juge:不名誉な裁判所の嘘つき
なんともなぁ、と思わせるニュースだが。
見出しだけ見ると、裁判官が嘘ついたように読めるが、記事では、書記官が事情をそのまま伝えるのをためらって、別の事件が長引いているという説明をしたという話である。当の寝坊した裁判官が書記官にそう説明してくれと言ったのかどうかは明らかにされていない。
裁判所が指定した期日に担当裁判官が来なくて開けないという事態は、訴訟法はあまり想定していない。
当事者が来ないという場合は当然予想されていて、建前上は不熱心訴訟追行として訴え取下げが擬制されたり、欠席前の状態を下に判決が下されたりする。
しかし裁判官が来ないという場合は、当該裁判官の個人的な責任ないし職務上の処分は別として、手続としては期日の変更または延期として処理することになるのだろう。
そして、当事者の方から変更を求めるのには色々制限があるが、裁判所が変更するにはなんの制限もない。
家事事件手続法にも同種の規律がある。34条3項は以下のように定める。
家事事件の手続の期日の変更は、顕著な事由がある場合に限り、することができる。
変更に顕著な事由が必要だが、これがない場合に変更の申立てを却下するということはあっても、変更ができない、変更が無効になるということではない。
結局のところ、期日を開いて事件処理をするのは当事者の事件の処理のためだから、その期日変更を後から無効だと言ったりしても、当該手続には意味がない。
もちろん変更を余儀なくされた裁判所の責任は別論だ。
上記報道のケースも、別の事件が長引いてなどと下手な嘘をつかないで、正直に裁判官が体調不良で来られないので、期日を変更するといえば、とりあえず問題は起こらなかったところだろう。
起きれなかったというのも、広い意味では体調不良かもしれない。
ただ、失念してましたというのはどうも言い訳しようがない。
いずれにせよ、裁判官ないし書記官の職務上の責任問題は別論なので、こんなところでお名前を見てびっくりする藤山所長のコメントが出てくるわけだ。
藤山雅行所長は「当事者に迷惑をかけてしまい遺憾。今後はこのようなことがないよう、指導を徹底する」とコメントした。
藤山裁判官については、このブログのjuge藤山雅行裁判長のお話のエントリおよびコメント欄、そして裁判官ネットワークの記事「国やぶれて三部あり」をご参照。
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コメント
正直に裁判官が来ないので今日の審判は延期しますと言ったらどう報道されるのでしょうか?裁判官の寝坊は珍しいから報道されるのかな。
投稿: さて | 2014/10/25 23:51