decision:なりすましに対する発信者情報開示請求
なかなか興味深い事例が続いてでている。
誰かが自分に成り済まし、会員制交流サイト(SNS)のフェイスブックにページを作って写真などを投稿したとして、西日本在住の女性が米フェイスブック社側に発信者の情報開示を求め仮処分を申し立て、東京地裁(鈴木雄輔裁判官)がインターネット上の住所に当たるIPアドレスなどの開示を命じる決定をしたことが21日、関係者への取材で分かった。決定は8月19日付。女性の代理人である清水陽平弁護士によると、フェイスブックの成り済ましで発信者情報の開示決定は初めて。IPアドレスなどの情報は8月中に開示された。
この場合、発信者情報開示請求の要件である侵害情報の流通に当たるのかという点が最大の問題点のように思う。
なりすまされたというだけでは、必ずしも権利侵害情報の流通にはならない可能性がある。
同姓同名が多い名前では、そもそもなりすましではないということになるし、例えば同姓同名はおそらく存在しない私の場合も、町村泰貴という名前を使って登録したとして、北大法学部の町村と名乗らない限り、たまたま同じ名前を使っただけという言い訳も可能なので、それだけでは必ずしも私の権利を侵害したとは言いがたい。
だとすると、無害なメッセージのやり取りをしていたとしても、私の名誉を毀損したとは言えない。
上記報道のケースがどのような事案だったのか、報道からでは全くわからないのだが、なりすまされた上で名誉を傷つけるような、例えば、在特会のようなヘイトスピーチ団体と関係があるというような表示をすれば、これはもう社会的評価は決定的に低下するし、それに公益目的も認められない。
ということで、なりすまされたというだけではなく、その上で何をされたのかということがやはり重要なのであろう。
| 固定リンク
「裁判例」カテゴリの記事
- Arret:共通義務確認訴訟では過失相殺が問題になる事案でも支配性に欠けるものではないとされた事例(2024.03.12)
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- jugement:大川原化工機の冤罪事件に国賠請求認容判決(2023.12.27)
- arret:オノアクト贈収賄事件に高裁も有罪判決(2023.10.24)
- arret: 婚姻費用分担請求に関する最高裁の判断例(2023.08.08)
コメント