてきた憲法解釈とともに、その権威も捨ててしまったと言わざるをえない。
憲法を守るという意味での「不断の努力」を求められている国民としては、その道具の一つがいかに脆いものであったかを改めて感じさせられる。
この元長官の出された本は、まだ読んでいないが、帰ったら読んでおく必要がありそうだ。その頃にはもう意味が無いということになっていないと良いのだが。
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