FRANCE滞在許可を得るまで
わずか一年の留学(在外研究)なのだが、ノービザでは3ヶ月しか滞在できないので、やむを得ず滞在許可を受けることとした。
パリに行った江下さんの経験とは微妙にずれるが、私の22年前の思い出に比べると、やはり同様に極めて簡略化されたように感じている。→《研究関係》研究者のためのフランス長期滞在(1)
研究者のための滞在ビザについては、フランス大使館のサイトに懇切丁寧な説明があり、これもまた助かった。22年前は、地球の歩き方の姉妹版である地球の学び方(だったかな?)というシリーズの記載が頼りだったし、フランス大使館の窓口に行って初めて手続の詳細を教えてもらった(それも怒られながら)という人を間近に見ていたので、今回は拍子抜けするくらい親切な感じである。
→フランス大使館・ビザ申請手続
ビザ申請に必要な書類は上記のサイトの中のビザ申請書・用紙 - Formulaires de demandeというページに詳しい。
これによると、研究者として滞在ビザを得るには、「Formulaire de demande de visa long séjour / 長期滞在ビザ申請書」と、「Formulaire OFII / フランス移民局申請書」、そして「Convention d’accueil pour scientifique / 研究者向けの受入協定書」が必要である。
このうち、OFIIというのは、l’Office français de l’immigration et de l’intégrationの略で、最終的に滞在許可証を出してくれる役所だ。
またConvention d’accueilというのは、フランス語の原語を見れば分かりやすいが、カタカナで「コンバンション・ダキュイ」とか書かれると、どうも何のことやらわからなくなるので注意だ。
ともあれ初めは、客員研究員として受け入れてもらう大学に、このコンバンション・ダキュイ、すなわち受入証明書を書いてもらう必要がある。その書式は上記サイトにPDFで載っているので、任意の様式のインビテーションレターとは全く別である。
さて、コンバンション・ダキュイは、大学だけの処理で出してくれるわけではなく、大学から移民局のサインを貰って完成させる必要のある書類なので、大学が迅速に処理してくれても移民局で時間がかかる。大学自体がゆっくりしていれば、二、三ヶ月は軽くかかるので、早めに大学に作成を依頼する必要がある。今回は大学が極めて迅速に行なってくれたので、二ヶ月はかからなかったが、結構ぎりぎりになってしまった。
コンバンション・ダキュイが手元に届くと、次の課題は、上記のサイトからビザ申請の予約をすることであり、オンラインでのみ手続ができる。
試しに今、クリックしてみたのが上記画像で、6月5日からだと11日か15日以降かしかないことが分かる。申し込んで翌日すぐできるかと思っていた私は、ここでも打ちのめされて焦った。
ともあれ、予約をした当日には、時間に遅れないように大使館の横のビザ申請窓口に行き、必要書類を全て揃えて、パスポートも忘れないようにして、待っている必要があった。
そして窓口の方は、極めて親切であったのが、22年前との違いでもある。
ちなみに、長期ビザの料金は99ユーロということだ。
申請から1週間から10日程度でビザは降りる。これを取りに行くのは、予約はいらない。進捗状況のページがあるので、それで確認してから、大使館に取りに行けばよい。
無事ビザのシールが貼られたパスポートでフランスに入国すると、次は移民局の手続が待っている。
上記のビザ申請書類の中にあった「Formulaire OFII / フランス移民局申請書」に住所や電話番号を記入し、これを移民局に郵送する。この時に料金は不要で、小切手を同封する必要はないので、銀行口座を開いてからという必要はなかった。
ただし、住所と電話番号は記入する必要があり、移民局からの書類の宛先にもなるので、フランスで少なくとも3ヶ月以上は住む住所が固まっている必要はあった。そのためには結局銀行口座を開いて小切手により敷金などを支払う必要がある。不動産屋は現金を受け取ってくれなかったから。もっとも銀行振込も可能ではあったので、銀行口座を開く必要が絶対あるかと言われれば、絶対ではなかったが。
移民局への郵送は、配達証明付き書留郵便にした。ここは普通郵便でも良いということだが、一応念のため。
すぐに配達証明は戻ってきた。そして数日後に、書類を受領したという証明書が送られてきた。このOFII発行の書類受領証明書は、3ヶ月以内にシェンゲン協定外の国に出国して再入国する際に必要との事だった。もっとも、私はその間に日本に1回、トルコに1回、行って戻ってきたのだが、いずれも入国審査では見てもくれなかった。
書類を受領したという証明書が来てから、しばらくして、滞在許可証を発行する日を指定した呼出状が郵送されてきた。Convocationである。
このConvocationには、まずビザの申請書類についていた手続の日本語説明で必要だとされている健康診断について、Convocation自体には必要書類として書かれていたのだが、それに添付されたNote d'informationには、健康診断の部分に線が引かれて抹消してあった。これでは必要なのか、必要がないのか、分からない。
それに日本語説明では、移民局のオフィスで健康診断をやるように書かれている。これはパリではそうだったようだ。しかし、呼出状には必要書類に健康診断書が記載されていて、健康診断に呼び出すというものではなかった。
途方に暮れた私は、恐る恐る移民局のオフィスに電話をして確認した。すると、科学研究者の場合には健康診断は必要なくなったとのことである。法律の研究者も科学研究者に入れてもらっているらしい。
かくして、移民局へ持っていくべき書類は、パスポートと、呼出状、住居の証明、顔写真、そして滞在許可料241ユーロの印紙である。
(印紙はオンラインサイトでの納付に代えられるとの情報があったが、呼出状には、そのULRが書かれていた部分に抹消線が引かれていて、印紙をどうしても持ってこいということであった。
大学近くのタバコ屋のおばさんに241ユーロ二人分はあるかと聞いて、そんなにないと言われたが、数えてみたらあったので、一件のタバコ屋で用事が済んでラッキーであった。)
住居の証明は、家賃や電気ガスなどの請求書か固定電話の請求書とあったが、家賃も電気も固定電話も全部オンライン請求書なので、紙は来ない。仕方がないので、賃貸借契約書をスキャンして、自宅でプリントアウトしたものを持っていった。自宅近くのコピー機が紙詰まりで使えなかったのだ。
(追記:オンライン領収書でもプリントアウトしたものを持っていけばOKという指摘があった。成程。)
以上の書類を揃えて、呼出しのあった日時の13時45分の5分前に行ったところ、既にたくさんの申請者が会議室のようなところで待っている。
しかし、受付で私の書類を確認してもらうと、会議室ではなく個室の担当官のところに呼ばれ、フランス語が喋れるかと聞くから「ちょっとだけね」と答えると、後はほとんど無言で書類のチェックを行い、パスポートにシールを貼ってもらい、警察にはこれで証明になるし、シェンゲン協定国内ならビザ無しで行けるからと英語で説明してもらって解放された。
| 固定リンク
「フランス法事情」カテゴリの記事
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- フランス判決オープンデータ(ベータ版)(2023.02.22)
- 数字で見るフランス行政裁判所の2022年(2023.02.01)
- Book:フランス7つの謎(2022.11.04)
- ポワチエの新裁判所見聞(2022.09.14)
コメント