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2014/10/17

死刑の実態DVDの意義

大阪弁護士会で、絞首刑の実際を詳しく解説したDVDを製作したそうだ。

「死刑の実態は日本人から隠されている」弁護士たちが「絞首刑」のDVDを作ったワケ

死刑執行の手段として日本の拘置所で実施されている「絞首刑」。DVDは、その具体的なメカニズムや歴史的な位置づけについて、人体のイラストなどを用いて説明するというものだ。上映時間は約30分。特に、絞首刑で死に至る過程について、オーストリア法医学会会長のラブル博士の分析などをもとに、くわしく紹介している。

死刑が残虐な刑罰ではないという最高裁判決の立場に対して、具体的な死刑の経過を知らずしては評価できないということであれば、誠にそのとおりだ。

もっとも、死刑廃止反対が80%に上るとの世論調査に対して、死刑制度の実態を知ってから論じてほしいというのはどうなのだろうか。

フランスでお世話になった法学教授が雑談の中で行っていたが、ミッテラン政権のもとで死刑を廃止したフランスだが、当時も、そして今でも、死刑の是非を世論調査に問えば必ず多数が死刑制度賛成に回るそうだ。にも関わらず、法的倫理として死刑は否定されるべきで、そうした理念に政治が従って死刑廃止が実現したということである。

つまり、民主主義のレベルや成熟度が極めて高いフランスでも、国民の生の声に盲従するだけが民主主義ではないというわけだ。
国民の多数が死刑制度を支持しているから、死刑廃止はできないというのは、民主主義なのではなく、単なる思考停止であり、為政者としての責任を放棄した状態だ。

もちろんすべての問題について世論の動向が無視されて良いというつもりはないが、問題の性質によっては、人々の生の声に従うべきでない問題というものがあって、死刑はその一つだというわけである。

死刑の残虐性というのは、死刑の存廃をめぐる議論の一つの論点にすぎないが、ともかくも一つの論点について正確な理解を可能とする資料として、上記のDVDは貴重である。これにより、立法に直接・間接携わる人々の中で、死刑の実態についての正しい理解が進むことが期待される。

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