constitution:憲法関連の覚えておきたい事柄
5月の憲法記念日をはさみ,今年は憲法をめぐり,例年に増して盛んな論議が取り交わされていたように感じます。主に新聞紙上でこうした論議に触れながら,かつて,あきる野市の五日市を訪れた時,郷土館で見せて頂いた「五日市憲法草案」のことをしきりに思い出しておりました。明治憲法の公布(明治22年)に先立ち,地域の小学校の教員,地主や農民が,寄り合い,討議を重ねて書き上げた民間の憲法草案で,基本的人権の尊重や教育の自由の保障及び教育を受ける義務,法の下の平等,更に言論の自由,信教の自由など,204条が書かれており,地方自治権等についても記されています。当時これに類する民間の憲法草案が,日本各地の少なくとも40数か所で作られていたと聞きましたが,近代日本の黎明期に生きた人々の,政治参加への強い意欲や,自国の未来にかけた熱い願いに触れ,深い感銘を覚えたことでした。長い鎖国を経た19世紀末の日本で,市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして,世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います。
平成25年のお誕生日の折の文書回答
この皇后陛下の感銘を受けたという憲法草案は、あきる野市のデジタルライブラリーで見ることができるので、一読してみよう。
明治という時代を前提にしてみると、そのリベラルな内容には驚かされる。
時代は下って日本国憲法が出来る過程でも、もちろん民間の憲法草案はあった。
その中で、GHQ草案に影響を与えたと言われているのが憲法研究会草案要綱。
国立国会図書館のページに以下のような説明が付けられている。
憲法研究会は、1945(昭和20)年10月29日、日本文化人連盟創立準備会の折に、高野岩三郎の提案により、民間での憲法制定の準備・研究を目的として結成された。事務局を憲法史研究者の鈴木安蔵が担当し、他に杉森孝次郎、森戸辰男、岩淵辰雄等が参加した。研究会内での討議をもとに、鈴木が第一案から第三案(最終案)を作成して、12月26日に「憲法草案要綱」として、同会から内閣へ届け、記者団に発表した。また、GHQには英語の話せる杉森が持参した。同要綱の冒頭の根本原則では、「統治権ハ国民ヨリ発ス」として天皇の統治権を否定、国民主権の原則を採用する一方、天皇は「国家的儀礼ヲ司ル」として天皇制の存続を認めた。また人権規定においては、留保が付されることはなく、具体的な社会権、生存権が規定されている。
なお、この要綱には、GHQが強い関心を示し、通訳・翻訳部(ATIS)がこれを翻訳するとともに、民政局のラウエル中佐から参謀長あてに、その内容につき詳細な検討を加えた文書が提出されている。また、政治顧問部のアチソンから国務長官へも報告されている。
このテキストも見られる。
これまた、今の憲法とはずいぶん趣が違うが、戦前の軍部暴発に懲りた統治体制や人権規定が伺えて、興味深い。
大審院の院長や行政裁判所長、検事総長は「公選」とあるのも面白い。
それから憲法関連ではベアテ・シロタ・ゴードンさんも忘れることができない。
そのインタビュー記事では、憲法制定過程の様々な場面が語られてきている。
憲法記念日に続くGWには、これらを改めて読み返して、憲法を改正するにせよしないにせよ、参考とするとよい。
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