arret:2013参議院選挙は違憲状態
最大判平成26年11月26日平成26年(行ツ)78号(PDF判決全文)破棄自判
最大判平成26年11月26日平成26年(行ツ)155号、156号(PDF判決全文)破棄自判・上告棄却
最高裁は、昨今の傾向になお踏み出さず、参議院選挙を違憲無効としないことはもちろんのこと、違憲ともせず、違憲状態とした。
ただし、少数意見の中には、違憲無効と断ずる反対意見が初めて付けられた。
二つある判決のうち、78号事件は広島高裁岡山支判平成25年11月28日に対する上告事件であり、「平成25年7月21日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の岡山県選挙区における選挙を無効とする」との主文を掲げたものを破棄自判し、請求棄却判決とした。
また、155号、156号事件は、東京高判平成25年12月25日のいわゆる事情判決に対する上告事件などであり、やはり請求棄却とした。
いずれも判決内容としては同一で、法廷意見は以下のように判示している。
本件選挙当時において,本件定数配分規定の下で,選挙区間における投票価値の不均衡は,平成24年改正法による改正後も前回の平成22年選挙当時と同様に違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものではあるが,本件選挙までの間に更に本件定数配分規定の改正がされなかったことをもって国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。
その理由は、平成24年の4増4減によっても最大格差4.77倍と「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態」を解消するものではなかったが、前回の平成24年10月17日最高裁判決で違憲状態を指摘されてから選挙まで約9ヶ月と間がなく、国会の裁量権の限界を超えるとは言えないというものである。
これに対して反対意見を付けたのは「裁判官大橋正春,同鬼丸かおる,同木内道祥,同山本庸幸」であり、さらにその内、元内閣法制局長官である山本庸幸裁判官は、選挙を無効とすべきであって、そもそもこの種の問題に事情判決の法理を適用すること自体に反対する。
その他の大橋裁判官、鬼丸裁判官、木内裁判官は事情判決の法理を適用するという。
それ以外の裁判官は多数意見に同調している。
なお、山本裁判官は、違憲無効とした場合の処理について、興味深い意見を述べている。
すなわち、判決で無効とされた選挙区選出議員は失職するはずだが、その効果は遡及せず、判決までになされた決議は法的に有効なものとして効力を保持する。
また、失職する議員は、一票の価値の全国平均に対して0.8を下回る選挙区の議員は全て失職するとする。
0.8を下回る選挙区以外の選挙区の選挙も無効ではあるが、そこで選出された議員は失職しないとする。
こう解することにより、国政の混乱を招くことなく選挙無効とすることができるというのであるが、これは恣意的な解釈なのではないかという疑問も禁じ得ない。
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