privacy:今、個人情報回りが面白い
個人情報保護法が改正されようとしている。
もともとこの法律は、個人情報利用適正化法とでも言うべき内容で、つまり保護対象の方ではなく使う方の顔を見て作られた法律であった。そのことは、情報主体たる本人に何らの権利も付与していないと解釈するのが通説化していることからも伺われる。
そうした法律だが、ビッグデータと称するネットの利用履歴とか、各種のカメラ、センサー、GPS端末の軌跡など、個々人の動向を様々に記録しているデータをビジネスに利活用するためには、個人を識別できる・容易に識別できるデータの利用を制限しているのがじゃまになったということで、さらに利用を促進するための法改正が進められてきた。
その改正の方向がようやくまとまったというのが昨日のニュースである。
個人情報保護法 改正案まとまる
名前や住所、生年月日に加えて、顔を識別するデータなどを個人情報として明確に位置づけたうえで、こうした情報を、事業者が、個人が特定されないように加工すれば本人の同意がなくても第三者に提供できるとしています。また、プライバシーの保護を強化するため、データが適切に管理されているか検証する第三者機関を内閣府の外局として設け、事業者への指導や立ち入り検査を行う権限を与えるほか、事業者らが不正な目的で情報を漏らすなどした場合の罰則を設けるとしています。
一方、去年まとまった骨子にはあった、事前に本人に通知しておけば、個人情報の利用目的を変更することができるという規定は、プライバシー保護の観点から問題があるとして改正案には盛り込まれませんでした。
その一方で、個人情報ないしプライバシーに関わる以下のニュースが注目だ。
万引き犯の画像 被害未然防止へ共有検討
NPO法人「全国万引犯罪防止機構」というところが、防犯カメラに写った万引き犯の画像をさまざまな店の間で共有できるデータベースの構築を目指して、具体的な検討を始めるという。
この団体では、防犯目的であれば「画像を共有すること自体はプライバシーの侵害にあたらない」というのである。
しかし、基本的に映像から万引き犯と断定するところに危うさはないのか? 単なる挙動不審が犯罪者扱いされることに繋がるのではないのか、そしてそもそも前科情報はプライバシーとして保護されていることとのバランスを考えてみても、民間とはいえ、上記のような取り組みは防犯に役立つように使えば使うほど、あらぬ疑いをかけるケースが不可避的についてまわるように思われる。
他方、もっとアナログな世界の話だが、以下の様なニュースも注目だ。
<女児誘拐未遂容疑>逮捕の巡査「巡回連絡カード」悪用か
警官が「巡回連絡カード」というのを使い、事件・事故が発生したり、迷子を保護したりした緊急時に家族への連絡に役立てると説明し、家族全員の氏名、生年月日、勤務先、学校名などを記入させていることは、日本社会の住民なら周知のことである。
そしてお巡りさんに対する絶大な信頼を背景に、まあ大体断らないのが通常だと思うが、これを悪用して、父親の知り合いを装って女の子に声をかけて連れ去ろうとしたというのである。
警官でも盗みを働く奴、盗撮や痴漢をする奴、飲酒運転する奴など後を絶たないので、女の子を誘拐する奴がいても不思議はないのだが、その手口が警察への信頼を基礎として成り立っている情報収集の悪用に及んでは、個人的な不始末では済まないであろう。
ということで、プライバシーや個人情報保護の動向はこれからますます面白くなりそうである。
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