jugement:予備校本に著作物性なし
LECが司法書士受験講座のために講師に作らせたテキストが、その講師が独立して自分の予備校をウェブ主体で作ったときに流用したとして、著作権侵害を理由とする訴えを提起したが、著作物としての思想又は感情を創作的に表現したものではないとして請求棄却となった事例。
被告は、判決文に記載されているURLによれば、小泉司法書士予備校(http://shihoshoshi-school.net)らしい。
しかし、勝者は誰なのであろうか?
形式的にはLECの請求棄却で被告・小泉氏が全面勝訴しているが、LECのテキストを、著作権譲渡契約を結んでおきながら、いわばパクって自分の予備校テキストにしたという事実が前提とされている上、民法のテキストで著作権侵害を認めなかった前訴判決が確定しているから、不動産登記法に関する今回の訴訟は信義則違反の蒸し返しだと主張して一蹴されている。
被告は平成10年の一部請求棄却後の残額請求を信義則違反とした最高裁判決を持ち出すが、これについて判決は「被告は,同判決を曲解しているというほかはない」とまで言われている。
さらに、小泉氏の作成したテキストは、その全部がLECの教科書の丸写しなのかどうか分からないが、少なくともLECの教科書に「思想又は感情を創作的に表現したもの」としての著作物性が認められないとすれば、小泉氏の教材も同様で、誰かにパクられても文句は言えないということになりそうである。現物を見てもいないので、断定はできないが。
そもそも、このように解さないと、「ある者が実務の流れに沿って当該手続を説明した後は,他の者が同じ手続の流れ等を実際の実務に従って説明すること自体を禁じることになりかねない」というレベルだと言うのである。
これでは、被告にとっても歓迎すべからざる事態なのではなかろうか?
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