« France:2月7日土曜日は政治書籍の日 | トップページ | amazonのバレンタイン特集 »

2015/02/04

law:作家を侮辱する書き込みをしたら、賠償請求された事例

SLAPP訴訟だという記事が目に止まった。
民訴教材としては、中々面白いのではないかと思う。

「SLAPP訴訟に納得いかない!」作家への悪口書き込みで賠償請求された50代男性

東京都に住む谷口智彦さん(仮名・50代、自営業)もそんな経験の持ち主だ。Facebook上で、作家として活動している面識のない自身の出身高校の後輩の悪口や、揶揄する内容を書いた。ただし名指しすると訴えられる可能性があると思ったので、それとなくぼやかした。

具体的には、フェイスブックに作家が書いた作品中の文章やTwitterでの書き込みをコピペし、「自称・作家様が偉そうにモノを言っているがこいつの言っていることは間違いだ。取材もせず、想像、思い込みで書いている節がある」などと書き込んだ。
すると、「ホント、取材もせずに想像で書いているポンコツ作家だよね」「(作家が)バカじゃん」「こいつの本、買う価値ないね」とのコメントが数多く寄せられて満足だったが、1ヶ月ほどして勤務先に内容証明郵便が届き、それには代理人弁護士が5名付いて以下のように書かれていた。

貴殿が○月○日にFacebook上で書き込みを行った内容は通知人の作家としての信用性を著しく下げる刑法及び民法上の名誉毀損行為である。同様に通知人が運営するTwitter上の書き込みを転載し真実ではない内容の事実を提示する行為もまた名誉毀損に該当する。

 また通知人の商業出版作品の記事を無断掲載する行為は著作権法上問題のある行為であり、通知人への著しい権利侵害である。よって貴殿に1500万円の損害賠償請求を求めるものである。本状到着後7日以内に当職までご連絡を頂けますようお願い申し上げます。なお、通知人に直接連絡を取る行為、自宅などへの訪問は控えて頂けますよう重ねてお願い致します。

 同時に簡易書留で、上記内容証明郵便と同様の文書と、さらに甲1号証、甲2号証の判が押された谷口さんが書き込んだ書き込み、タレントや芸能人ならば名誉毀損も重くなるといった「関連書籍」のコピーなど10点程度の“証拠”が送られてきた。

驚いた谷口さんは、自身も弁護士に相談して相手方弁護士と交渉してもらったが、正式受任していないということでは相手にしてもらえず、正式受任するには費用がかかるということだった。

「正式に弁護士を代理人とした示談交渉となると損害賠償額1500万円なので、ざっと着手金で50万、示談交渉後には成功報酬で70万円の費用がかかります。示談がうまく行かなければ本訴訟になり更に費用が嵩みます。どうされますか?」

わざと高額の慰謝料をふっかけて、弁護士に依頼すると高額の着手金が設定されるようにする嫌がらせだというのがその弁護士の説明だ。

以上が記事の内容だが、ざっと以下の様な論点、というか勉強すべきポイントがある。

1. そもそも名誉毀損とは、本件のような書き込みはどのような意味で名誉毀損になるとされるのか、また相手の社会的評価を下げることになっても許される言論とはどういう場合があって、この場合はそれに当たらないのか。

2. FBで同調してポンコツ作家とか書き込んだ奴も同罪? あるいはRTして広めた奴も同罪?
(注:同罪とは通俗的な意味)

3. 憲法には表現の自由があるはずだ。相手は有名な作家なんだし、こいつの書いたものを批判して責任が問われるなんて、憲法違反じゃね?

4. 著作権侵害だと言われているが、どういうこと?
ネット上の書き込みを部分的にコピペして著作権侵害とかになるのか?
またこれも、例えばRTした奴も同罪なのか?

5. 1500万円の賠償って高くない? 普通はどれくらいなのか? 高額の賠償が認められるケースはどんなものがある?

6. SLAPP訴訟って何?
 そもそも訴えを起こすことで被告にダメージが生じることはいつものことだけど、それが法的に許されないという場合はあるのか?

7. 嫌がらせの訴訟を起こされてやむを得ず弁護士に依頼したら、弁護士費用はどうやって決められるのか。
仮に相手に勝つことができたら、その費用は相手から取れるの?

8. カネがない谷口さん、弁護士に依頼することは出来ないとすれば、相手の言いなりになるしかないの? 

9. 弁護士以外の、もっと安い代理人を頼んだりすればいいんじゃないか?

10. そもそも自分で訴訟って出来ないのか?
 自分で相手の訴えに対抗するとしたら、何をどうすれば良くて、費用はどれくらいかかるものなのか?

11. なんとか穏便に済ませたい谷口さんだが、裁判以外に解決する手段はないの?

12. 仮に30万円を払うことで、裁判以外で話がまとまったとすると、その約束を破ったら給料差押えとかされて30万円を強制的に取られてしまうのだろうか?

13. 証拠書類が同封されてきたけど、名誉毀損の立証ってどうやるの? 甲○号証とかいって書き込みのコピーとか、書籍のコピーとかがあるけど、裁判でそんな書き込みは知らない、改ざんされているって言うことは出来ないの? 大体書籍ってなんの関係があるの?

14. 金もなく、返事もしないまま裁判が始まってしまった。でも裁判所って怖いし、反論を出せとかいた通知が来たけど、どうすりゃいいかわからない。放置しておいたらどうなる?

15. 結局1500万円を利息付きで払えという判決が出てしまった。谷口さんにはほかにも借金あるし、金は全くない。どうなるの? マグロ船に乗せられるの? それとも誰か、助けてくれるのかな。
 もし助けてくれるとしたら、1500万円払えという判決はどうなっちゃうのか?

ということで、半期15回分のシラバス原案が出来た。
誰か、使ってみないかな? 民訴と言うよりは、民事法に少しだけ憲法も絡んだものになっているけど。

|

« France:2月7日土曜日は政治書籍の日 | トップページ | amazonのバレンタイン特集 »

法律・裁判」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: law:作家を侮辱する書き込みをしたら、賠償請求された事例:

« France:2月7日土曜日は政治書籍の日 | トップページ | amazonのバレンタイン特集 »