arret:民訴教材・裁判の追加判決および判決取消しを求める訴えの適否
事案は全くわからないのだが、以下のように判示されている。理解の便宜のため、番号を付し、また段落も引用者が分けている。
当裁判所も,本件訴えは,民事訴訟の形式で前訴(東京地裁平成26年(ワ)第16717号事件)の追加判決を求めるものであって不適法であり,かつ,その不備を補正することができないものであるから,(1)口頭弁論を経ずに本訴えを却下した原判決の判断は正当なものとして是認できると判断する。その理由は原判決の第2記載のとおりであるから,これを引用する。
(なお,本件訴えが,東京地裁平成26年(ワ)第16717号事件の追加判決,平成25年(ワ)第29155号事件及び平成26年(行ウ)第98号事件の判決の取消しを求めるものと解した場合であっても,
(2) 本件訴えは,不適法であり,かつ,その不備を補正することができないものであるから,口頭弁論を経ずに本件訴えを却下した原判決の判断は正当なものとして是認できると判断する。
なぜなら,民事訴訟法及び行政事件訴訟法は,(3)判決の脱漏があった場合は,当該事件の係属している裁判所に追加判決の申立てをすること,
また,(4)法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与した場合は,当該判決に対する上訴により是正をすることを予定しており,
新たに国を被告とする民事訴訟を提起するという形式により追加判決及び判決の取消しを求めることは,不適法というべきだからである。)
民訴教材となると思われる部分は、以下の通り。
まず、口頭弁論を経ないで訴え却下判決を下しても良いという(1)(2)の部分だが、民事訴訟の諸原則である口頭主義に対する例外である。根拠条文は民訴法140条。学生・受験生の諸君がしばしば訴え却下の根拠条文として引用しているが、それは間違いで、口頭弁論を経ない訴え却下の根拠条文なのである。
(口頭弁論を経ない訴えの却下)第百四十条 訴えが不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えを却下することができる。
次に、(3)裁判の脱漏があった場合の処置だが、この訴えのように追加判決を求めて訴え提起をすれば、二重起訴禁止にも触れることになるだろう。というのも、判決文が書いているように、脱漏部分はまだ係属しているはずだからである。
(裁判の脱漏)第二百五十八条 裁判所が請求の一部について裁判を脱漏したときは、訴訟は、その請求の部分については、なおその裁判所に係属する。
(4)の法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与した場合というのも、法律は以下の条文を定めており、なぜわざわざ別訴を提起するのか疑問である。
(上告の理由)第三百十二条 上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。
2 上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第四号に掲げる事由については、第三十四条第二項(第五十九条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。
一 (略)
二 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
というわけで、基本的な条文の具体例として。
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